複雑・ファジー小説
- Re: 【カキコ民】夢現の境界線【参加型!!】 ( No.14 )
- 日時: 2012/07/26 12:04
- 名前: 月葵(元フレイア ◆7a0DWnSAWk (ID: LqhJqVk8)
- 参照: 最初の方は主人公中心……すみません;;
〈第二話(夢世界):帰郷と祭り〉
朝日が山肌を照らし、洞窟も鉱物が光を反射してキラキラと輝く。
ここ、ベルクエリアでは珍しい鉱物や武器を手に入れることが出来る。
眩しさに思わず目を細めた私——ファルは、しばらく朝日が世界を照らす様子をじっと見つめていた。
「——そろそろ一年か」
『え? 何が?』
誰もいないはずが、何故か男の子の声がする……否、私のすぐ脇に置いている白い拳銃、別名『白の魂』から声が出ているのだ。
————ガイスト……それは人格を持つ拳銃。
「私がメーアをでてから一年、と言ったんだ。『ネオン』」
そして……私を導いてくれた『ネオン』だ。
『ふーん、そうなんだ。そーいやファル、何でこんな山までわざわざ?』
「……帰ったとしても酒はなしにしないとな、うん」
『じょ、ジョークだよっ! マジの冗談〜! ファルちゃんは採掘してお金を稼ぎたかったんでしょー!?』
あからさまに『お酒』に反応したネオンに呆れつつ、頷く。
四日前の夜のことだ……ネオンが宿屋の高級なウイスキーを飲んだせいで、しばらくもつはずだった財布の中身が、空っぽに大変身。
また、酒に弱い体質のようで酔ったネオンは私の膝に……。
金輪際酒を飲まさない。飲ましてたまるか。そう固く誓った。
話が脱線した、戻そう。
このあたりは珍しい『オリハルコン』も採取できる確率が高い。
ちなみにオリハルコンは虹色に輝く鉱物のこと。
売ると軽く……十万リルは手にはいる。『リル』とは、この世界の通貨だ。
だからあえて、3日もかかる道のりを選んだ。まぁ夜中に到着したのは言うまでもなく。
「朝日が差し込むこの時間帯が最高だ。ほら、ネオンも手伝え。」
『仕方ないなぁ、……ん? 待ってファル。お客様みたい。』
「?」
後ろから気配を感じた。
振り返ると、3人……男性がこちらに歩いてきた。
「クリムゾンベアか……?」
不味いことに、ここがギルドの管轄地であった場合……ギルドマスターに許可を貰わなければ窃盗罪で捕まる。
『まさか忘れてたの?』
小声で問うネオンに目もくれず、どうにかやり過ごす方法はないか考えた。
道に迷った……でもいいが、そうなるとこの3人に出口を案内され、苦労が水の泡になるだろう。
少しでいいから手に入れたい。……じゃないと、今夜はゴツゴツの岩肌の上で野宿しなければならなくなる。
それだけは勘弁だ。
「んぁ? なんだコイツ?」
「見慣れねぇ姉ちゃんだな?」
「よお、道にでも迷ったか?」
それぞれから声がかかる。
「……えっと、君達はクリムゾンベアか?」
「そうだが?」
男の一人が答える。
あーあ、とネオンがぼやいた。
「もしかして、迷子かい?」
「あ、いや、その……」
『道に迷った』というセリフがあるにも関わらず、戸惑ってしまった。
この時一番、自分の口下手に悩んだのは言うまでもない。
「まさか、勝手に採掘しに来たのか?」
「ここはクリムゾンベアの管轄地だ。許可証は?」
「……ない」
やはり管轄地だったか……
いや、よく考えたらオリハルコンという珍しい鉱物が採れるのに、ギルドが管轄していないわけが……はぁ。
「じゃあ決定だな。無断に採掘『した』罪で連行す……」
「待て待てっ! 私は採掘してないぞ!?」
こ、これは本当だ。
「だとしても勝手に入っちゃ困るんだよなぁ?」
「まぁどうしてもっていうなら条件があるけど……」
「だな。せっかく来てもらったんだし……」
…………。
この3人……目付きが怪しくなったのは気のせいか?
