複雑・ファジー小説

第一話 There is no future part2 ( No.4 )
日時: 2012/08/17 22:16
名前: 秋山レキ (ID: LsY9Mst/)

「霧夜。助けに来たよ」
黒髪の少女が俺の目の前に突然現れた。
俺は呆然とし、その場にただ座り込んでいる。
「な、どういうことだ……それよりお前は誰」
ようやく開いた口は、途切れ途切れの言葉を言うしかなかった。
「今は何も聞かないで、後で話すから。それより今はこいつを倒す」
「お話しは終わりかぁ?若月ぃ。そろそろお前をぶっ殺す時間だ」
「霧夜を殺すなら、私を倒してから言いなさい。ヴァンパイア」
ヴァンパイア……?吸血鬼のことか?
「お、なんだ?俺のこと知ってんのか。てことはてめぇもあっちの世界のヤツみてぇだな」
「そんなことどうでもいい。今はあなたを倒す」
「はっ、出来るもんならやってみな!」
そう言い、吸血鬼(ヴァンパイア)は少女のほうへ駆けてきた。
まずい!逃げないと・・・!
「おい!早く逃げろ!」
しかし少女は吸血鬼のほうをただ見つめている。
「早く逃げろって!ホントにこのままじゃ死———」
「霧夜!……大丈夫だよ。吸血鬼なんかに霧夜を殺させない」
すると少女は腰辺りに手をあて、細長い物———おそらく刀であろう———を取り出し吸血鬼に向けて構えた。
「おらぁあああ!!!死ねぇえええええええ!!!!!!!」
「喰らえ。吸血鬼」
吸血鬼が刀を引いたと同時に、少女はゆっくり刀を振り上げた。
「はっ、遅ぇ」
しかし吸血鬼のほうが突くのが速かったため、少女の腹部に刀が突き刺さる。
「ったく、口ほどにもねぇな。……んじゃあ次はお前だ」
そう言い少女から刀を抜くと同時に少女は地面に倒れ、その刀を俺の顔の前に持ってくる。
「あ………あ…………え……う……あ…………」
混乱しまとものことを話せない俺に、吸血鬼は自分の頭上に刀を振り上げる。
「おとなしく死ね、若月」
……誰か、助けてくれ……!
すると、倒れていたはずの少女は影になりだんだん消えていった。
そして徐々に吸血鬼の後ろに集まり始めたと思えば、倒れていたはずの少女の形になり色がつき始める。
「!」
異変に気付いた吸血鬼が後ろを振り向く。
「てめぇ、どうやって……?俺が殺したはず———」
「……お前が死ね。吸血鬼」
そう言うと、吸血鬼の体が塵となり消えていく。
そして少女は振り返り、俺の方を見て、
「ちゃんと守ったよ。霧夜のこと」
思わずほれてしまいそうな笑顔で言った。