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複雑・ファジー小説
- Re: コドクビワ、キミイゾン。 ( No.87 )
- 日時: 2012/08/04 14:40
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: 5VUvCs/q)
+53+
裏口を出ると、目の前の壁に背中を預けていた店長が、携帯をぱたりと閉じた。そして、笑う。いつも通りだ。何だか仕事中は冷たい感じがしていたけど、そんなことは無かった。単に、私が構って欲しかっただけか。……そうか。
「桐、行こうか」
店長は歩き始めながら、私の様子を覗う。
ほら。ちょっと心配してくれているじゃんか。嬉しいね。私を心配してくれる人がいて、嬉しいよ。
孤独も、私を心配してくれていた。風邪気味の時、大量にねぎを買ってきてくれたときは、さすがに笑った。
お腹を抱えて笑う私に、スーパーの袋を床に落としながら、
「え、え、どうしたんすか、先輩」
なんて、おどおどして。いやいや、バカじゃないのって。ただちょっと喉が痛かっただけで、少し咳が出ていただけなのに。あんな必死になって。私がそんなに心配だったのか。本当に、孤独はバカだよね。私なんかに構って。
孤独は、私の心の隙間を埋めてくれた。卓巳に捨てられて、この世の終わりに突き落とされた私を、傷だらけになりながらも救ってくれた。だから、私は今こんな普通な生活を送っている。
そんな一途で可愛い孤独を、私のような汚い人間が、これ以上壊してはいけない。
「何、笑ってるんだよ」
店長は私を蔑むような目で見てくるけど、気にせずに口を触った。
本当だ、私笑ってる。変なの。
「別に何でもないですよ。さあ、行きましょう」
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