複雑・ファジー小説
- Re: 【カキコ民】夢現の境界線【参加型!!】 ( No.38 )
- 日時: 2013/02/23 14:02
- 名前: 月葵 ◆7a0DWnSAWk (ID: LqhJqVk8)
- 参照: いつまで続くんだこの話(おいっ
——食堂付近、小庭園
「ふぃー……意外に少なかったな?」
そう言う赤米だが、実際は二十数人位いたぞ?
どこをどう見れば少ないんだ?
「京の能力で、相手の先の行動を読めた。動きやすかったな」
っていつの間に矛口が居たのやら……確かにそうだが。
「それで……どうします? この方々は?」
まぁそりゃ……ね。
「縛っとくに決まってるわよね?」
「賛成ー。攻撃されるとヤだな」
九賀崎の言葉に如月と赤米、戦闘に参加した——正確にはこちら側の一方的な攻撃のような気もしなくないが——全員が賛成。
「後は……ひっちゃん次第ってか?」
「そうなるな。赤米……寒くなってきたな、どうする?」
「ったくお前は……そんなに寒いなら教室にいったらどう、だ……」
ん? 最後だけよく聞こえなかったが……
赤米に問おうとしたが、あたりは白い煙で覆われている。
まぶたが重くなってくる……これ、は……睡眠薬か……?
眠ってしまう直前、全員が倒れているのと一人の学生が走ってくるのが見えた。
だが、俺は何も言えず、意識を手放してしまった。
「いくら能力者……いや、化け物でも眠らせたらこっちのもんだなぁ! ったく、手間を取らせやがって」
そう声を発したのは、この学園の者ではない犯罪者。
「はぁっはぁっ……っ!?」
教室から一心不乱に走ってきた水桜は、犯罪者の姿に驚いてしまうが、相手はこちらに気がついていない。
思わず傍の木々に身を隠し、様子を伺う。
「あいつもあいつだしよ……さっさと行動に出たらいいのに渋りやがって……」
あいつ、とは誰かはわからない。食堂にいる方の犯罪者だろうか。
「これだけいればかなりの金になる。一生遊んで暮らせるぜ」
……!! 人身売買のことを言うのだろうか……確かに、能力者は使いようによっては金儲けができるとか。
自分がその立場になったらと思うと、恐怖で足がすくみそうになる。座り込んでしまうのを堪え、静かに食堂に向かった……が、
「んぁ? まだいたのか、化け物よぉ」
「っ!!」
自分ではどうしようもない。どうしようもないけどどうすればいい?
考えは不安、恐怖、焦りを生み、ただただその場に立ち尽くす水桜。
「てめぇも世の中に貢献できるんだ。感謝しろよな、あぁ?」
距離はかなりあったはずなのに、もうすぐ近くにまで来ている。
—……嫌。こないで。こないで……
「誰が世の中に貢献ですか—————————っ!!」
硬直していた体を後ろに引かせ、前に出てきたのは
「は、悠乃さん……」
「うんうん! やっと名前で呼んでくれたね! 水桜ちゃん!」
寮長の柊さんだった。
後ろには知らない男の人……誰だろう?
「やぁ、君。よくもまぁうちの学園に侵入するだけでなく、能力者を攫うだなんてことしようとしたね?」
「はっ、勝手に言ってろ。お前らがいるせいで仕事も努力も認められない世の中になったんだ!!」
ピクっと悠乃さんの眉が動いたのは気のせいだろうか?
……否、悠乃さんは怒ってる。しかもこちらに伝わるくらいの怒りが。
「ふぅ、だからって」「だから能力者は化け物で、化け物は化け物らしく世の中に貢献しなさいって? そんな戯言よくもいえるわね!!」
教室で叫んだ声とはまったく違う、心に響くような声。
隣の男の人の声、遮っちゃったけど……
「大体、自分たちが努力しても認められないなんてことはないし、いくら能力者といっても万能じゃない!
化け物っていうの、本っ当に最低な発言! 誰もがみんな望んで、好きで、喜んでこの能力を授かったわけじゃないの!!
人じゃない目で見られたり、独りぼっちになったり、両親から無理やり引き離されたり、能力のせいで人が傷つくのを今でも怖がってる生徒は沢山いるんだ!!
