複雑・ファジー小説

Re: 勇者で罪人の逃避行!【キャラ募集】 ( No.26 )
日時: 2012/09/22 20:00
名前: ジェヴ ◆hRE1afB20E (ID: jP/CIWxs)

揺れが未だに続く街中を、『剣士』は探り探りに走っていた。
街の活気のある地域に来ると、街道を歩く人々が悲鳴を上げているのが聞こえてくる。それぞれ逃げ回ったりその場にしゃがみ込んだり、はたまた子供を守る親などが目につく。そんな中、『剣士』は時々立ち止まっては何かを確かめ、辺りを見渡したと思えばまた走るを繰り返していた。
しかし、それを続けているうちに徐々に揺れは収まり始めている。それを感じて一瞬焦りを見せた『剣士』は、前を向いたままレイラに話しかけた。

「レイラ! お前あっちの方探ってくれ! 俺こっち探すわ!」
「は、はいっ!」

レイラは『剣士』から指示を受けると、即座に方向を変える。それを足音で把握した『剣士』は、収まりつつある揺れの中——ある方向へと駆けて行く。そして同時に、妙な違和感を覚え始めていた。
(妙だな、こりゃだたの地震じゃねーのか? 何か地面の下で蠢いてる感じが……)
そう思うものの、確証は無い。だが、揺れが強くなる方へ走れば走るほど、その妙な違和感は増す一方である。
しかし。
その間にも揺れはゆっくり収まり、そしてついに、それは完全に止まってしまった。

青年は舌打ちし、歩きながらあたりを見渡した。
そこは街の中央の広場で、憩いの場となっている場所だった。大きな噴水が存在するそれを見れば、流石は水の都だと思い知らされるほどだ。
「剣士さん! こっちです!」
すると、前方から自分を呼ぶ声がした。先ほど分かれたレイラだ。青年が彼女の方へ近づくと、彼女は目の前のある建物を指さした。
「——教会?」
そう、目の前にあるのはこれまた大きな教会だった。真新しい綺麗な佇まいという印象を受ける、最近立てられたのであろうか。
一体ここがどうしたと言うのか。

「……実はですね」
そんな『剣士』の心情を知ってか、レイラは教会を見据えながら口を開いた。
レイラがこの辺りに来た時、何やらここで慌ただしく出入りがあったらしい。それも、この周辺にいた幾人の人間が、である。逃げるとこなら他にもあるはずだが、一体なぜ教会に?そう妙に思ったレイラがこの前まで来ると、教会の中から何かが聞こえ、そして段々揺れが収まったのだと言う。
「ふーん、教会ねぇ……」
「この街にも宗教があるんですね」
「だが、この街の宗教は宗教と呼べるほどのものでも無いぞ。ただ祈りを捧げているだけだよ」
「ほー、なるほ……」
『ど』、と言いかけて『剣士』は思わず”彼”の方に振りむいた。
そこには、先ほど一緒にいた銀髪の青年の姿がある。
「うおぁっ!? お、お前!?」
「ついて来たんですか!?」
レイラが彼に尋ねると、青年はコクリと頷く。そんな青年の姿を見て、『剣士』は笑う。
「どーしたよ、放浪者2人組に何か用か?」
彼が尋ねると、青年はそっと目を瞑った。そしてその後、レイラの方へと視線を向ける。
それを見て『剣士』は、彼が何らかの理由で自分達——特に”レイラ”に用があるのだと察した。『剣士』は「ほう」と言いながら腕組みをし、少し二人から距離を置く。
「レイラに用があんだろ? だったらさっさと済ませてくれ、俺達も暇じゃねーんだ」
「あぁ分かった。なら単刀直入に言わせてもらう」
『剣士』の配慮を心の中で感謝しつつ、青年はそう言って改めてレイラに向き直る。

(ま、こうでもしねーとさっさと離れてくれねーだろうしな。こう言うのはさっさと終わらせてもらって去ってもらうとするか)
青年の様子を少し離れた所で見ている『剣士』は心の中でそう呟いて溜息をする。レイラが一瞬困惑した顔でこちらに目配せしてきたので、「さっさと終わらせろ」と顎で促した。するとレイラは小さく頷き、銀髪の青年へと向き直る。