「一緒に来てくれないか?」
男の一人が、私の手首を掴んだのを見逃さなかった。
正当防衛ってことで。
「ハッ!」
手を振りほどき、私のオーラ……銀色の光を少し発光させ、背中の長剣を軽く振る。
ちなみに刃は相手に届いていない。
その筈が、男の一人は洞窟の壁に叩きつけられる。
私のオーラ、『誇張』。
簡単にいうと、物事が大袈裟になるんだ。
「このアマっ!」
「やっちまえ!」
ん……不味いな、色々と。
『あらら、僕知らないよ? クリムゾンベアのギルマス(ギルドマスター)に挑戦状叩きつけちゃうもんだからね』
「……ネオン」
『あ……はい』
白き拳銃は、うっすら光ったかと思うと、私の掌におさまっていた。
「……悪気はない。だが、お前達もお前達だからな?」
パンッ! と銃声が響き、地面に白い弾が吸い込まれる。
たじろぐ男達の隙を見逃さず、もう一方の——こちらは普通の——拳銃で三度、見事に一人ずつ、頭を撃ち抜いた。
3人は光の粒子となって消滅。
死んだのかって? 安心しろ。
この世界に一応『死』はない。
消滅しても、それまでいたエリアの入り口に戻るだけ。
だが、今はそうならずにこの場で粒子が集まり、『再生した』。
これがネオンの……『白のガイスト』の究極の能力だ。
「……はへ?」
「何が……?」
「頭……ぶち抜かれて……」
3人はお互い顔を見合わせている。
「……選択しろ。今ここでお前達を、『永遠に痛みと再生を続ける』刑にするか、『オリハルコンの採取を黙認する』刑か?」
「「「ひ、ひぃっ……」」」
まぁ、永遠というのは嘘だが、10分間も痛み→再生することになったら…………誰でも後者を選ぶだろうな。
『ファルがなんか黒い〜』
「うるさい」
コンッ、とガイストの側面にデコピンをお見舞い。ネオンは痛みにのたうち回っていた。
その時だった。
グオォォォォォ……
『……ファル』
「あぁ、恐らく……『悪夢』だな」
ナイトメア、それは簡単に言うと『合成獣』に黒いオーラが纏ったもの。
今回は虎と豹……ナイトメアの中でも攻撃的で力が強い。
また、コイツらに喰われたら最後、私達は永久に闇の中に閉じ込められる……しかし、それだけじゃない。
母から聞いた、『現実世界の自分』に影響を及ぼすらしい。詳しくは知らないが。
男3人は恐怖で動けていない。お前達、本当にクリムゾンベアか?
だが…………見捨てはしない。
オーラは全開し、持続。まずは拳銃で眉間に撃つ形で体勢を崩させる。
間髪入れず、次にオーラを剣に纏わせ——振る。丁度、ナイトメアの首と首の隙間を狙い、縦に半分くらいは切り裂いた。
そして、今度は真横に振りナイトメアの頭はどちらも真っ二つになった。
黒い煙になって消滅。
あとに残るのは、赤と黒の混ざったような魂だけ。
この魂は、残っていると再び復活する厄介なものだ。
これはガイストでしか、消すことができない。
「……悪夢よ、消え去れ。」
白のガイストで、その魂を撃ち抜いた。
これがガイストに導かれた者の使命。
私は、『導きの魂』の一人だ。
- Re: 【カキコ民】夢現の境界線【参加型!!】 ( No.15 )
- 日時: 2012/07/26 12:17
- 名前: 月葵(元フレイア ◆7a0DWnSAWk (ID: LqhJqVk8)
- 参照: 最初の方は主人公中心……すみません;;
——ベルクエリア クリムゾンベア
「——で、のこのこ帰ったの? お前ら?」
「す、すいませんマスター……」
燃えるような赤髪の少女から見える視線に、思わず男達は背筋を震わせる。
『てかナイトメアを倒せないなんて、えーっと、何て言ったっけ…………あ! 世も末ってこと?』
赤く煌めく男の子がカウンターから身を乗り出して言う。
それに対し少女は何も答えず、男3人へ質問を投げかける。
「……で、誰なんだ?」
「へ? えと……名前が分からねぇっす、でもアイツ……あの『白のガイスト』を持って」
「ふーん、『白の』ねぇ……」
そのギルドマスターが不適に笑ったのを見て、3人はただその場に立ち尽くすしかなかった。
——メーアエリア
今は昼。晴れているため、今日は絶好な散歩日和……とか言いたいが、まずは疲れた……。疲労困憊というやつだな。
あのあと、私はまた三日かかって洞窟を抜け、町の入り口である門に到着。
ゲートでメーアエリアまで瞬間移動するはずだったが、またナイトメア——今度は三体——に襲われ、倒し、気付けば昼になっていたと言うことだ。
もう、空腹で限界……。
三人に襲われる前の、洞窟で一夜過ごしたときから、食糧は尽きていたからな。
そして、鉱物取り引きの店にてようやく、15万リルという金額を手に入れ、宿屋で有難い食事をご馳走になった。
食べ物には感謝だぞ。食べ物は感謝して食べるんだぞ!
