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複雑・ファジー小説
- Re: コドクビワ、キミイゾン。 ( No.80 )
- 日時: 2012/07/29 16:50
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: 5VUvCs/q)
+48+
何かの焼ける音と臭いで、目が覚めた。
嫌な予感がするな。
体を起こしてキッチンを見ると、何やら慌てている店長の背中。
「店長」
「のわ!? お、起きたのか、桐」
振り返った店長の手には、フライパン。そこから上がる、煙。
立ち上がって、必死に隠そうとする店長の手からフライパンをもぎ取って、中を見る。
黒い塊が、存在していた。
「……なんですか」
「……鮭」
大きく息を吐き出して、ティッシュにそれをくるんで、三角コーナーに捨てる。全部を、店長は申し訳なさそうに見ていた。
このままだと仕事に遅れるので、手早く冷蔵庫の中に会った納豆を準備した。
ぼーっと、というか、しょんぼりと私を見ていた店長を、軽くにらむ。
「ご飯よそってくださいよ」
「え、あ、うん」
前にも、なんかあったなあ、こんな事。
バレンタインの日に孤独がケーキ作るとか言い出して、私が作るのが普通でしょって言ったけど、聞かなくて。それで、スポンジ全部駄目にして、結局私がクッキー焼いてあげた。
そんな思い出。
思い出、か。もう、孤独とそんなことはしないんだろうな。
寂しくない。
私たちは縁を切った方が良かったんだ。あんな曖昧な関係を、ずるずる続けても孤独が可哀想なだけ。壊れてしまうだけ。そんなのは、いけない。
そう思うと、卓は、卓巳は私を守ってくれたのかな。
私を、助けてくれたのかな。
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