複雑・ファジー小説
- Re: 【RPG風】勇者で罪人の逃避行!【キャラ募集】 ( No.15 )
- 日時: 2012/09/22 19:47
- 名前: ジェヴ ◆hRE1afB20E (ID: jP/CIWxs)
「先ほどは俺も少々やりすぎた、悪かったな」
「つーかおっさんよォ、4万ってのはちょーっと意地悪じゃねーの?」
縄を解かれた数分後、酒屋から少し離れた街道でクナギの前で縄を解かれた青年等が彼にそう言った。
だが、次の瞬間口を尖らせいた青年はクナギから顔面に蹴りを喰らわされぶっ倒れた。それを横で見ていた銀髪の青年はといえば、目を丸くしてその光景を見つめていた。
「さっきから聞いてれば、おっさん言いやがって。こんでもまだ28なんだよ、どんな目してやがんだ」
「へっ、7歳も年上じゃあ十分おっさんじゃねー ガッ!?」
青年がそう言おうとして、再びクナギが足底に力を込めた。青年は土下座したような体制で地面に激しくおでこをぶつける。
「止めなくていいのか?」
銀髪の青年は彼の側にいる仮面の女の方を見るが、女は迷わず頷いてみせた。いいのかそれで。
まったくこの男も余計な減らず口を叩かねばいいものを、と思いつつも自分もそれを止めようとはしなかった。
「あれ、剣士さんどうしたんですか?そんなところで」
と、そんな時だった、透き通った綺麗な声が後ろから声をかけてきたのは。当然の事ながらその場にいた人間が彼女の方を向くが、銀髪の青年は彼女を見たその時、思わず呼吸を止めた。
そこにいたのは、一人の女性。20歳前後といったところだろうか。スカーレット色の腰まであるロングヘアーをなびかせる彼女は、上品に微笑む表情が印象的。白く華奢な腕は薬草やハーブを落とさないように掴んでいる。おそらく、買い物で買ったものなのだろう。しかし、あそこまで大量に買い込んでいる人物は見た事が無い。少し浮世離れしたいような、不思議な雰囲気の女性だった。
銀髪の青年は、そんな彼女から目が離せないでいた。
「おーレイラ、悪いな。兄ちゃん今、コワーイおっさんと少々お取り込み中なのよ」
と、そんな彼女に、『剣士』と呼ばれた人物が返事をした。彼女を『レイラ』と呼んだそれは、ジョニーだのジェイクだの節操無く名前を変えていた青年だった。まぁ、おっさんという単語を出して案の定踏まれている所を見ると、どうやら学習能力は無いらしい。はたまたわざとなのか。しかし、それにしても丈夫な奴だ、あれだけ殴られてあれだけ踏まれても、平然とした顔をしている。
そして、レイラが剣士と呼んだ青年にそう言われると、彼女は溜息をついて言う。
「誰が兄さんですか……。まぁ、それはいいとして」
彼女はそう言うと、少し心配そうな顔をしてクナギを見る。
「あの、剣士さんが何か失礼なことをしたみたいで……すいません!」
そして勢いよく何度も頭を下げ、それから様子を窺うようにゆっくりと顔を上げた。そんなレイラを見て、しばし品定めでもするかように目を細めた後、クナギはふっと溜息をついて言った。
「成程、お前コイツの連れか。まァ、お嬢さんはちゃんとしてるみたいだし? それに免じて許してやるよ。5万で」
「お前俺よりタチ悪いな」
「職業柄金にゃ目が無いもんでね。俺にとっては褒め言葉だ」
「うわ何この変態」
「ははは、お前ちょっと永眠しとくか?」
それからその『剣士』と金鎚を手にとったクナギの追いかけっこが始まる訳だが、銀髪の青年にはそんな事どうでもよかった。
「……、あの? 何か私についてますか?」
青年がジッと見つめるのは、レイラ。彼は彼女を一目見たときから、彼女から目が離せないでいるのだ。少し遠慮がちに、首をかしげて笑う彼女。と、その時耳たぶに、確かに光るものを見た。それはスカイブルーに光るイヤリングだったが、それを見た瞬間に——彼の「疑惑」は「確信」へと変わった。
「————、やっぱり」
「え?」
「やっぱり、お前はあの時のレイラなのか!?」
