複雑・ファジー小説

Re: 【カキコ民】夢現の境界線【参加型!!】 ( No.45 )
日時: 2013/06/04 10:38
名前: 月葵 ◆7a0DWnSAWk (ID: LqhJqVk8)

〈第4話:猫と依頼とギルド同盟〉



——ナイトメアがメーアエリアを襲撃した、その翌日。




「……」
『どーすんの? ファルー』


私は朝早くから、ギルド『ブルーバード』の正面玄関で立ち往生していた。

このままだと、建物の前で突っ立っている、変な人になってしまう。
しかし、セキマイから誘われた以上、来ない訳には……


今、ネオンは銃形態であるが、声音から早くしてほしいという感じが伝わってきている。


仕方ない、今日は一先ず……


「……帰ろう」
『ありゃりゃ? 帰るの?』
「か、……帰るんですか?」





…………振り向くと、そこにおどおどした感じの青年がいた。



「んな、なっ!?」

「あ、えっと、その……すみません、昨日のファルさん……ですよね?」

い、い、いきなり話しかけられたからびっくりしたぞ。
なんとか平静を保てたから良かったものの……

ネオンは必死に笑いをこらえているようだ。


「あぁ。ファルでいいよ。……君は?」
「僕はアオ。セキマイちゃんから、君を誘って依頼を受けるようにって言われてたから、迎えに行ったんだけど」

アオが家に来た気はしなかったのは、どうやらすれ違っていたかららしいな。


「依頼か……ギルドメンバーじゃないと無理なのでは?」

『ファルは細かいところ気にするんだね〜。ブルーバードは自由が基本。ギルマスが認めた人物なら依頼受けて報酬貰えるんだよ?』
「……そ、そうなのか」


というか、そうだったのか?
アオに目を向けると、こくこくと首を縦に振っていた。


「初代ブルーバードのギルドマスターから続く、特有の決まりだそうです……って白のガイストは詳しいなぁ」

『あ、ネオンでいいよ! うーん、何でだろ? 知らないはずだったのに、何か口走っちゃったね?』
「それ、おかしいだろ。何か変なものでも食べたか?」
『むぅ、食べてないって!』


痴話喧嘩が始まりそうなのを見かねたアオは、慌てて話題を変更。


「あ、そ、それで依頼なんですけど……実は、今頼まれたものなんです」
「構わないさ。それで?」


続くアオの言葉に、私は耳を疑わざるを得なかった。


「えと……依頼人は、とある『ケットシー族』の長男のカレハ。内容は…」
「け、……ケットシーだとっ!?」


身を乗り出し、目を輝かせてしまう……えと、猫が好きなんだよ。私は。



『あ、ケットシーって希少種族だよね?
 僕らが見る夢は、現実世界の話らしいけど、その現実世界の猫が、何らかの形で知恵や知識を身に付けたのが、僕らの世界で【ケットシー】になる。
 ……えっと、ケットシーは猫と違って二足歩行だし、額の小さい宝石で魔法をちょっぴり使えるんだ。以上!』

「人型になって勝手に百科事典を取り出しながら詳しい説明をありがとう」
『それ、誉めてる?』
「まぁ少しだけな」



話がまたそれたから戻す。




依頼内容はこうだ。

ケットシーのある家族の長男・弟・妹でメーアエリアを観光しに来たらしい。

メーアは昔から、数少ない観光地として栄えている。
……とはいっても、元々このエリアに住む人々は、『現実世界』——つまり私達が眠っている間に見る夢、のことなのだが——のことで見聞きしたことを記憶しやすいのだ。
そこから習得した技術が発達し、こうして栄えているというわけだ。

勘違いしそうなので先に言っておくと、いくら記憶出来るからといって、一部始終記憶できないぞ。
やはり、夢だからな。忘れていくのがオチだ。


さて、エリアの説明はこのくらいにしよう。


ケットシーは、ヴァルムエリアでひっそりと、人の目から逃れて生きている種族。
その為、他のエリアに行くとなれば当然、見るもの全て目新しいものばかりで……







つまり、『いなくなった弟と妹を探して欲しい』……だそうだ。






「まさか居住区の方には行かないはずだが、念のため、アオはそっちをあたってくれ」
「う、うん。ファルちゃんは?」
「私は街区に行く。」



街区には飲食店や様々なお店がある……広いが、まぁなんとかなるだろ。
迷子の二人の特徴を聞いた後、それぞれ探索を開始した。









——街区


依頼人のカレハという者は、先日壊されたゲート近くの噴水場で待っているそうだ。

二人は街区で、散り散りになったそうだから、まだいるだろう……いや、いてくれないと困るからな?


「まずは、『黒毛で尻尾の先が白い猫、宝石は青色』か。趣味などがあったら助かったが……」
『ファルー! この焼きリンゴおいしそうだよ!! 一つくらい買わない?』


……ネオンは探す気ゼロだろ、全く困ったものだな。


「買わないに決まって……」「どいてですの!!」


私の声と誰かの声が重なった。同時に、ポフッ! っと後ろから誰かにぶつかる。
銀髪の長い髪の毛、毛先は緩やかなカーブで、服装は黒基調のフリルドレスで頭には白いレースがついたカチューシャだ。
口調からして、貴族といわれる裕福な家庭のお嬢様だろうが……一人だ。迷子だろうか。

「だ、大丈夫か?」

少女は私を見ると、すぐに後ろに振り向く。
ふと気付くと、男3人がこちらに向かってきた。

「オイオイ嬢ちゃん、人様にぶつかっといて謝りもしねぇとはどういう教育されてんだ?」
「クリーニング代、お母ちゃんにもらってこいや!」
「しめて30万リルだ。裕福な嬢ちゃんのことだからそんなはした金いくらでもあるだろ?」



