複雑・ファジー小説

Re: 勇者で罪人の逃避行!【本編1-18完全更新:9/19】 ( No.131 )
日時: 2012/09/23 16:11
名前: ジェヴ ◆hRE1afB20E (ID: jP/CIWxs)


【本編同時進行!番外編1−5】


「っしゃああああ! 飯だオラァッ!!」

そう叫んだのは案内人だけではない。彼と同じ形相のクナギと、平然としながらも確かに狩人の眼光のジョンもまた同じくであった。彼等は獲物を視界の中に捉えると、ニィと口の端をつり上げる。
「……俺は道を作る。クナギ、案内人、獲物を頼む」
そしてジョンはそう呟き、自分の残った力を振り絞して何か小さく詠唱を始めた。クナギはその言葉を受けると、今まで立ち上がる気力さえも無くしていた体に力を込める。案内人は馬をその場にとどまらせて、自分の側に置いていた『ボウガン』を手に取る。ジョンはその様子を察しゆっくりと瞳を開けると、出力を最大限に絞り出して叫ぶように言った。
「氷雪造形魔法——<氷竜疾駆Ⅰ>!」
彼女がそう唱えた瞬間、まるで矢が放たれたように砂漠の地面が氷で凍てつく——それはまるで水面を這う竜が如くだ。氷が真っすぐデザートフィッシュの群れのほうにのびてゆくと、その一面の範囲ではじけ飛ぶように氷が凍てついた。獲物のうちの一体は、それに巻き込まれて氷の中に閉じ込められてしまった。

氷竜疾駆というものは元々『氷柱』を作り出す魔法だが、使い方によっては変幻自在に氷を操れるので、こうして足場をつくるものとしても活用できる。また、特徴的なのはその凍てつく早さ。氷雪系の魔法でも、これほど一瞬で凍てつかせる魔法は数えるほどしかないだろう。そして、この魔法の名の由来はその早さにある。その魔法を垣間見た者が、”突如氷柱が現れる様は、まるで駆ける竜のようだ”と言った事が起源だと伝わっている。

しかし、レベル1でこれほどの魔法とは。最大レベルの3になればどれほど強力なものとなるのだろうか。一瞬案内人の脳裏にそんな疑問が浮かぶが、それよりも己の食欲が勝り、間もなくしてそんな事も忘れてしまった。案内人はボウガンを手に、彼女が築いた足場に飛び乗った。それに続いて、クナギもそれに足をつけ間もなく駆けだした。




いちほです^p^