複雑・ファジー小説

Re: 【カキコ民】夢現の境界線【参加型!!】 ( No.55 )
日時: 2013/04/26 12:50
名前: 月葵 ◆7a0DWnSAWk (ID: LqhJqVk8)
参照: 急展開っ!! ……のはず←おい

「なんだ……これは?」



 私——ユーリカは、今、目の前にいる人物を凝視するしかなかった。
 そいつは白の導きの魂、名前は『ファル』。




 …………のはずなんだが。





 あと一歩でたおs……あ、いや、降参させるところまでいったんだ。
 ……が、逆にそれが不味かったのか、ファルは銀のオーラを爆発させながら、恐ろしいほどの——私は何度か身を持って知っている『殺気』を放っている。


 オーラを爆発させるくらいなら……その気になればガイスト持ちの導きの魂はやれる。現に私もやっていたから分かるだろ?





 …………だが、明らかに今は『ファル』じゃないな。




 なんつーか、分かるんだよ。足元はおぼつかないし、瞳は死んだ魚のような眼……しかも瞳の色が『銀色』になってるし、髪の毛も白と黒が入り交じっているような始末だ。


 まるで……別人になっちまったみてぇな。


「ファ、ファルちゃん!? ど、どうしたんだろ……ってネオン君がいない……?」


 アオとやらはネオンとかいうガキんちょと一緒にいたはずだよな。
 ……チッ、ますますわからん。


『ねぇねぇ、ユーリカ。あの子から白のガイストの気配がするよ〜? もしかしたら覚醒融合的なことになっちゃったとか? にゃはははは!』
「……こんな状況だってのに笑うあんたの気が知れないから、エメト。てか、『覚醒融合』?」
『うん、確か〜……白のガイストしか出来ない。あとまともに戦ったら死ぬと思うよ? 多分だけどね、にゃはは!!』


 あー、そういや私のガイストのことを言ってなかったっけ。
 名前はエメト。赤のガイストだ。特徴といったら無知無垢無邪気の三拍子が揃った、常にハイテンションなやつ。

 さっきのように状況をわきまえないところもあるが、戦闘に怯えているようじゃ話にならないのでまぁ良いだろう、と私は思っている。

 説明はそんくらいにしとこう。……というより、ファルが突進してきたから応戦させてもらうぜ!!


「……っ」

「いくぜっ! もう一度……『風嵐双撃波』!!」


 一瞬でオーラを纏って上空から攻撃。
 さっきよりは威力は少な目だが、吹き飛ばすには十分だな。


「……」


 無言でこちらを見たファルが、剣を下段に構えた。成る程、下から突き上げるか。


「やぁぁぁあああっ!!」










 互いの剣が交わる————————刹那。









————ガキィン!! ガッ!!










「…………よぉ、ユーリカ。久しぶりだなって言いたいとこだがよ……キミ、俺んとこのエリアで何やってくれてんだ?」
「あー……セキマイ…?」

「せ、せ、セキマイちゃん!? ……と、レイブンくん!!」
「アオ、久しぶりだな。……って朝以来だから数時間ぶりか」


 会話でわかるだろうけどセキマイとレイブンが乱入した。

 セキマイは浅葱色のオーラを纏いつつ足技で私の剣を止め、レイブンはレイピアと呼ばれる細身の剣でファルの長剣を押さえている。よくそんな細っこい剣で押さえられるな……ってつくづく思うね。

