複雑・ファジー小説

Re: 地獄病棟は嗤わない ( No.7 )
日時: 2012/07/21 11:42
名前: 風猫(元:風  ◆Z1iQc90X/A (ID: 68i0zNNK)

   プロローグ   第一話「病人A 須藤安吾」 

  なぁ、夏ってヤツァ、暑さで人を馬鹿にするのが好きなのかね?
  俺、須藤安吾はまぁ、猛暑とか関係なくイカレタ莫迦野郎なわけだが……、そりゃぁ、ねぇでしょうって馬鹿を今日やっちまったわけですよ?
  
  いやね? 今俺は、渋谷区のボロいアパートの一角に居るわけなんですが、これが何と愛した女。しかも裸の状態のやつの死体と一緒にいるわけですわ。あぁ、何で女が裸なのかって? そんなの当たり前だろ。平安時代風に言やぁ、秘め事やってたからだよ。そんでどういうわけか、暑さにやられて女のほうがマゾフィストに目覚めてな。仕方ねぇから、思いっきり首を自らの手で締め上げたのさ。

  「くだらねぇ……」

  思い出すだけでも下らないぜ。愛している人に殺されて、永遠に罪を負わせるのとか言ってきてな。そんなの普通じゃねえだろう? お前、熱でもあるのかって甲斐甲斐しくして、お帰りいただくのが普通だって話よ。

  でも、結局は俺もいかれてたわけだな。すげぇ興味を持ったわけだ。どんなふうにして死んでいくのかなって。俺、絞殺とかしたことねぇのよね? だから思いっきり強くよがってきた彼女の首を握り締めてやった。

  うめき声を上げながらのた打ち回る女。背徳感が堪らなかったぜ。口から血の泡吹き出しながら、白目むいて体弛緩させて失禁してさ。事切れて。時間にして十分ぐらい首絞めてたかな? 案外、死なないもんだ。手での絞殺は実際は非効率的みてぇだな……

  「マジ、くだらねぇぜ」

  後、何時間かすれば彼女の体は腐敗が始まるだろう。夏のじめじめした季節だ。何日もしたら腐乱する。まぁ、俺は仕事柄腐乱死体の臭いも良くかいだものだが、あれは本当に良い臭いでな。死体愛好家の気持ちは痛いほど分かるぜ。

  「おいおい、何でいきなりテレビが……」

  女の死体と一夜を明かして、所持金もって海外にでもとんずらするかと思っていたときだった。突然、変な音立ててテレビが付きやがった。参ったね。頭可笑しくなったかな? 何もしないで付くはず……

  「ねぇ、須藤安吾。私を殺した人?」
  「荒木? はははぁ、お前テレビに憑いたのかぁ?」

  その瞬間だった。俺の意識は飛んで——



⇒プロローグ   第二話「病人B 日浦誠」