複雑・ファジー小説

Re: コドクビワ、キミイゾン。 ( No.91 )
日時: 2012/08/07 22:04
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: 5VUvCs/q)



+56+


桐は、まっすぐにペットショップに向った。迷いなく動くその両足を、俺はただ後ろから眺めていた。
頼もしくなったと思う。人に上手に頼ることを覚えたと思う。桐は、成長した。元彼とはどうなのかは知らない。今も、連絡は取っているようだけど、多分桐は望んでいない。
自分がそれを望んでいないことに、気が付いたのだろう。自分を盲目的に愛してくれている孤独の存在に、気が付いたのだろう。
そうして、桐は決めたんだ。自分で納得する道を、見つけたんだ。
何だか、自分の子供が結婚するようだ。幸せじゃない。幸せになる道を、自分で作ろうとしている。自分だけじゃなくて、孤独も助けようとしてる。
凄いことだよな。桐、凄いよ。お前、強いよ。俺みたいにならないでくれた。俺の言葉通り、後悔をしない道を。俺とは違う道を。
俺は、後悔ばかりだ。後悔ばかりして、成長しないの。自分みたいにならないで欲しいって、結局は桐を利用して、俺とは違う道を見たかっただけかもしれない。
桐はそれに気が付いているかな。
俺、実は最低なんだよね。お前みたいに、成長できなかっただけなんだよ。

「何色がいいですかねぇ」

首輪が並んでいる棚の前で、桐は顎に指を添える。なんか、色っぽくて。ほら。築に似てる。そんな些細な行動さえも、築に見える。
築、築。俺、築ばっか。

「赤色が、良いよ」

「それは駄目ですよ」

そう即答したきりに、俺は微塵の疑問も抱かなかった。