複雑・ファジー小説

Re: コドクビワ、キミイゾン。 ( No.70 )
日時: 2012/07/20 16:21
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: 5VUvCs/q)



+42+


「きず、き?」

大学帰りの電車の中で、築の頭が俺の肩の上に乗った。
そんなことは初めてで。側から見れば、恋人と映るのだろうな。そんなんじゃないんだけど。
俺が築の名前を呼ぶと、手を重ねてきた。
なんだよ。意味分からない。そういえば、最近、築の様子がおかしい。それは些細なことだけど。

「……眠いのか?」

それしか考えられない。
築は最近、よく俺に触ってくる。自分の熱を、俺に押し当ててくる。意味が分からない。甘えているのかと考えると、ちょっとかわいい。築自身は何も思っていないだろうけど。でも、俺の心を乱すのには、十分すぎる。

「……ン〜、辰臣〜、明日は、一緒に帰れないんだー」

「……え?」

初めてだった。築と一緒に帰らないなんて、もう何時振りだろう。

ふと重なった手に目線を落とすと、築の白い掌に、何かで切ったような傷があった。
それを見て、俺は何も考えずに、目を閉じた。

これが、築と俺の距離が少し開いた日の話。