 あぁ、そうだ。あいつは出身がベルク。昔からの知り合いなんだ。あのレイピアは素材が良いからかな、多少斧に当たっただけじゃ砕けないくらい固いぞ。


「なぁセキマイ、いつまでも硬直状態なのはよくない気がするんだが」
「それもそうか。……おーい、アオー! 聞こえてるかー?」

 セキマイは足を下ろし、私もナイフを戻す。ファルは未だに意識がどこかに行っているらしく、レイブンと力比べみたいなことになっている。


「き、聞こえてるよセキマイちゃーん! 僕がやるんだよねー?」
「うぃー頼むぞー?」

 セキマイがそういうと、アオは眼を閉じて蒼色のオーラを纏う。そして、ファルを見た。

「……!」


 ファルに驚きの表情が浮かぶ……一体何したんだ? って、ファルがアオのオーラに捕まってるが……


「アオのオーラは、対象を動かせなくする。アオの精神状態に左右されるが、大抵上手くいくぜぃ」


 すかさずレイブンが背後に回り、首筋に手刀を当てて気絶させた。


「……これでいいんだな?」
「うぃーご苦労さん。取り敢えずブルーバードに運ぶぞー。あ、逃げんなよユーリカ、それとクオ。いろいろと、話を聞かせてもらおうじゃねぇの?」


 ニヤリ、とこちらを見るセキマイ。
 ……やれやれ、やり過ぎちまったみたいだな。
















————————時は少し遡る。


————白の世界




「う……?」




 私が意識を失ってどのくらいになっただろう……
 気がつくと、辺りが白い世界に来ていた。





 ……………………。


 …………。


 ……。




 …………いや、まさか天国とか言わないよな!? 死んじゃったよ主人公みたいなことにはならないよな!?
 ……落ち着け、自分。焦ったっていいことはないぞ、恐らく。



「まずは、どうするか……戻りたいんだが、どうも無理そうだ」


 さっきから『戻れ!』みたいなことを念じているが、意味なかった。


「……ん? あれは何だ?」


 見るとネオン……のようだが、なんだか身長が高い。大人にでもなったのか?



「……」

「あのー、ネオン……なのか?」
「……して……?」
「?」
「どうして、こんなことをしたんだろう……僕は…ただ、皆を守る力が欲しかっただけなのに……」
「ネオン……?」


 話が見えなさすぎる。一体……


「どうしたんだ? ネオン?」
「僕が……ブルーバードに古文書を持ち込まなければ……ユリエルも、イリナも……」

 私の声は聞こえていない……らしい。『古文書』や『イリナ』というのは知らないが、『ユリエル』は昼間に出会った女の子のことなのだろうか?


「……これは、ガイストになった『呪い』なんだ……僕らの……束縛」
「『呪い』……?」

 ガイストになった『呪い』? しかし、ネオンはそんなこと一言も話していなかった。……いや、私とネオンはまだ知り合って一年だ。仕方のないことか……。


 不意に、ネオンがこちらを向いた。その目はいつもの明るさはなく、悲しみや憂いが宿っていた。


「ネオン……」
「君に、託すよ。でも、気を付けて。この『鍵』は間違って『扉』に使うと世界を滅亡に、正しく『扉』を開けば世界を救うことができる」
「な……『鍵』? それに『扉』って……」


 渡された両手を見ると、綺麗な装飾のついた黄金の鍵があった。それはすぐに光の玉になり、私の中に入る。

「僕からしか渡せない。クレトでも無理だったけど、どうか……カロンに勝ってユリエルとイリナを助けて。前も封印しか出来なかった。今度こそ……」

「ま、待ってくれネオン!!」

 クレトって、私の母の名では!? 何でネオン(?)が知っているのか。
 まだ聞きたいことがあるのに、急に体が重くなる。

「くっ、ネオン! お前が何をしたか分からない。けど! お前との約束……守るからな!!」





————おめでとう、ファル。君は合格だ。



————やったのか?



————うん。…………あのさ。



————なんだ?



————……これは僕からのお願い。1つは『無茶しすぎて死ぬな』!!



————……プッ。



————何で笑うんだよ!



