複雑・ファジー小説

Re: コドクビワ、キミイゾン。 ( No.93 )
日時: 2012/08/08 10:34
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: 5VUvCs/q)



+58+


女の視線が俺に集まり、そしてボクの後ろの女を見て、離れていく。指を差されることもある。不愉快だな、って思う。前までは、心地良かった。人の心をもて遊ぶのが好きだった。
だから、ボクを必要としていてガタガタな桐は、凄く面白くて、弄んだ。
わざわざ見える位置に赤い印をつけて帰宅する。そうすると、桐は悲しそうな、諦めたような顔をして、でもボクを責めたりしない。ボクを責めれば、ボクの機嫌を損ねて捨てられるかもってそう思っているからだ。
そうそう、正解正解。というか、その顔が好き。自分の欲に負けないようにして必死にしている顔が、ボクは好きなんだよねぇ。だから、繰り返した。それで、桐を傷つけ続けた。それでも、そばに居るだけでいいんだって自分に言い聞かせてたんだよなあ。
他人の人生捻じ曲げるのって、楽しいよね。

「忌屋、最初に何を買おうか」

デパートに着いたら、なんだかわくわくして居る様子で、コイツが言った。なんでお前がわくわくしてんだよ。

懐かしい。ここで確か、桐に姿見を選んで貰った。今のコイツみたいに、わくわくしてさ。ボクがその姿見で服を見ていると、嬉しそうに笑ってた。
そういえば、ボクとこの間会った時、少しも笑わなかった。前は、ちょっとでもボクが優しくすると、笑ったのに。ボクが笑うと、無理して笑ったのに。

そうか、そういうこと?ボクはもう、桐には必要ないってこと?

「別に、何でも良いよ」

姿見だけは、買い替えなくて、良いかな。