……大事な事だから二度言った。
「はぁー、ようやく帰ってきたようなものだ」
『ムグムグ……僕もお腹すいて死にそーだったからねぇ』
「嘘つけ、お前はお腹空かないだろ?」
『ごっくん、っと。人格があるとお腹すくすく』
おばちゃん、お水! とネオンは注文し、冷や水をぐいーっと一気に飲み干す。
「あら、可愛い男の子じゃないか。弟かい?」
「いえ、違います。この子はなり行きで……」
「そうかい……ってアンタ、もしかしてファルかい? 一年間どこいってたのさ!」
「え、まぁちょっと……」
「お母さん、まだ見つからない……か」
「…………はい」
この宿屋は、よくレストランとして母と行っていたから、顔とか覚えられていたみたいだ。
——ここは私の故郷で生まれ育ったエリア。
——母クレトは、1年前に突然行方不明になった。
——父は幼い頃、一段と輝く粒子となって『死んだ』。
——朝起きると「おはよう」といって微笑んでいた母さんがいなくなっていたんだ。
——エリア中をくまなく探した。だが……見つからなかった。町中の人に聞いても知らないの一言。
『ブルーバード』というギルドがあるが、最近ナイトメアの動きが活発で、忙しそうだったから頼むのを諦めた。
——自分で探す。
——母さんを……見つけたい。
そう決意し、エリアを出たんだった。
「——大丈夫さ。その内元気に戻ってくるよ!」
「……ありがとう」
「今日は日暮れから『感謝祭』があるよ。行ってみたらどうだい?」
「祭りか……」
久しいな。
昔は母と二人で、出掛けたものだ。
『祭りっ!? 行く行く! だよな! ファル?』
「分かった。行こう」
まずは荷物整理しなければ。
——ファル宅
自宅に戻り、アイテムを整理していく。
この世界は現実世界とは違って、何というか……非常に便利だ。
大量の荷物は粒子となって、掌に保管される。
一覧を見たいなら、手を握って開けばいい。グーしてパーするだけだ。
ウィンドウが表示され、持っていくものと置いておくものを決める。
現実世界で言うところの『ゲームのメニュー画面』みたいなものだ。
一通り整理したところで、祭りが始まったのかそれらしい音楽が聞こえてきた。
『ファル! 早く早くっ!』
「ちょ……待てネオン、まだ靴を履けてな、うわぁっ!」
……第三者から見れば、仲の良い姉弟にしか見えないだろうな。
盛大に転けたのをネオンは大爆笑。その後、私が拳骨を食らわせたのは言うまでもない。
『見てみてファル!! このキラキラしてる真っ赤なものって何っ!』
「リンゴ飴だ。水飴を使っている」
『じゃあファル、この茶色くて長いものは?』
「それはチョコバナナだ。バナナにチョコをつけている」
『すげーっ!』
「……子供みたいだな、ネオン」
私も……始めてみたときはそんな風に感動してたっけな。
遠い目になったのをネオンが見つめてくる。
『ファル……大丈夫。僕は君のこと認めてるし、離れるつもりはないから』
あの無邪気そうな顔から一変して大人びた口調。
「あぁ……ありがとう」
——この時の私は知らなかったが、大事なパートナーから始まって、これから仲間と出会っていく。
——世界の歯車が、回り始めた瞬間だった。
満喫した私達は、広場で『射撃屋』の景品『爆裂チョコチョッコ』を堪能していた。
このお菓子は、変化を求める小さな子供に人気。
最初は普通のチョコレートなのだが、段々ピリピリしてきたり、口の中で破裂したり、はたまたチョコがブクブク膨れたり。
なんともおかしなお菓子ってことだ。
材料が知りたくなる……
『うひゃーなんか口の中で破裂してる!? と思ったらなんかドロドローっ!』
「だから言ったろ、変なお菓子だって」
『うん、でも面白いや』
「アハハ……」
ついついネオンのリアクションに笑ってしまう。
——その瞬間だった。
——うわぁぁぁっ! な、ナイトメアだっ!?
- Re: 【カキコ民】夢現の境界線【参加型!!】 ( No.16 )
- 日時: 2012/07/26 12:25
- 名前: 月葵(元フレイア ◆7a0DWnSAWk (ID: Z0yvExs9)
- 参照: ようやく登場です;; 一気に更新しました!
——な、ナイトメアだぁっ!
「……っ! ネオン!」
『分かってる!!』
ネオンを銃形態にしてから、駆け足で悲鳴の出所に向かう。
少々強引に突き進み、騒ぎの中心であるゲート前に着いた。
——中央ゲート
「……やぁっ!!」
長剣でまず、私に注意を向ける。
その数——三体。
『ガイストの弾数的にギリギリだね。やれる?』
「勿論だ」
エリアの人達に手を出したことを、後悔させてやる!
