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複雑・ファジー小説
- Re: コドクビワ、キミイゾン。 ( No.56 )
- 日時: 2012/07/05 22:10
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: ae8EVJ5z)
+31+
震える指で、電話を切った。久しぶりに、重く長い溜息が出た。口で肺の全てを出し切ってから、息を吸い、今度は鼻から空気を出す。それでも心は落ち着かない。
相当、忌屋はキている。私の言葉で、不安定なのがもっと不安定になってしまっただろう。私は、それが目的だったのかな。私は忌屋に電話をかけて、どうしたかったのだろう。心配、だったのかな。忌屋が心配だったのか。
無いな。それは無い。だって、忌屋さえいなければ。
携帯をゴミ箱に放り投げた、その時。
玄関で物音がした。
人間が入ってくる、音。
両親は仕事でぐっすり眠っている。あの子しかいない。
私は椅子から立ち上がって、玄関に向かった。
暗い玄関で、蹲っている人影。肩が情けなく震えていて、泣いて居るようだ。
私は、バカだ。何をしているのだろう。バカだ。大バカ者だ。私は、この子を守ると決めた。それなのに。
自分が情けなくて、こちらが泣いてしまいそうだった。
そんな自分を慰めるかのように、彼に近付いて後ろから抱きしめた。
私の心が埋まっていく。彼の涙は止まらなくても。それでも、今は私が満足できるから。それで今は、私は私を繋ぐの。
「泣かないで、孤独」
彼は泣きやまなかった。
私の声は彼の鼓膜を揺らさない。
それで良いの。
今はそれが良いの。
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