複雑・ファジー小説
- Re: コドクビワ、キミイゾン。 ( No.40 )
- 日時: 2012/06/20 18:12
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: ae8EVJ5z)
+参照200+
「せんぱーい、おじゃましまーす……あれ?」
夜になり、バイトを終えた俺は、いつも通り先輩の家にやって来た。
俺の脱ぎ棄てた靴を不機嫌そうに見つめる先輩を見て、体が硬直してしまう。
そんな俺にため息をつきながら、先輩が俺を通りすぎ、靴を揃える。
「何突っ立てるの、邪魔」
俺の頭を軽く小突く先輩の顔を、じっと見つめる。
先輩、俺が見詰めても照れないんだよなぁ、学校の女子と違って。そんなクールでつれないところも、好き。
言うこと聞かないと怒られるので、台所に立つ先輩の背中を見ながら、部屋に入る。
クッションの上に膝を抱えて座ると、先輩がお茶を出しながら目の前に座る。
「何見てるの」
頬杖を突きながら、自分のお茶を啜る先輩。
「いや、そ、それ、なんすか……」
俺は身を乗り出して、先輩の顔を指さした。
先輩はその手を嫌そうに払う。
「あぁ……メガネ?」
先輩は、自分の鼻にかかっているメガネを外した。
そして、俺に差し出してきてくれたので、遠慮なく手に取って眺めてみる。
「疲れたから、コンタクト外しただけ」
コンタクトしているのは知っていたけど、メガネを持っていたのは初耳だった。
眼鏡をした姿は、大人っぽくて綺麗だ。でも、俺は先輩の目がちゃんと見られるコンタクトの方が好きだな。
そう思いながら、興味本位でメガネをかけてみた。
「うっわ、何コレ」
一度だけ、クラスメイトの眼鏡を奪ってかけてみたことがある。だから多少慣れていたつもりだったが、そのメガネよりも度が強いようで、目が早速疲れてきた。
目をしばしばさせる俺の姿を見て、コップの奥の先輩の口角が少し上がった。
あ、笑ってくれた。ちょっと、いやかなり、嬉しい。
「孤独メガネ似合うね」
その言葉にいい気になった俺は、メガネを指で押し上げて見せた。
そうすると、先輩はクスリと声を出して笑ってくれた。
嬉しい。すっげぇ、嬉しい。
「やっぱ似合わない。かっこつけない方が孤独らしいよ」
掌返した先輩の言葉に唇をとがらせて、メガネを外す。
いつの間にか先輩のお茶が無くなっている。
俺も一口だけ飲み込んで、首を傾げる。
変わった味のお茶だな。
「そういえば、どれくらい見えてるんすか?」
眼鏡を取ろうとしている先輩の手が止まる。
左上くらいに視線を向けて、考える素振りを見せた。
「んー、私結構、目悪いよ」
苦しかったけど、お茶を全て飲み込み、先輩の目の前で手を振ってみる。
すると先輩の目が呆れたように細まった。
あ、怒ったのかな。なんて思って手を止めると、先輩は俺を鼻で笑う。
「目を細めないとよく見えないの」
何だ、そういうことか。安心して再び手を振ると、先輩は笑ってくれる。
嬉しい。なんか、今日幸せ。やばい。頭がフワフワして、よく考えられない。
ん?
頭が、フワフワ?
「孤独、ごめん」
心なしか、先輩の顔も赤い。
あれ、照れてる?そんな馬鹿な。
今の状態で、照れる要素がどこに?
「今の、お茶じゃなくて」
先輩は机の下から、茶色の瓶を取り出して、若干湿っている瞳を細めて、笑った。
「お酒」
あぁ、なるほど、良く笑うわけだよな。
そんなことを思って、重くなってくる瞼に従い、俺は意識を手放した。
+おわり+
今回はちゃんと話を決めて、た、はずなんですけど。
参照200ありがとうございました!
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