しかしこれがまたとんでもない事になるとは、この時『剣士』もレイラも予想だにしていなかった。

「レイラ」
「は、はい。なんでしょう?」
そう言えばこの人、私を知ってたみたいだけど……誰なんだろうか。そう思いながら、レイラは呼ばれた名前に返事をする。
するとその瞬間、彼は口元を緩め、そして——自分の前に傅いたのである。
「!?」
遠くで見ていた『剣士』は突然の事に驚いて声にならない声を出す。何故ならその時『剣士』には、彼が何をしようとしているのか分かったからだ。
しかし、そんな『剣士』を余所に、銀髪の青年はレイラの手をとり、空いた手を自分の胸に当て、そしてこう言ったのである。


「俺は”ゼン・レイトニック”。どうか俺を……いや、どうか私を貴方の従者にしてください」


飄々とした表情で、しかし確かに微笑みながら、彼はそう言ってレイラに向かって頭を下げた。その光景を見て、『剣士』はやはりか!といった表情をして言う。
「”契約の誓い”!? マジでかよ勘弁してくれ!」
半ば悲鳴じみた『剣士』の声を聞き、レイラはハッと我に帰る。
——え?じゅ、従者?
——どどど、どういう事なんですかこれッ!?
その光景を目の当たりにしたレイラは半ばパニックを起こしながら、心の中でそう叫んだのだった。






「あーあ、あいつ等見失っちまったな。面白い奴だったのにもったいないことした気分だ」
三人にが走り去り揺れも収まったその場所で、クナギはそういってようやく立ち上がった。そして服の汚れ払いながら、彼は用心棒へと視線を向けた。
彼女はまだ、彼らが去った方をジッと見つめていた。クナギはそんな彼女に声をかける。

「ジョン」

そう呼ばれて用心棒は鈍く反応し、自分の方をようやく向いた。相変わらず仮面をかぶっているので、イマイチ彼女がどんな表情をしているのかは知れないが、クナギには少なくとも彼女が”彼等”に”興味”ではなく——何か”用”があったというのは分かった。
クナギはポーチから取り出した煙草をクワえながら、自分がジョンと呼んだ彼女に向かってこう言う。
「アイツ等に何かあったか?」
「……いや」
そこで初めて、彼女が自らの口を開いた。彼女はそう言うと、視線を若干クナギから外す。それを見て彼はクスリと笑った。
「何だクナギ。俺が嘘でも言ってると言いたいのか?」
「あぁ。だってお前、隠し事するとき俺から視線外すだろ」
「!」
それを聞いて、仮面の下で彼女は少し目を見開いた。

1年、このクナギの用心棒として雇われているが……この男はヘラヘラしているくせに隙が無い。
ジョンと呼ばれた彼女は小さく苦笑を浮かべた。

「で、知り合いでもいたか?」
「…………」
「ふーん、成程。あの男だろ?あのジョージだの言ってた胡散臭いガキ」
その言葉を聞いた瞬間、彼女が動きを止めた。どうやらビンゴらしい、クナギは自分の魔法で指先に炎をともし、それを煙草に火近づけながら、少し軽い口調で彼女に尋ねる。
「で、そいつとはどんな関係なんだ? もしかして友人か?」
だが、そう言った瞬間彼女は——クナギの肩を思いきり掴みかかった!クナギは突然の出来事で、思わず煙草を落としそうになる。

「違う! 奴は断じて俺の友人モトなんかじゃない!」

…………、
軽い気持ちで聞いたつもりだったが、とクナギは心の中で苦笑を浮かべた。
怒鳴るようにそう言う彼女に、こんなに過剰反応されたのは初めてだ。普段彼女は慎ましく、それでいて強い。なにか使命感に駆られたようにモンスターをなぎ倒し、ここぞとばかりに勇ましい姿を見せるくせして——寡黙で大人しい。そんな彼女が、今たった一言でこの通り感情をさらけ出している。
面白い半面、正直驚きだ。仮面をしている彼女は、心にまで仮面を被っているかと思っていたのだが。

そしてそんな彼女はといえば、ふと我に帰り、ちょうど今肩から手を離したところだ。
彼女はクナギから少し距離を置くと、そっぽを歩きながらどこか遠くを見て言う。


「あの男は、”カイン・フォース”は”俺達”を見捨てた裏切り者だ!!
奴がカインだという確証を得られたなら、俺は奴を殺す」


彼女はそう言って、己の拳を強く握った。