私たちは能力がある! だけど本質はみんな同じ『人』!
そして、この学園にいるみんなは、私の家族です。家族に手出しするのは許さない!!」
そういうや否や、悠乃さんは一歩ずつ犯罪者に近づいていく。
「来るなっ!! お前らのことなんて知ったことか!!」
犯罪者は後ずさりつつも、後ろから拳銃を取り出し、悠乃さんに照準をあわせる。
「やってみれば? あなたの理屈は通らないから」
まっすぐな面差しの悠乃さんに、だんだん焦りを浮かべる犯罪者。
「くるなくるなくるな!!」
パンパンパン……と3発続けて撃つも、悠乃さんに傷はついていない。
「悠乃君の能力だよ。認識中の危機を回避できるんだ」
次に2発……ここで異変が起こった。
「ッ!?」
頬にわずかにかすったような痕。
銃弾がかすったらしい。赤みを帯びている。
このままではいずれ、怪我を……
「くっ!!」
腕にあたり、出血している。
ポタポタ……と手から零れ落ちる赤い血。
「悠乃君!」
男の人も異常に気がついたみたいだけど、下手に動けない状況。
「大丈夫、です」
そう答える悠乃さんは辛そうだ。
私、私、何も、できない……
「死ねぇぇぇぇぇぇ!!!」
—もうそんなの、いやだ!!!!!
パァン……
血しぶきが上がる。視界が揺らぐ。
バランスが崩れ、悠乃さんにもたれかかるようにして倒れた。
「み、お、ちゃん……? 水桜ちゃんっっ!?」
悠乃さんは私を抱えて座り込む。
そう、私が能力を使って、筋肉の細胞を活性化させて限界まで走り、悠乃さんの前に立って銃弾を受けた。
私の力、役に立ったかな……?
痛い……でも、守れたよね?
「っ、……うあぁぁぁぁぁ!!!!」
「……これ以上被害を広げないためにも、眠っていただきますよ」
男の人がそう言い、何かを放り投げた。
それは、ここにいた生徒たちを眠らせた『睡眠薬』の煙型だ。いつから持っていたのだろうか、少なくともさっきまでは持っていなかった気がするが。
その煙は犯罪者を覆い、逃げ去る暇を与えず眠らせた。
「しばらく寝かせましたよ、もう安心です。あとは警察に引き渡しましょう」
「そんな場合じゃありません理事長さん!! 水桜ちゃんの出血がひどいんです! だめだよ水桜ちゃん!! こんなところで死んじゃだめ!!」
「悠乃さん……手、離してください。死にませんし、ちょっと……苦しいです。」
……………………。
…………。
……。
沈黙が流れた。
「へ?」
「よい、しょ。傷は、ないです」
ゆっくりと立ち上がる私。……出血で濡れた制服がちょっと怖い雰囲気になってるかも。
「えっと……もう一回いうね。へ?」
「悠乃君、彼女の能力は『細胞活性』。どんな細胞も活性化させ、超人的な身体能力はおろか、自己治癒できる能力だよ……って、知らなかったんだね?」
「聞いてませんよそんな話!!!! 知ってたら担任の先生を通じてでもいいので教えてください理事長さん!!」
「いやぁ、ごめんごめん」
矢継ぎ早に言う悠乃さんに対し、ぜんぜん悪びれていない様子で理事長さんは謝る。
……本当は、知らなかったんじゃない。言いたくなかっただけだったの。
「あの、悠乃さん……」
「水桜ちゃん。もう何も言わないでいいから。だって『家族』だもんね!」
にっこり微笑む悠乃さんの顔は、とても暖かかった。
私の居場所がこの学園になるかなって、少し思えた。
その後、犯罪者たちはすべて取り押さえられ、警察に引き渡された。
もちろん、食堂にいた人もだけど……
その人は、大切な奥さんも亡くなり、信頼していた能力者の友人から多額の借金を背負わされたらしい。迫り来る不幸に心が病み、自暴自棄になっていたところで犯罪者たちと知り合いになったんだとか。
でも、その人は犯罪者の首謀者—私たちが接触した方—が捕まったのを知ると、自首したそうです。心を改めようとしたんだと思います。
平和な生活が戻ってきました。
私もちょっと、話せるようになりました。
……で、今、私の歓迎会をしています!