複雑・ファジー小説

第一話 There is no future part3 ( No.5 )
日時: 2012/08/15 22:04
名前: 秋山レキ (ID: OwWW4VVX)

「で、結局お前はどうするんだよ」
まだ冷めてきっていないパンをかじりながら俺は香夜に尋ねた。
「どうするって何が?」
「これからのことだよ」
「まさかプロポー」
「違う」
「もう少し夢見させてよー」
香夜は俺の向かえでテーブルの前に座り、ブーたれている。
「じゃなくて、いつまで俺の家にいる気だ?」
「それは私と霧夜は婚約者だから、死にまで一緒にいるよ?」
香夜はどことなく嬉しそうに言った。
「それに———」
「そ、それに?」
「約束は覚えてるよね?霧夜」
急に香夜の目つきが鋭くなる。
「え、えーとぉー」
「『私たちは永遠に助け合い愛を育み合う』はずだけど?何なら証拠にボイスレコーダーでも———」
「ホンッットすみませんでした!だからそれだけはご勘弁ぉ」
あれだけはもう二度と聞きたくないんだよ!
「いいよ、霧夜。だから」
「だから?」
「キスし———」
「遠慮しておこう」
「ぶぅー、ケチ」
香夜はまたそっぽを向く。
「ったく、あとでなんか食べさせてやるから。な?」
「本当!?あーんしてくれる?」
「ああ、あーんでも何でもしてやるよ」
「じゃあ口移し———」
「それは無理だ」
「『ああ、あーんでも何でもしてやるよ』」
「お前ぇ、それをどこで……」
「実はさっき録音しておいたのでした〜」
ふふんと、香夜は勝ち誇った顔をする。
くっこうなれば・・・。
「もしお前が口移しするなら、何も買ってこないぞ!」
「えー!あたしのツナマヨおにぎりちゃんがぁ〜」
「おにぎりでどうあーんすんだよ……」
「こう、持ったまま口にサクって」
「サクっ?……まぁいいや。さて香夜どうする?」
香夜はうんうん唸り、考え出した。
そして思いついたのか俺のほうを見て、口を開く。
「……じゃあ、あーんで」
「分かった。おにぎり買っておくよ」
「ツナマヨ味だよ!」
「分かってるよ。それにしても何でお前は俺の所へ来たんだ?別に誰でも良かっただろうに」
「違うよ!だって霧夜には能力があるもん」
そうか、そうだったな。俺は人とは違ってとある能力を持っている。
そしてこいつ香夜は———
「お前、人間じゃなかったもんな」
人間じゃない。ただ一つの武器だ。
「でも、私は霧夜と居たい。だから———」
「またあっちの世界に行けってか?」
「うん。そして私が人間になったら、ちゃんと結婚しよう?」
「う……い、妹にならしてやっても良いぞ?」
「……霧夜、私……」
香夜はぷるぷる体を揺らし、こぶしを握っている。
「香、夜?」
「絶っっっっ対!霧夜の嫁になるんだからぁ!」
そう言って俺を抱きつこうとしてきた香夜をかわし、俺は台所へと向かった。