複雑・ファジー小説
- Re: 灰色のEspace-temps ( No.22 )
- 日時: 2012/07/19 22:06
- 名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: kGzKtlhP)
◆
陽射しが強い午後の広場。
噴水の傍に在るベンチ(日陰)には、どよよんと重い空気を背負う飛雄馬が座っていた。
(……結局、丸く収まられて何も聞けなかった……)
「一体、何してきたんだ、俺……」
独り言を呟く。
肩が、身体が、重い。
助けたいと想った。
救いたいと想った。
(なのに…)
「何で俺、引き返しちゃったんだぁ?」
更に身体が重くなる。
それを振り払おうと、飛雄馬は思いっきり顔を上げた。
キラキラと水の珠が飛び散る。
強い日差しが、少し柔らかくなったような気がした。
空は、相変わらず青い。
それに負けず、のびのびと育った木々が、太陽日差しを遮る。
(…あんな風に、拒絶されるのは初めてだった)
生徒会長になって、人助けをする機会が増えた。
けれど、最初のうちは中々上手くいくことはなかった。というものの、最初は全て手酷く断られた(?)のだ。
「アンタなんかに私の気持ちが判るはずがない!!」——良く言われた。ってか、今でも言われる。
「偉そうに。偽善者が」——今でも日常茶判事に言われる。
最初は、攻撃的な言葉に、へこみそうになった。
特に、「偽善者」なんていわれた暁には、自分が正しいことをしているのか、判らなくなった。
けれど、少しずつだが判ったのだ。
そう言うことを言っている人こそ、実は「助けて欲しい」と願っているのだということに。
だから、飛雄馬は迷わず自分の「正義」を貫いてきた。
けれど。
(…あの笑顔みたら、その『正義』が本当に正しいのか判らなくなってきた……)
あの、暖かい優しさの裏には、冷たい拒絶が潜んでいた。
けれど、それも「優しさ」ゆえに冷たいのだということに気付いたからこそ、引き返してしまった。
(あれは、必死で助けているような感じじゃなかった)
優しく在れるのは、余裕があるからだ。
余裕のないものは、人の事なんて考えない。
(…だったら、お節介になっちゃうだろうな)
ぶらんと、手を背もたれにかける。
人が手を貸して良いときは、その人が一生懸命に悩んで、助けを求めている時だ。
それ以外は、絶対に手を貸しちゃいけない。
それは、飛雄馬のポリシーだ。
何故なら、本当にその人の為になっているか、判らないからだ。
その行為が、その人にとっては毒になっているかもしれないからだ。
その人の為とは、その人にしか判らない。
…否、きっと、その人自身にも判らない。
けれど、やはりその人の意志を周りが曲げることは許されない行為じゃないかと、飛雄馬は思った。
『——判らないときや、悩んだときは、空を見上げなさい』
杏海に言われた言葉だった。
『空に、大きな目があると想いなさい。その目は、何時だって自分を見ている目だと想いなさい。
——その目に見られて、恥ずかしくない行動をとるよう心がけなさい』
そう言われて、ずっと心がけてみたけど。
「…良く、わかんねえなあ」
やはり答えは見つからなかった。
女の子の声が、遠くから聞こえた。
「……ま、きゅうま!」
ゆさゆさと小刻みに揺らされて、飛雄馬はまぶたを開けた。
視界には、女の子の顔が大きく写っていた。
少女は、高校生ぐらいに見えた。レモン色の長い髪に、サファイヤの瞳を持つ、とても可愛らしい女の子。
そして…かなりけしからんほどのナイスバディだった。
「…おや、ティアナ」
「えへへぇ。
もう、夕方だよ」
起き上がると、確かに夕陽が広場を染めていた。
「…意外と寝てたんだな、俺」
「こんな暑い日に外で寝るなんて。きゅうまはひょっとして『まぞ』?」
「いや、俺はノーマルだから。
…ってか、何処で覚えた? そんな言葉」
飛雄馬が聞くと、ティアナと呼ばれた少女は、ニッコーと笑っていった。
その時、飛雄馬の第六感(嫌な予感)が働いた。
「ゼロが教えてくれた!!」
「アイツかぁぁあぁぁぁぁ!!!」
ティアナの予想通りな答えに、飛雄馬はシャウトしたのだった。
少女の名前はティアナ・ホワイト。
飛雄馬が知る、『異世界』を渡った一人である。
と言っても、彼女が異世界を渡る力を持っているわけでは無い。前回書いたように、飛雄馬の友人の『力』でこの世界へ来た。
どうやら彼女は、『いつの間にか』この世界に来ていたらしい。
…詳しいことは、あまり判ってない。
趣味兼特技はアンドロイド作り。天才的機械技術知識を持ち合わせており、現在はゼロと呼ばれるアンドロイドと共に、飛雄馬の友人の友人の家に居候中だ。
詳しいことは、『もしも俺が…。』を読んでみよう!!
ちなみに、こう見えても彼女は十歳である。もう一度言おう、十歳である。
「…てか、何でティアナがここに?」
飛雄馬が聞くと、ティアナはニッコニコと笑いながら、脇に抱えているものを取り出した。
「クロカワにこれ、頼まれての。きゅうまに渡してって」
ちなみに、彼女が飛雄馬のことを「きゅうま」と言っているのは、当初口が回らなくて定着してしまったあだ名である。
まあ、それはともかく。
「黒川に…?」
一体なんだろう? と、飛雄馬は思っていると。
テッテカテーっと、どっかの某二十二世紀ネコ型ロボットがポケットから秘密道具を取り出す効果音が鳴って出てきたのは…。
——————————蒼のバズーカだった。
良くこんなものを持てたな。ってか、良く職務質問されなかったな。
そんなツッコミは、言わないで頂きたい。
そう。これはフィクション。ファンタジー。
何でもありな世界なのである。
まあ、飛雄馬たちには違和感がないので、スルーしていたりしたのだったりする。
「…そいつは、空気破壊(エアクラッシャー!!)
「蓄電量二倍にすることが出来たよぉ。
勿論、ティアナも手伝った!」
「サンキュな、ティアナ!」
感謝の言葉を言って、飛雄馬は蒼のバズーカを受け持った。