複雑・ファジー小説
- 第一話 There is no future part4 ( No.6 )
- 日時: 2012/08/31 21:18
- 名前: 秋山レキ (ID: jEYyPTNY)
「大丈夫?ケガはなかった?」
黒髪の少女はその場に座り込んでいる俺に優しく語りかけた。
「ああ、何とか」
俺は差し伸べてきた手を借り、立ち上がった。
しかしよく見るとこいつだいぶ美少女だな……。
肩まで下ろした髪は何も結んでおらず、前髪は切りそろえてあり彼女を一言で表すなら美少女の文字が一番あうだろう。
しかし顔に似合わず服装はとても質素であり、上下赤いジャージに腰元に刀というなんともおどろおどろしい格好である。
「えーと、さっきから気になってるんだけど、お前は何者なんだ?」
「私?私は霧夜の許嫁だよ」
「いや、そうじゃなくて、お前の名前はなんだ———ってえ?」
「私の名前は香夜だけど」
「え、いやうん。あのな香夜。さっきなんと言った?」
「えっと、私は霧夜の許嫁ってところ?」
「うん、そこだ。」
「何かおかしいところでもある?」
全く当たり前のことのように香夜は淡々と言った。
ここまで当たり前のことのように言われては、逆に俺が間違っているのかと思える。
「んー……なんだかよく分かんねぇし、外も寒ぃから中で話さねぇか?」
「うん!じゃあ私の家に来て?」
「ああいいぞ。家はどっちだ?」
「こっちだよ」
そう言い、香夜は前を歩き出したので、俺もそれについて行く。
なぜかは分からないが、香夜は嬉しそうな感じで前を歩いていく。
なんと言うか、香夜が歩いている道は何処と無く見覚えがあった。
昔歩いている道というより、いつも歩いているような感じがするのだ。
そうして歩いてくうちに、なんだか嫌な感じがしてきた。
もしかするとこれは……
「ここだよ!」
そう言って香夜が指差したのは洋風な外観の一軒家。
そう俺の家だ。やっぱりか。
「あの……ここ俺の家なんですけど」
「知ってるよ?早く鍵開けて?」
「紹介しといて、開けさせんの!?」
「ほら早く早く〜」
香夜は見た目では想像がつかないような強さで俺を押していく。
俺は渋々玄関の鍵を開け、香夜を中に入れさせた。
「たっだいま〜」
「おじゃましま———ってここ俺の家だ」
とりあえずリビングにあるテーブルの前に香夜を座らせ、お茶を入れに台所へと向かう。
「で、お前はどういうつもりなんだよ?」
「結婚するつもりです」
麦茶が入ったコップをテーブルに置き、俺も香夜の目の前に座る。
「いや、あのそうじゃなくて」
「だから〜」
香夜は一拍置いた後、
「あなたは私に命を救われた。だからあなたは私と結婚することになるの」
黒い髪の少女が俺の部屋でプロポーズをしてきた。
やばい。超逃げたい(泣)