複雑・ファジー小説
- Re: 【カキコ民】夢現の境界線【参加型!!】 ( No.51 )
- 日時: 2013/04/12 22:07
- 名前: 月葵 ◆7a0DWnSAWk (ID: 3xnkBRQd)
- 参照: ちょこちょこ皆様のキャラも出てきます!
——メーアエリア 広場
私とネオン、そしてアオがメーアエリアの噴水広場に到着したその時、物凄い砂埃が視界一面に広がった。
「くっ……」
『これいったい……誰が?』
「ケホッケホ、だ、誰かいます……!?」
しばらく経って、目を凝らすと一人の少女が不服そうな顔をして立っていた。
黒髪のポニーテールが風になびき、スラッとした手足から華奢な印象がうかがえる。だが、両手に持つ双振りのナイフと引き締まった体躯から、並大抵でないだろうという気配が感じられた。
こいつは……只者じゃない。
一年も修業した身だからこそわかる、相手の器量を見極める術。
……ま、私自身がけりをつけるなどと啖呵を切ったのだから、今さら後には引かないが。
「あ……あぁ……! あの人、ぼ、僕知ってます!!」
アオが少女を指差して言う。
「あの人、前に近隣のナイトメアの討伐に参加してた人で、最近クリムゾンベアのギルドマスターに任命されたとかで……」
『ギルドマスター? あんな子が?』
人型のネオンは首をかしげる。
ギルドマスターはマスターとしての力量を図るために、試練場に行き、『導きの魂』になるための試練をうける。
試練をくぐり抜け、ネオンや、セキマイが所持する旋鯉といった『魂』を手に入れることでギルドマスターになることができるのだ。
……だが、私は例外だ。未開地エリアにはギルドなんてないし。そもそも単独の方が動きやすかったからな。
「ナイフさばきは前ギルドマスターをも凌駕し、素早さにかけては右に出るものはいない。そしてその迫力はまさに『紅の熊』のごとく。ギルドマスターのユーリカ・エリクソンが何でここに!?」
口々に騒ぎ出すエリアの人々。野次馬が集まってきたようだ。
「アオ、ネオン。すまないが、エリアの人達を安全な場所に誘導してくれ」
「ぼ、僕らはいいけど……ファルちゃんは? まさか……」
「……この騒ぎの原因は私にもある。皆が傷つかないよう、頼む」
「まっかせなよ! ファル! ほら、アオ、行こうよ!」
「う、うん……?」
グーサインをしたネオンがアオの背中を押して、早速行動開始する。
私は少女と対峙する形となった。
「ん? なんだあんた?」
「君はクリムゾンベアのギルドマスターだと聞いた。私は以前、クリムゾンベアの管轄地でオリハルコンを採掘した。このような形になってしまったが、謝罪したい。すまなかった……」
いずれは謝罪しなければならなかった。賠償金と共にな。
けれども今はお金も少ないし、謝りにいく余裕もなかった。
怒られても当然だろう。
だが、予想外の答えが返ってきた。
「……なんの話してんだ? 私は過ぎたことは気にしねぇんだよ」
「……ハイ?」
と言いますと? いやいや、じゃあ何でギルドマスターともあろう方がこんなところに?
答えはすぐに返ってきた。
「あんた、白の『導きの魂』を知らねぇか?」
「え、あ、それは私だが……」
「……………………なんだと?」
暫しの沈黙のあと、少女——ユーリカはニヤリ、と笑った。まるで獲物を見つけた狼のように。
「私は探してたんだ、強い奴を……手に入れられるはずのなかった幻の白のガイストを手に入れられた奴を、な!!」
そう言い切ると同時にナイフを構え、前方向に突進してきた。
「なっ!?」
背中の長剣を取るには間に合わない。
だが、まだだ!!
