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複雑・ファジー小説
- Re: コドクビワ、キミイゾン。 ( No.99 )
- 日時: 2012/08/11 23:00
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: 5VUvCs/q)
+64+
頭が真っ白になった。でも、不思議と視界は色を捉えている。でも、赤しか捉えない。他の物は全てモノクロなのに、赤だけが目に刺激を与えて。でも、目をつぶれなかった。
辰臣に後ろから抱きついてみると、辰臣は落ち着いてくれた。でも、私がこんなことする必要、あるのかな。辰臣は、理解ができる人間だ。だから、だからこそ、私のために行動を起こしてくれたんだ。
涙が出てきそうになって、必死にこらえる。
私が泣いて、どうする。私は我慢して来た。今も我慢する。我慢して、辰臣と離れた。頑張って勉強して入った大学を、辞めた。そうして、ずっと我慢してきた。だから、ここで不満とかを出したら、今まで頑張ってきた意味がない。
桐と、会っちゃった。桐は情けなく忌屋をじっと見ている。助けたりとか、叫んだりとか、怒ったりとか、そんなのは全くしない。ただ、見ているだけ。
周りの人が慌てて警察と救急車を呼んでいる。ケーキ屋の人が辰臣を警戒しながら、忌屋を介抱し始める。忌屋は顔を抑えて蹲っている。
痛そうだ。
「築、築」
辰臣は私の腕の中で身をよじって、私を抱きしめ返す。
嬉しいとか、ずっとこうしていたいとか、そういう思いが私の心に生まれる。
生まれてはいけない、欲望の芽。
でも、今くらいは許してくれるかな。誰も見てないよね。誰も、咎めないよね。良いよね。
私は辰臣の胸板に、顔を埋めた。
何度も、辰臣の名前を呼んだ。
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