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複雑・ファジー小説
- Re: コドクビワ、キミイゾン。 ( No.95 )
- 日時: 2012/08/09 21:13
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: 5VUvCs/q)
+60+
「俺が買ってやるよ」
桐の腕を掴んで財布をポケットから出そうとすると、桐は首を横に振って、軽くほほ笑んだ。
何だか、桐笑顔が綺麗になったよ。でも俺は築が好きだ。今だって好きだ。
高校のあの日、図書室で俺たちが会ったのは、きっと運命だ。築と会えたのは感謝ししている。でも、築との別れがあんなに苦しい物だと知っていたら、俺はその出会いは無くて良かったと思う。
「これは、私と孤独の問題ですから。店長に迷惑をかけるわけにはいきませんよ」
きっぱりと言う桐。自分に責任を感じているのか。孤独を振り回してしまった自分に、責任を感じているのか。
そんなことは無い、桐は悪くない、なんて、俺には言えない。桐がそう感じているなら、その気持ちを俺は壊してはいけない。
俺はすんなりとポケットに財布をしまった。
そんな俺に、桐は小さくお礼を言ったような気がするけど、あえて何も言わないで、店の外に出た。
会計が終わると、桐は小さなビニール袋を手にして俺に駆け寄った。
「店長、付き合ってくれてありがとうございました」
改めて頭を下げる桐。そんな桐の茶色が抜けてきている髪をそっと撫でた。
「店長、甘いの大丈夫ですよね?」
桐が頭を上げて、細い指で示したのは、新しくできたおしゃれなケーキ屋だった。
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