複雑・ファジー小説

Re: 【カキコ民】夢現の境界線【参加型!!】 ( No.48 )
日時: 2013/03/27 23:31
名前: 月葵 ◆7a0DWnSAWk (ID: 3xnkBRQd)

——メーアエリア 東ゲート前


街区をさらに奥へ進むと、ゲートが見えてきた。
ゲート付近は未開地エリア近くのためか、街区と言えどどこか閑散としている。


「……ふぅ。セイル、ゼロ。ご苦労様です。もう普通に話して良いですわ」


先ほどユリエルと呼ばれていた少女がそう言うと、セイル、ゼロは足を止めた。


「よろしいのですか? 『カロン』様。折角、元『鍵』の娘を見つけたのですよ?」

「ったくお前は今とさっきとギャップありすぎだろ」

「あのぉ……そんなにギャップはないと思いますよ、ゼロ。寧ろ、『らしくお芝居をした』という表現が妥当かと」

「……芝居、ねぇ。ま、俺には関係ねぇが」


「それより……てんてんはどこですの!? 全く、どこを歩いているのだか!」

「カロン様落ち着いて……あ」


地団駄を踏むカロン。そこで何かに気づいたセイルだが、時すでに遅し。

「今度こそ外出禁止令です……っあ…きゃっ!」


その地面にバナナの皮が落ちているのを知らなかったため、カロンは盛大にずっこけるはめになった。

「うけけ! 意外にドジっぺなんだなカロン! うけけけっ!」

「て〜ん〜て〜ん〜! 待ちなさいですの!! お気に入りでしたのよこの服は!!」

「か、カロン様落ち着いてください……服なら洗って差し上げますから……」

キャーキャーワーワーと叫ぶ声が辺りに木霊する。
何気ない日常にしか思えないこの光景だ。本当にこの少女が、ナイトメアを統べるものと謳われる『カロン』なのだろうか……

ゼロはふとそう考えたが、頭をふった。自分やセイル、てんてんはカロンという存在に、既に忠誠を誓っている。手首に刻まれる刺青はその誓いを表す『契りの輪』。これがある限りカロンの命令は絶対であり、また、理想を実現する同士として共にいるのだ。

……とはいえ、子供二人のやり取りにやれやれ、と呟くと、一瞬の間にてんてんとカロンの首根っこを掴み上げ、ストン、と地面に下ろした。

喧嘩は両成敗にて一件落着。


「あのなぁ、今日の目的は『この夢世界と現実世界の鍵となる、白のガイストの所持者を見つけること』だろ。これからどうすんだよ、カロン」


少女——カロンは音もなく立ち上がり、クスッと笑って言った。


「物語は始まったばかりですの。白のガイストの所持者は見つけましたし、目的は達成していますわ。それに……ゆっくり楽しもうじゃありません? ねぇ、貴女もそう思うでしょう…………ルミ?」


カロンの問いかけに、建物の死角から出てくる少女。
黒髪長髪で滑らかなストレート。顔立ちはよいがダークブラウンの瞳は憂いを帯びている。全身に黒を纏ったような服装が太陽に照らされて一層目立つ。


「私は……分かりません。ただ貴女に従うだけの人形ですから」


ルミはそう言うと暗い路地に一人消えていった。




まるで、現実から目を背けるように……







       まだ、物語は始まったばかり……