複雑・ファジー小説

Re: 思案中 ( No.7 )
日時: 2012/06/03 21:54
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: ae8EVJ5z)



+6+


久しぶりにあのバカ、孤独がいない仕事場。
静かだ。落ち付いてぼーっとできる。私は仕事熱心になれるような性格ではないから、このくらいぼーっとできたほうが嬉しい。
孤独は今頃学校だ。あんな性格で、友達は居るのだろうか。居ないだろうな。変態だし。
この職場でも浮いている。根は素直で、好青年な人なんだろうが、なんか、変だ。どこか、近寄りがたい。
私も、同じ感じかな。

「先輩」

反射的に殴った。
居ないはずの人間、居てはいけない人間がここ居るのを私の思考が拒んだ。無かったことにしようとした。
右の拳に温もりが伝わって、鈍い音と、呻き声が耳に届く。

「あ」

やっちまった。まぁいいか。孤独だし。
床に倒れこむ孤独を見ながら、私はため息をついた。
制服のままだ。何してんだか。このままじゃあ、まともな職に就けないぞ。それで孤独はいいのかな。

涙を少しにじませながら顔を抑える孤独が段々可哀想になってきたので、仕方なく、レジから出て孤独のそばに座り込む。

「……孤独」

「〜っ」

可哀想な孤独。
鼻が赤くなっている。結構整った顔してるのにな。
私は悪くないぞ。学校抜け出してくる不良の孤独が悪い。しかも客じゃないなら、殴っても仕方がない。……それは違うな、少し。
でも私は悪くない。

「せんぱっ、酷いっす……」

軽く私を睨みつけながら、孤独は涙を拭く。
なんだか、猫みたい。でも、孤独は首輪が似合うんだよなぁ。猫はめったに首輪はしないんだけど。

「孤独」

「……でも、ま、名前今日いっぱい呼んでくれるし、許してあげます」

罰全部チャラ込みで。
いたずらっぽく笑う孤独は、今日も私を追いかける。