「はぁぁあああっ!」
オーラを急展開し、右手に持っていた銃弾に一気に纏わせて撃つ。
銀色をまとった弾は、視界一面程ではないがバズーカ砲に近い大きさになった。
こういうときのために銃は携帯しているんだ。何かと役に立つしな。
「くぁ……!?」
流石のユーリカもすぐにナイフを防御に変えたが、弾の圧力で吹き飛ばされた。しかし、地面につく頃には体勢を立て直し、すぐ攻撃できるようになっていた…………君は猫かうらやましいな!?
……いや、まともなツッコミはおいといて。
「へぇ、その近距離から撃てるなんて流石だな? 導きの魂さんよ」
「君もあそこから体勢を立て直すなんてすごいぞ。ギルドマスターのことだけはある」
あと私はファルだ、と付け加えるとユーリカからよろしく、とだけ返ってきた。
「もっと楽しませてくれねぇか? 身内じゃ……ブルーバードに行った奴しか強い奴がいないんだ」
ブルーバードにそんな凄腕の奴が……やはりベルクエリアは違うなぁ。……あ、けどシュロスエリアもかなり強いと聞いたことがある。
「悪いが、この騒ぎをやめて欲しいんだ」
「うーん……無理だな」
いやそんなキッパリ言わなくても……?
ユーリカは何かを思い付いたのか、人差し指をピンと立ててこう言った。
「ほら悪役の奴らがいう台詞、あるだろ? 『やめて欲しけりゃ力ずくでやれ』ってな!!」
……仕方ない。これは諦めて相手をするか。
- Re: 【カキコ民】夢現の境界線【参加型!!】 ( No.52 )
- 日時: 2013/04/12 15:55
- 名前: 月葵 ◆7a0DWnSAWk (ID: LqhJqVk8)
戦いを始めた私達だが、圧倒的にユーリカが優勢だった。
キンッ! と刃と長剣が重なる度に、その圧力が烈風となって押し寄せる。
「くっ!?」
「はっ! まだまだっ!!」
——そうだ。私はつい一年前まで武器を持つことはなかったのだ。勝てる見込みなど……少ない。
キンッ! キィン! とオーラを纏ったナイフは続けざまに襲いかかる。私は長剣で身を守ることしかできない。
段々、剣で受けることすらままならず、肩や腕に切り傷ができる。
——ナイフの一撃が……まるで……
「ハァッ、ハァッ……まるで鉛を乗せたかのような……だな」
「ん? なんか言ったか?」
「いや……」
わずか数合交えただけで、私は息を切らし、体力を消耗していた。対するユーリカは涼しげにこちらを見ている。
「……しかし、ホントにあんたが白のガイストか? 疑わしくなってきたんだけど?」
…………ユーリカがそう言うのも無理はない。
未開地エリアのガイストを手にいれたとし、ただの拳銃を『白のガイスト』に見立てれば、誰だって『導きの魂』になれるのだから。
……ま、撃ったときの効果がないからすぐバレるのが落ちだろうがな。
「信じていただきたいのは山々なんだが……何せ、『人と戦ったことは一度もなかった』ので。ベルクエリアにいたのも、どんなナイトメア相手でも慣れるようにと言われたからなんだ」
「ふーん……ま、どのみち私が戦って分かることだ。……プレイヤー同士の決闘に慣れてないからって容赦しねぇ。覚悟しろっ!」
再びユーリカは接近。
あのナイフの動きさえわかれば、なんとかなるか……!
「きみ……ナイフの動きは結構単純だったよ。あとは攻撃のあとに隙ができる……試してみたら?」
え……? 今、なんと?