————いや、すまない……真顔で言われたものだからつい……



————全く……。2つ目は……











         『僕達ガイストを見放さないでほしい』










「絶対……どんな過去があろうとも、私はネオンを見捨てないし、見放さない!! 必ずだ!!」



 声が届いたのかどうか分からない。だが、ネオンはほんの少しだけ……笑った気がしたんだ。






 そしてまた、私は意識を失った。



Re: 【カキコ民】夢現の境界線【参加型!!】 ( No.56 )
日時: 2013/05/13 00:23
名前: 月葵 ◆7a0DWnSAWk (ID: KZXdVVzS)

——夜 18時

——ブルーバード 医務室


 あ、こんにちは……って今は夜なのでこんばんは、かな。僕はアオです。
 状況を言っておくと、ファルちゃんが暴走していたのを、セキマイちゃんとレイブンくんが帰ってきたことで何とかなったところかな。今、ファルちゃんはこの医務室で、眠ってる……というより気絶してるのかな。

 でも、まだネオンくんは見つかってないんだ。ユーリカちゃんは「持ち主と融合してるからいないんじゃないか?」とか言ってたけど……
 と、とにかく、ファルちゃんが起きるまで、僕が側にいることになってるんだよ。もしもまだ暴れるようなら、僕のオーラで動きを封じられるしね。


「……とは言ったものの、僕とファルちゃん以外のみんなは、下のフロアにいるんだよね……」



 本当のことをいったら寂しい。まだファルちゃんがいるから良かったけど、1人だったら耐えられない……ほんとに耐えられないよ!



「セキマイちゃんやみんなは今頃、交渉中なんだろうな」


 クオくんって人がヴァイスクローの使者、しかもギルドマスターのレンゲットって人から『同盟』を結びたいって話が来たときなんか、みんなも僕も思わず「えぇーっ!?」て叫んじゃったよ……。 『同盟』を結ぶ話なんて、確か100年前以来だった気がする。……エリアの治安を良くするために、ギルドを建設したのが始まりなんだけど、ギルド同士が干渉するのは、初心に反するだろう……そんな『暗黙の了解』があったからかな。


「……今、考えるのはよそう。」


 今の僕がするべきことは、ファルちゃんが起きるかどうか見守ること。
 と言っても、いつ起きるか分からないから料理本でも読んでおこうっと。あ、僕の特技は料理なんだよ。時々、みんなのご飯を担当してるんだ。お菓子の方が得意だけどね。

「ファルちゃん、早く起きるといいな。…………あれ?」


 何か端の方でチラッと光った気がした——違う、だんだん光の粒子が集まってる!?


「——ね、ネオンくん!?」


 光の正体は白のガイスト、ネオンくんだった。ネオンくんは寝ぼけ眼で僕の方を見ている。


『ん……アオ? あっれー……僕、どうしたんだっけ??』

 それにココはドコ? と周りをキョロキョロ見る。と、同時にベットがモゾモゾ動いた気配がした。


「……ここは、一体……ぅ、頭が少し痛いな……」
「ファルちゃん!! よ、良かったー!」
「アオ? ぅ……痛い……一体何がなんだか」
「あ、えっと、少し長くなるけど……」

 ファルちゃんはどうやら、セキマイちゃんとレイブンくんが来たときのことを覚えていないらしい。
 僕は、今までの経緯をありのまま伝えた。


 あ、そうそう、請け負っていた依頼のことだけど、僕とネオンくんで住民を避難させていたときに、ケットシーの弟くんと妹さんは見つかったんだ。依頼は完了したよ。

「なるほど、道理で頭が痛いんだな……」
『僕はファルに約束を思い出させようとしてからの記憶がさっぱりだね』
「うん、ユーリカちゃんが2人が融合したからじゃないかって……」




 と、その時扉をノックする音が聞こえた。


「ぇあ、と、どうぞ!」


 ガチャ、と入ってきたのはまずセキマイちゃん、レイブンくん。続いてユーリカちゃん、クオくん、あとは名前が分からない女の人が入ってきた。緑色の拳銃があるから、導きの魂かな?
 女の人は首とか頭にバイク用のゴーグルをかけていて、見た感じ……結構凄い格好してるかも?


