複雑・ファジー小説
- Re: アザラシと動物ランド、F!! 『第一の冒険!!』 ( No.11 )
- 日時: 2012/07/12 09:07
- 名前: ヒトデナシ ◆QonowfcQtQ (ID: j553wc0m)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode
「パート2。」
---------少年はいつの間にか、気を失っていた。
気を失っていたという言い方が正しいのか、眠っていたという言い方の方が正しいのかは分からないが。
だが、周りのにぎやかな声や音に、星野はふと目を覚ました。
少年、星野はゆっくりと目を開ける。まばゆい光を浴びた後のせいか、視界がぼやける。
久しぶりに目を開けたような感覚がする。そこまで長い間眠ったわけではないと思うのだが。
しばらく見つめた後・・・・・・星野は気が付いた。
いや、気が付いたというよりは、まずは驚きで声が出なかったという方が正しい。
やっとの思いで出た言葉はたった一言。シンプルでもっともな事であった・・・。
「-------ここはどこ?」
そう、そこは星野の知らない幻想的な『別世界』。
ここで大切なのは、星野はここがすでに『別世界』だと『分かった』いうことだ。
星野は無論、この世界を知らない。それは確かだ。ではなぜ分かったのか?
無論周りを見て、雰囲気で判断して、ここが『元の世界ではない』とすぐに判断したのだ。
それほどまでに・・・『元の世界』とは違いすぎる世界だった。天と地がひっくり返ったような世界。
--------------まず星野の目に飛び込んできたのは、自分の世界では『一部の場所』でしか見ないであろう、動物の大群だった。
あちこちに自由に動き回る動物たち。その数は数え切れないほど、いろんな種類の動物がいた。
歌を歌っているカエル達。踊りを踊っているサル達・・・などなど。
そして真に驚くべき点、それは人間が一人もいないことである・・・!!
人間も動物の一種・・・それは確かだ。だが、いない動物がいるとすれば、強いて言うなら『人間』なのだ。
星野の世界には嫌と言うほど存在する人間。それが一人たりとも存在しないのだ。
また、見渡すと辺りは草原のような感じなのだが、周りを囲むように数十本の大きな木がある。約20・30本程度だろうか。
まるでここを守っているのかと思うほど、大きな木がこの『村』、もしくはを『国』を囲んでいる。
なぜ私が、ここの事を『村』や『国』と言ったのか。その答えは簡単だ。
どうやらここは・・・人間以外の動物達だけが生息する、一種の『国家』なのだ。
『国家』という言葉を使って正しいのかどうかは分からないが、とりあえずここに『国家』が成り立っているのは確かだ。
ちなみに余談だが、ここにいる動物達の話す言語・・・紛れもない『日本語』である。
星野に馴染みのある、否、日本人に馴染みのある日本語が、なぜこの動物の国に使われているのかは未だ不明だが。
また、中央にも大きな木が立っているのだが、この大きさは他の木とは比べ物にならないぐらい大きい。
現代にある超高層ビルよりも何倍もはるかに大きいだろう。いや、超高層ビル程度では周りの木にすら叶わない。赤子当然に見えてしまうほどだ。
超高層ビルで赤子当然に見られる大きさなのだ。星野なんて、木から見れば微生物程度の大きさでしかない。
「------------------------・・・どうしよう。これ。」
星野はいまいち、まだ状況を理解できていなかった。それはそうだろう。
まばゆい光に包まれたかと思いきや、気が付くとこんな変なところに飛ばされたのだから。
自分以外は人間なんておらず・・・
超高層ビルをあざ笑うかのごとくそびえ立つ木々・・・
まるで悪い夢でも見ているかのようだ。まぁ夢にしては出来すぎのような気はするが・・・。
しかしぶつぶつと考えても、いくら悩んでも無駄だと、星野は考えて、
(・・・とりあえず話を聞いてみようかな。誰か話が分かる人がいるかもしれない。)
無論、確証なんてないわけだが、ここでずっと呆然としていても仕方がない。
わずかな希望を信じ、とりあえず情報を集めることにする。
幸運なことに、たくさんの動物がいる。もしかしたら人間にも会えるかもしれないとそう思った。
まぁ人間に会える確率というのはほとんど無いに等しいだろうが・・・。それでも決まったわけではない。
ということで、わずかな望みを胸に、話を聞きに行こうとしたのだが・・・・・・、
「-----------あれ?」
・・・星野はなぜか動けなかった。否、『動かなかった』のだ。
思わず、「あれ?」、という情けない声が出るほど突然の出来事だった。
その時、冷静になった星野は気が付いた・・・・・。
(足が・・・・ない? 手も・・・短い? そして何より・・・・・自分が縮んでる!?)
-----------星野はやっと、自分の変化にも気が付いたのだった。
そう、今の星野は『いつも』の星野ではない。まるで何かのぬいぐるみの中に入っているような感覚。
また、星野は自分の身体をよく見ると、もう一つあることに気付いた。
(これ・・・・さっきの人形!? 僕もしかして・・・この人形になっちゃったの!?)
そう、星野の今の姿は、先ほど触っていたアザラシのぬいぐるみそのものだった。
先ほど言った『ぬいぐるみの中に入っているような感覚』・・・まさにその通りであった。
現にいま、自分はアザラシ。人間とは程遠く、二足歩行も出来ないのだから。
足の代わり・・・にはもちろんならないが、星野にとっては馴染みのないしっぽが生えていた。
ここまで言えば、勘の良い人は分かるかもしれない。
先ほど星野は身体が動かないといったが、その理由はいたって簡単なのである。
星野は元人間。人間は足を使って移動する生き物。だが、今の星野には二足歩行という概念は存在しない。
ましてや、アザラシの移動の仕方など、知るわけがなかった。出来るわけがないのだ。
------------正確に言い直すのであれば、『動かない』のではなく、『動かせない』というのが正しいだろう。
ただ、一つ救いがあるとするなら・・・星野は『喋ることが出来る』。
かつ、ここでは日本語が他の動物達に通じる。つまり・・・やることは一つだ。
「・・・・ううぅーー。動けない・・・。助けてよぉぉーー!!!」
--------------そう、星野はただ、可愛らしく手をパタパタと振り、誰かに助けを求めるしか方法がなかったのであった・・・・。