「……『銀閃風』!!」
オーラを展開し、三体同時に吹き飛ばす。
人だかりの少な目なゲートの壁の方へ。そして、まずは1体を拳銃で貫く。
ギュアァァァァァ……と悲鳴とも言えない叫び声が轟く。
「ちょいと退いた退いた! ブルーバードだっ! ……!?」
少々遅く到着したギルド『ブルーバード』のメンバー。
全員が到着したときには、私は既に2体目の頭を撃ち抜き、三体目に取りかかるところだった。
「セキマイちゃん、援護……する?」
メンバーの一人が言ったが、セキマイと呼ばれた少女は首を横に振った。
「様子見だ……面白そーなもの発見ってな。」
「……?」
最後の相手は少し厄介だった。
体制を崩させても素早く起き上がり、襲ってくる。
馬と獅子……素早さでは中々のナイトメアはまず、相手を速さで翻弄させる。
「くっ」
突進を回避するが、あまりそうもしてはいられない。
街の被害が広がるし、まだガイストで2体の魂を撃っていない。
「……」
『万事休す?』
「……いや、今いい方法を思い付いた」
ナイトメアの突進を、ギリギリまで引き付ける。
そして、銀のオーラを纏った剣で下から振り上げた。
わずか50cmだった。
だが、いくら素早い奴でも、
空中では意味をなさないだろう。
「はぁっ!」
隙を逃さず、跳躍し叩き斬る。
最後のナイトメアも仕留められたし、これで大丈夫だろう。
『おつかれー。じゃあさっさと消そう!』
「あぁ」
パンパンパン……と乾いた音がエリアに響いた。
ざわざわと周りが騒がしいが、まぁ気にすることは……
「よっ。キミ、良い腕してるんだな? あ、俺はセキマイってんだ、よろしく」
黒髪に印象的な赤い目をした、……男か? いや、女?
「あ、あぁよろしく」
『僕はネオン! よろしく〜』
「白のガイストか。成程成程、どーりでお強い訳だ」
セキマイという少女(多分)は、腕組みをし頷いている。
よく見ると、腰のホルスターに青い拳銃。
『セキマイって男の子? それとも女の子? あとそれ、青のガイストだよね?』
『お前、質問は一つずつにしろ。それに色つきの拳銃はガイストだけ、って分かってるだろ? いちいち聞くのか? つーかバカ?』
その拳銃から男の子の声。どうやら本物のガイスト、つまり……
「旋鯉、そんくらいにしとけー」
「……セキマイ、君はブルーバードの?」
「おうよ。青の導きの魂、ブルーバードのギルドマスターだぜ」
——ギルド『ブルーバード』
……あのあと、セキマイは街の人を解散させ、ある程度被害状況を確認した。
功を奏したのか、怪我人はいなかったし、多少ゲートを修理することにはなったが、大きな問題はなかったようで安心した。
ふいに、セキマイが口を開いた。
「物は相談ってやつだが……ギルドに入る気はないか? ファルだっけ、実力は申し分ないからよ」
ギルド……か。
答えは、
「すまない。ギルドに入る気はないんだ……」
そう答えた私を、セキマイはしばらく見る。
ふぅ、とため息が聞こえた。
「入る気がねぇ、か。それ、理由は母親だろ?」
「!?」
知っていた……のか?
ギルドには話していないのに?
「街の奴等が噂してたんだ。お前の母親だけじゃない。ここ数年、謎の失踪事件が相次いで起こってる。」
「失踪事件……」
「キミ、母親がいなくなったのは自分のせいだと思ってる、だろ?」
「い、いや……」
「さっきの発言のキミの顔、マジで辛そーだったぜ。居場所を求めてるってな」
……図星だった。そこまでみぬくとはな……
どうやらセキマイは観察力があるようだ。
「明日、顔出すだけで良いから来いよ? 入らなくて良いから」
『セキマイ、旋鯉、これからよろしくっ!』
空気読もうとしないネオンが、旋鯉に改めて挨拶。
もちろん旋鯉はキッパリと言い放つ。
『よろしくすんな。俺は人が嫌いだ。しかもお前あほだし』
『僕はガイストだよ』
『そういう問題じゃねぇ!』
この二人は仲が良いのか悪いのか……
「……分かった。……セキマイ」
「何だ?」
「……ありがとう」
祭りの音は、まだエリアに響いている。
だが、私の中で、確かに聞こえたんだ。
——私は、独りじゃなくなったんだ、という心の声が。
Next story…未定。