青年は彼女の白い腕をとる。少し強めの口調で言ったせいか、彼女は驚いて肩を震わせる。少し顔がこわばっているのを見る限り、やはり彼女は自分の事を覚えていないらしい。しかし、それでも青年は歓喜に身を震わせた。
間違いない、彼女のしているイヤリングは———
「レイラ!」
と、その時不意に彼女を呼ぶ声。それに気を取られてそっちの方を見ると、凄まじい形相で走ってくる『剣士』の姿があった。その後ろに勿論クナギの姿もあるのだが、どうも様子が変だ。
そう思った直後だった。
「貴様等止まれェェッ! 武器物取扱法違反※で貴様等を連行する!」
そう怒鳴る影が1にとどまらず3、4と…。彼等は大勢の『騎士』を引き連れて帰ってきたのである。
街に一つや二つ存在する『騎士団』は、街の治安維持の為に結成されたもので、遠くの国で警察と呼ばれるものとよく似たところがある。その街の治安を乱す者を、誇りの高い彼等が見逃す事は無い。
そもそも騎士団と呼ばれるものの発祥は、世界一大きな軍事国家と呼ばれる『ヴァーハイド』国で悪逆非道と言われた王が市民の暴動を抑圧するために組織した武装集団——言い方が悪いかも知ればいが、当初その集団は本当にただの武装集団でしかなく、罪を犯した市民は正義の名のもとに残虐されたと言う話だ。
市民を黙らせるためなら平気で彼等に武器を向けたりもする集団がもととなっている『騎士団』だ、捕まればどうなるか。
「逃げるぞ! あいつ等に捕まったら厄介な事になる!」
「えぇッ!? け、剣士さん何したんですか!」
そう言って、レイラは走り出した。それにつられて、銀髪の青年、そして仮面の女と続いた。
「何もしてねぇ、殴られてただけだよ!」
と、レイラに怒鳴られていた『剣士』は、頭をさすりながら弁解していた。そう言って彼がクナギの方を睨むと、クナギは言う。
「はは、悪いな。ついカッとなって金槌持ってソイツ追いかけてたらアイツ等に見つかっちまって」
いつの間にか並列して走るクナギは緊張感も無くそう笑う。この状況が心底楽しそうなのが謎だ。
(金槌で武器物取扱法違反? それに、じゃあじゃあなんで何もしてないっていう剣士さんまで追いかけられて——)
当然の事ながら、レイラにそんな疑問が浮かぶ。のだが、彼女はそう考えた瞬間気がついた。
「剣士さん、手。普通に剣抜いてません?」
「! あー、うん。まぁ、うん。け、剣抜いたよ悪かったな!」
しかしアレで追いかけ回されたら仕方ない!とクナギの持つものを指さす。アレというのは、金槌の事か。しかし、金槌といえば、あの片手で持つ道具ではないのだろうか?いくらなんでも剣を抜く程の事ではないだろう。
そんな事を考えながらレイラはクナギの方を見る。だが、彼女はクナギの持っていた金槌を見た瞬間ギョッとした。
「あの、それって”バトルハンマー”じゃありません? 対モンスター用に使われるって聞きますが」
「職業柄金槌なんて腐るほど種類持ってるからな。一つくらいそんな金槌が混ざっててもおかしくは——」
「そ ん な ん 金 槌 っ て 言 わ ね ぇ ん だ よ !!」
そう彼にシャウトする『剣士』は、その後レイラの方を向いた。
「んじゃレイラ、”アレ”頼む」
「もう……たまにはのんびり観光でもしたいです!」
いつもこんな目にあっているのか、彼女は若干涙目になりながらそう言う。そして彼女は逃げながら何やら詠唱を始めた。
「!! いかん!」
と、そんな彼女の詠唱が耳に届いた騎士のひとりが言う。それはどこか慌てた様子で——
「取り押さえろ! あの娘転移魔法のレベル3を使うつもりだ!!」
「な、馬鹿な! 転移魔法Ⅲが使える一般人なんて聞いたことが無いぞ!」
その言葉を聞いて笑ったのは、銀髪の青年だった。
やはり。
やはり間違いは無い。
俺が探していたのは彼女だ!!
そしてその瞬間、逃げる5人の体は光に包まれる。
次の瞬間、音も無く彼等はどこかへと消えさっていったのであった。
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武器物取扱法…この世界の「銃刀法」みたいなものです(・ω・)