複雑・ファジー小説
- Re: コドクビワ、キミイゾン。 ( No.63 )
- 日時: 2012/07/11 18:06
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: ae8EVJ5z)
+35+
重い。瞼が重すぎて、嫌だ。開けたくないと思う。開けたら、夢が終わってしまいそうで、嫌だ。ねぇ、目を覚ましたら、全部夢だったら良いのに。
先輩と俺は、ぎくしゃくなんかしていなくて。先輩は困ったような顔を作らないで。俺も笑えて。涙なんて出なくて。先輩の細い綺麗な指が、俺に首輪をつけてくれて。いつもよりご機嫌で。一緒にお風呂に入って。一緒にご飯食べて。ベッドの上でダラダラして。先輩の名前を呼んで。先輩の匂いを嗅いで。先輩に触れて。
先輩。先輩。先輩。俺、まだ先輩と一緒が良い。先輩が、好きだ。好きだ。好き。好き。
「……孤独」
先輩より少しざらついた声が、俺の名前を呼んだ。それじゃあ無いんだよ。俺は、先輩に起こして貰いたいの。
「起きた? 大丈夫? 孤独」
この人は、やたらと人の名前を呼ぶ。ただ、認めている人限定。
俺は薄目を開けて、姿を確認した。いつも通りの傷んだ髪。長い睫。
「……ねーちゃん」
目が痛い。泣きすぎたか。泣くなんて、みっともないと思うだろうけど、それくらい、俺先輩のことが好きなんだよ。1人で泣いたって、届か無いとは分かってるけど。
「ヤダ、俺、ヤダよ。先輩のことが、好き。好き、どうしよう、俺、先輩に嫌われたかも。だって、迷惑かけたし。俺なんか、要らないかも。どうしよう、俺、先輩が居ないと。俺。ヤダよぉっ……」
頭がガンガン痛い。先輩の声が、聞こえない。思い出せない。先輩が消える、消えてしまう。そんなの嫌だ。俺、先輩が居ないなんて嫌だ。嫌なの。
ねーちゃんは俺を抱きしめてくれた。嬉しいけど、先輩じゃない。先輩、先輩。
「……大丈夫だよ、孤独。孤独は、幸せにするよ、孤独」
してくれよ。早く、してくれよ。俺、ねーちゃんなんて、どうでも良いから。ねーちゃんなんてどうなっても良いから。
早く、俺を幸せにしてくれよ。