ふと見ると、今しがたオーラを消したと思われる人物がこちらを見ている。
黒髪に瞳も同じ色だが色素が薄く、どちらかと言えば灰色に近い。見た目は……確かに男のようだが顔が女の子らしい……いや、失礼。俗にいう『可愛い系男子』だな。
「あー!!! あんたはレンゲットのとこのクオか!? 何アドバイスしてんだよ! これは真剣勝負なんだ邪魔すんな!!」
ユーリカはクオに向かって指差し抗議するが、クオには効き目がないようだ。
「クスクス……こんなところで面白そうなものが見られたんですから、アドバイスせずにはいられなかったんですよ」
それにここのギルドに用があったので、と言いつつ戦いの巻き添えを喰らわない位置まで下がるクオ。
「レンゲット……って誰だ?」
「僕らのギルドマスター……と、それより良いんですか? 来ますよ?」
見ると、最大限にまで翡翠のオーラを噴出させたユーリカが今にも飛びかかってきそうだった。
オーラは周囲の風を巻き込み、砂嵐のように吹き荒れる。
「クオの情報網はヴァイスクローで断トツなんだ。さっきのアドバイスが無駄になるように、これで終わらせる!!」
————刹那。
翡翠のオーラはユーリカの身体に収束し、先程まで吹き荒れていた風が……静まる。
同時に、ユーリカの足に凝縮したオーラが鎧のごとく纏っていく。
ナイフの銀の輝きは薄くエメラルドの光沢を放つ。
「秘技……『風嵐双撃波』!!!」
ゴウッ……と音がした時には、ついさっきまでいたユーリカはいない。
どこにいったのかと思えば、上空に殺気を感じる。
見上げると、ユーリカはナイフを交差させながら超高速で落下してくるではないか。
空中から落下してくるとなれば、物体に加速度がつくためにかなりの攻撃力となるだろう。
さらに、ユーリカのオーラが素早さを加速させている。彼女のオーラは、空中だろうが地上だろうが関係ないのか。
「く……『銀閃波』!!」
私は攻撃に対抗すべく、銀のオーラを長剣に纏わせ、その名のごとく銀色の波動を打ち出した————が。
「弱いっっ!!」
キィンッ! とぶつかる音がしただけでユーリカの勢いは止まらない。
長剣で、急所を外せるよう防御姿勢にうつる。
ナイフと長剣が——————触れた。
——ドォォオオオンッ!!
激しい轟音と辺りの建造物を破壊しかねないくらいの振動。
「くぁ……っ!?」
『ファル!?』
私は長剣もろとも吹き飛ばされ、何度かバウンドし、建物の壁に頭をぶつけた。
ネオンの声が微かに聞こえた。エリアの人達を避難させるのが終わったらしい。
「た、大変だ……ど、どうしよう!? セキマイちゃん呼ばなきゃ……で、でも今日は未開地エリアのナイトメア討伐に行ってるし……」
辺りの惨状を目の当たりにしたアオはあわわ……と、若干パニックになっている。
私は立ち上がろうとしたが、どうも上手くいかない……
「く……ぅ……」
「ちっ、この程度かよ……情けねぇな」
再び構え直すユーリカ。次もあの技を出されたら、今度は吹き飛ばされるだけでは済むまい。
——私は……ここで死ぬ………のか?
——……結局、弱かったんだ。
——ユーリカのようにどんな相手にも立ち向かえる強さが……私にはない。
——やはり……私にはガイストを持つ資格はなかったんだ……
——……もう、意識が遠のいてきた……
——……ごめん、ネオン。あの時の、二人の『約束』……果たせそうにない。
——————それじゃあ、ファル。これだけは約束して。必ず…………
『生きるんだ、ファル!! 諦めないで!!! まだ君の力は目覚めたばかりだ!!! それにまだやるべきことがあるんだろ!!!』
「ね……ぉ……?」
————ドクン。
私は……私は!!
————ドクンドクン……
心臓の鼓動が早くなる。息が苦しいし、まだ身体中が重くて痛い。
だけど……まだ、まだ私は……!!
「ぅ………あぁぁぁぁああ!」
まだやらなきゃいけないことがある。
こんなところで…………負けてたまるか!!!
銀色のオーラが体中から溢れだし、意識を失いそうになりつつも気力が体中を巡っていくのがわかる。
確か…………ガイストの最後の試練の時もこんな感覚だった。
不思議と力が湧いてくる。まるで誰かが自分の背中を後押ししてくれているかのように。
「な……にっ!?」
だが次の瞬間、私は視界がホワイトアウトした。