複雑・ファジー小説

Re: 【RPG風】勇者で罪人の逃避行!【キャラ募集】 ( No.13 )
日時: 2012/09/22 19:39
名前: ジェヴ ◆hRE1afB20E (ID: jP/CIWxs)

「あぁ、間違いないね。ありゃ確かにあの”カイン・フォース”だっひゃよ」

砂漠地帯の西の方角に位置する大きな都市——アシス街は、水の都と呼ばれるいわば砂漠のオアシスである。周りの砂漠から街を守るためか街の外周には街を覆う高い壁が設けられている。その街の東の方には、外とつながる唯一の門が構えられているようだ。

そんな街の商業区域に位置する、とある酒屋では、半日ほど前砂漠地帯で馬車を走らせていた一人の商人が酒グラスを片手に、頬を紅潮させながらそう言った。面白半分に彼の話を聞く同僚は、笑いながら彼の話を聞いている。
「はは、おめーカインっつったら、あの大犯罪者だろ? なんでも魔王と共謀してるって聞くけど…大体、こんな所にいるわけねーじゃん!」
「いいや! 絶対そうだって! 可愛い女の子連れてたうえに、偽名使われてひゃから気付かなかったけろぉ」
「お前酒飲みすぎだ、そんな奴がこの街に何のようだって話だろ?」

「ま、お前が生きてるって事は危害を加える気はなさそうだな」

彼等の中でも、武器の売買を専門とする武器商人が言う。
白い髪が特徴で顔の左側を包帯で覆っているという一風変わった外見をする彼は、グラスの酒をグイと飲みながら言った。そしてそんな彼の側には、彼と同じ髪色をした、仮面をつけた女性が佇んでいる。

「クナギまでそんな事言うのひゃよー、絶対そうらったって間違いれーよぉ」

そのカインに会ったという商人は、泥酔状態で若干ろれつが回っていない。クナギと呼ばれた武器商人は肩をすくめてやれやれと言わんばかりに首を横に振った。クナギだけではなく、周りの商人共も彼の話を信じてはいなかった。
そんなみんなの様子に納得がいかないのか、商人はムスッとした顔で辺りを見渡した。
「俺がうひょ(嘘)言ってるってのかよぉ、絶対だってら! そうだなぁ……あぁ、ちょうどあひょこに座ってる男にそっくりで……」
そしてある一人の青年を見つけると、彼は身を乗り出す勢いでその青年に指を指した。

そこには、薄い金髪で翡翠色の瞳をした青年が座っていた。年は二十歳過ぎと言ったところだろうか、少し幼さの残る顔立ちにあどけなさを感じる。フードのある茶色のローブを纏っているが、今はフードは脱いでいるようだ。彼の着ている鎧は中々良いもので、鎧でありながらも動きやすく軽量化されているところと、そして彼が腰にしている武器を見る限り、おそらく彼の職業は剣士だろうという事が見て取れた。
まぁ、彼の詳細まで把握できたのは、武器商人であるクナギくらいであろうが。

そしてどうやらその青年は、お酒の値切りをしているようだった。
まったく、酒屋で握る輩は始めて見たな——と、クナギはクスッと笑う。

しかし、青年を指さした当の本人は、青年を指さしたまま固まってしまっていた。
「あ……」
開いた口がふさがらない、といった風に口を開けたままの彼。そしてそんな彼に気がついた青年。そんな二人は目があった瞬間、まさに同じタイミングで声を上げた。


「「お前……昼間の!!」」




【第一章 -砂塵に紛れる支配者と-】




「俺があの大犯罪者?」

色々あってひと段落ついた頃、体を縄で縛られ顔にアザをつくった青年が、白々しい口調で笑いながらそう言った。
「ははー、そんな訳ねーですよ。俺の本当の名前はジョニー、ちょっとやんちゃ盛りのただの旅人っすよー」

あの後、酒屋ではひどい騒ぎがあった。
例の商人が今ジョニーと名乗った青年に飛びかかり、それに抵抗した自称ジョニーは猿のようにそれをすり抜け出口に走る。そこでカウンターにいた店の店主が「飲み逃げだ!」と叫んで指を指す。その声を聞きつけて外からやってきた銀髪の青年と自称ジョニーがぶつかって、無表情のままキレたその銀髪の青年が酒屋の中で魔法をブッ放って……
そして、今に至る訳だ。

「で、まぁそれは良いとしよう。この始末どう付けてくれるんだ、『兄ちゃん達』」

ガタイのいい店主はにこやかに笑いながら「彼等」にそう言うが、どう見ても笑顔の威圧にしか見えない。
「話はよく分かった。そこで一つ聞きたい事がある」
そしてそんな会話を聞いていた銀髪の青年が声を上げた。
「何だ、銀髪の兄ちゃん」
「なぜ俺まで縄で縛られなきゃならないんだ」
「どの口が言うんだ!? 人様の酒屋をめちゃくちゃにしてくれたのはアンタだろうが!」
銀髪の青年は何食わぬ顔で、それも本当に自分がなぜ縛られているのかが分かっていない風だったのがまた驚きだ。そんな彼を見て、店主は呆れ半分声を荒げていた。
そんな様子を見ていた自称ジョニーは他人事のようにフッと鼻で笑っていたが、それを見た店主に殴られていた。

「お前は飲み逃げしようとした癖に笑うんじゃねぇ」
「わ、悪かった……」

自称ジョニーは悶絶しながらそう言うと、バタッと力なくその場で崩れた。



「——はは! 妙な連中だな。お前はどう思う?」
そんなやり取りを見ていたクナギは、心底愉快そうに笑いながら、用心棒に話しかけた。仮面をかけた彼女の表情は分からないが、彼女が見据えるのはジョニーと名乗った男だ。彼女は彼を見据えたままで、何かを口にする事は無かった。
だが、長年用心棒として側に置いているクナギにはそれだけで分かる、彼女がジョニーとかいう胡散臭い男に興味を示している事が。
「…………、ふーん」
その様子を見て、クナギは重い腰を上げた。持っていた酒グラスをテーブルに置く。

「3」

クナギは、ジョニーと名乗る青年にそう言った。
何かと思い、周囲の視線がクナギに集まる、すると青年はすかさず彼に言葉を返した。
「2だ!」
「駄目だ。4」
「…………」
一体何の事を言っているのかとその場にいた皆がそう首をかしげたが、ジョニーと名乗る青年はクナギの言葉を聞いて溜息をついた。それを見てクナギは「良し!」と満足げに言った。

「良し! 悪いがソイツの事ァ離してやってくれ! ジャックは俺の友人だ!」
「「ええっ!?」」
突然そう言いだしたクナギの方に、その場にいた全員が驚きの声を上げて振り向く。そんな言葉に騙されるわけがない。それに大体名前が違う、ジャックじゃなくて(自称)ジョニーだ。
だが、そんな自称ジョニーまでもがこんな事を口走り始めた。
「おう、俺はそこの……えー、おっさんの友人だ! 分かったらさっさとこのジェイク様の縄解きやがれクソッタレが!」
「「えええええええ!?」」

最早突っ込みどころが多すぎて、周りの人間は二人の会話に追いつけなかった。

ジェイクって誰だよ。