……なるほどな。すぐ状況がつかめた。



「フンっですの!! あなた方のような、薄汚いコソ泥の下劣極まりない人間にあげて差し上げるものなど1つもありませんわ!! こういうのは逃げるのが勝ちですの!!」


思った以上に芯の強い子らしい。……が、その言葉が男たちを逆切れさせたようだ。

「んだとこらぁ!!」
「やっちまえ!!」

『ファル、君って巻き込まれやすいよね〜』
「ネオンはその子を見てくれ」
『いーよ! 了解!!』

銀髪の少女をネオンに預け、私は3人と対峙する。

「んあ? なんだてめぇ?」
「外野は引っ込んでな!」
「痛い目見るぜ?」
「あー、その、だな。確かにぶつかったほうも悪いが、君たちもそれに乗じてお金を取ろうなどやめないか?」


なるべく話し合いで解決できたらいいだろう? ……ま、裏切られるのがオチだというのは分かっているが。


「なにブツブツ言ってんだこいつ!」
「かまわねぇからやれ!!」


うぉぉぉっ! と殴りかかってくる3人に、私はまず、正面向かって右の相手の拳を受け流す。
続いてすかさず、鳩尾に蹴りをくらわせ、とどめに少しオーラを発動して反対の足で蹴っ飛ばす。約2メートルくらいは飛んだか。

2人目は振り向きざまに回し蹴りで決着。3人目はアッパーカットで天高く飛ばされ、ノックアウトしたとさ。


これで、しばらくは動けないだろう。
私はパンパンッと服のほこりを払い、その場を後にした。

Re: 【カキコ民】夢現の境界線【参加型!!】 ( No.46 )
日時: 2013/03/03 22:32
名前: 月葵 ◆7a0DWnSAWk (ID: 4qS6O2ST)

ならず者の3人を倒した後、私はネオンのところへと戻る。


「「「こいつ、つ、強ぇ……」」」

さすがに参ったのか、チラ……と振り返ると慌てて逃げ去って行った。
結構手早く済ませたので、なんかあっけない気もする。


そう思っているうちに、タッタッタッタ……と女性と男性が走ってくるのが見えた。


「カロ……あ、ユリエル様!」
「ったく、やっぱりこうなってたか」

「あ! セイル! ゼロ! 遅いですの!! 待ちくたびれたのですわ!!」

銀髪の少女もとい、ユリエルはお世話係であろう女性と男性——セイルとゼロという人物——に向かって走り出した。

「主を助けていただき、ありがとうございました」
「あ、いえ、治安を守るのも私の役目ですから」
『だね! ……ところでさ、君……』


珍しく、ネオンがユリエルのことをまじまじと見つめる。おいおい、一目ぼれでもしたのか?


「……なんですの?」


ユリエルのほうはちょっと不機嫌そうだ。そりゃそうだろう。初対面の相手から見つめられるなんてな。


『うーん、どっかで会ったような、……いや、気のせいか!』


一人で納得して笑うネオン。そうですの、とユリエルのほうも別にどうでもいいといった風にしている。


「とっとと帰るぞ」
「あ、待ってくださいゼロ! あそこの焼きリンゴが食べたいですの! 買ってくるのですわ!!」
「だーかーら、なんで俺が言うこときかなくちゃならないんだよ!?」


……ぷっ、さっきの私とネオンのやり取りじゃないか。


「大変ですね、あなた達も」
「そうですね、これからが大変なんです。理想の為に」


ん……『理想』? 何か目標としていることでもあるのか。すごいな。


私の目標……母を見つけた後、私はどうするのだろう……

もちろん、母と共に暮らすのは当たり前だ。だが、『導きの魂』という役目を果たす義務もある。ネオンとの約束なのだ……


「その理想の為に、わたしたちは進まなければならないのですよ」
「高い理想、なんですね……」


私がそういうと、セイルは微笑む。
その笑顔は、まるで私の母さんのように暖かい笑顔だった。


「道のりは遠く険しいですが、わたしはカ……いえ、ユリエル様の為にも成功させたい」
「そうか……なら、私も応援しよう。微々たるものだが、力になれる事なら協力しよう」


そういうと、驚いた様子でこちらを見るセイル。
それに対し、私は手を出す。


「私はファルだ。よろしく」
「……セイル・エクシダウテンです。あちらにいるのはゼロ。本当はもう一人いるはずなのですが、紹介できなくて残念です」



いや、気にすることは……と言いかけたが、ブォォォオオ!! という轟音でかき消されてしまった。


「た、大変だよファルちゃん!!」


広場の方向からアオが走ってきた。何があったのか。


「一体どうしたんだアオ!?」
「ゼェ、ゼェ……あの、えと、女の子が『白のガイストの奴はどこだーっ!!』って、叫びながら、周囲の人たちを吹き飛ばして、るんだよ、オーラ、使ったんだけど、乱れて、効かなくて……」

呼吸を整えつつ状況を説明するアオに、私はう、と言葉を詰まらせた。

間違いないだろう。


「クリムゾンベアー……しまったな」
『あーあ、だから言ったのに。あれだね、自業自得だ……痛っ!?』


人型ネオンにデコピン一発。
ともかく、この状況を生み出したのは私だ。何とかしなければ。


「そういうことなので、ちょっと私は行かなければ……あれ?」


さっきまでユリエルとセイル、ゼロがいたはずだが、いない。
まぁ、用事があったのだろう。それよりも、私にはすべきことがある。


「……いくぞ、ネオン!」
『らじゃー!』
「ぼ、僕もおいていかないで……」


私たちは広場に向かって走り出した。