「よっ、どうやら元気になったみたいだな? ファル」
「あぁ……セキマイ、すまない。さっきアオから聞いた。大変なことをしてしまったらしいから」
「ファルが謝ることじゃねぇよ。謝るのはユーリカ、お前だろ?」
「う……やり過ぎたことは謝る。すまなかったな。……けど、私はまだ諦めてないぜ。あんた、いい腕してっからよ、またいつかヤろうぜ?」
「……し、しばらくの間は遠慮するからな?」



 そんなやりとりも束の間。本題に入ることになった。



「うし、ファルも正気になったみたいだから本題に入る。まず、『ブルーバード』は、シュロスエリアの『ヴァイスクロー』のギルドマスターであるレンゲットから、来るナイトメアとその主——カロンの襲撃に備え、『同盟』を結ばないかという話が来た」


 セキマイちゃんの言葉にクオくんが続く。


「レンゲットは、メンバーと共に最近のナイトメアの動向を探っていました。エリアには『闇城』が存在し、その天辺にカロンは封印されています。ですが……」
「20年の封印が解かれたって訳だ。ここまでで質問はねぇか?」

 セキマイちゃんの問いに、おずおずと手をあげたのはファルちゃん。


「す、すまないが……カロンや闇城とは何なのか知らないんだ。教えてくれないか……?」


 えっ!? ファルちゃん知らなかったんだ!!
 それを聞いたクオくんは何やら微笑み、後で頼みを聞いてもらうのを条件として快く承諾した。

「まずは、カロンのことからお話ししましょうか。簡単に言えば、カロンは悪夢——つまりナイトメアを生み出す存在です。20年前にもカロンは『闇城』から現れ、世界を滅ぼそうとしました。しかし、ガイストを持つ導きの魂たち率いる各々のギルドと、白の導きの魂が団結し、カロンを闇城に封じました。本来、100年くらい封印できるのですが、どういうわけか……20年しか持たなかったようですね」

 ここまで分かりますか? とクオの問いにうなずくファルちゃん。

「つまり、その封印していたカロンが活動を始めた……そういうことか」
「あぁ。つか、飲み込み早いな?」

 セキマイちゃんが感心したように腕組みをする。

「まぁな……それで、同盟を結ぶかどうか、か」
「あぁ、で、ブルーバードを代表とした俺の結論だが————」




「————同盟を結ぼうじゃねぇか。ま、ある程度こっちの条件も聞いてもらうけどよ」



「了解しましたよ…………あれ? ファル、危ないよ」


 ニコニコと笑みを浮かべるクオくん……なんか怖いよ?

「……ん? 何が……」
『……!? ファル、伏せっ……』


 ネオンくんが何かに気付き、とっさにファルちゃんを伏せさせようとする。ファルちゃんや僕なんかは何が何だか、さっぱり。




 ————と、次の瞬間。




 ピゥッ!! という音と共にファルちゃんの頬に赤い筋がくっきりと見えた。……これって、て、敵襲ってこと!!?


「なななな、何なんだ!? いま、いったい何が!?」
『お、落ち着きなよファル。今のファルは間抜けにしか見えないよ……』


 幸いにも頬をかすっただけで済んだみたい。もう少しズレてたら、きっと大変なことになってたはずだ。


「んー? 敵か? てか、おい、クオ。お前何か知ってるだろ?」


 まだ慌てふためいているファルちゃん、それをなだめるネオンくん、相変わらず黒い笑みを向けているクオくんとそれを糾弾するセキマイちゃん……

 あの、僕はどうしたら? 敵が見えないんじゃオーラ使えないし……



「言わなきゃいけないかな? ……ギルドマスターのお出ましですよ」
「な!?」
「え!」
『うそ!?』







 僕らの驚愕と同時に一人の青年が入ってきた。