複雑・ファジー小説

Re: コドクビワ、キミイゾン。 ( No.43 )
日時: 2012/06/22 19:51
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: ae8EVJ5z)



+21+


結局、卓とはシなかった。
私の言葉でぽかんとしている卓を無視して、勝手にホテルから出てきてしまった。
罪悪感はある。でも、不思議とすっきりしていた。途中で荷物を運んでいる店長に声をかけて、ゆっくりとのんびりアパートに帰ってきた。
長い階段を久しぶりに上ってみた。いつもはエレベーターだけど、気分だ。
辺りは夕焼けで赤が蔓延っている。そんな光に包まれながら、私のドアに背中をつけて、蹲る一つの影。

「孤独」

声をかけた。呟くくらいの音量で。聞かせるつもりなんて無いくらいで。
だから、孤独がそんな声に反応して、顔を上げた時には正直驚いた。
私の姿を確認して、右手に黒い首輪を持って、駆け寄って来る。

「お、おかえりなさい……」

孤独は嬉しそうな顔をすぐに消して、寂しそうに眉を傾けた。俯いて、右手を背中に回す。隠しているつもりなのだろうか。
残念。もう私、気付いちゃってるよ。

「ただいま。ほら、それ」

私は驚いている孤独の右手を強引に引き寄せて、首輪を奪う。
あまり慣れていないが、そう時間をかけずに孤独に首輪をつけてあげた。
孤独の私の指に触れようとする動きを見抜いて、そっと避ける。気が付いているのかは分からないが、多分気が付いている。

「我儘な後輩だなー」

そんな言葉で誤魔化してみるけど、やっぱり。
私、孤独が怖い。