複雑・ファジー小説
- Re: アザラシと動物ランド、F!! 『迷い込んだ別世界・・・!!』 ( No.12 )
- 日時: 2012/07/13 20:41
- 名前: ヒトデナシ ◆QonowfcQtQ (ID: j553wc0m)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode
「パート3。」
-------------助けを呼ぶ嘆きの声は、すぐに周囲の動物達に響き渡った。
とは言ったものの、ほとんどの動物達が頭に「?」マークを浮かべた。
それはそうだ。星野は今は人間ではない、『アザラシ』なのだ。
それはつまり、周囲の動物達にとっては、『何かあったのか!?』とは思うけれど、
特別な理由がない限り、率先して星野を助ける理由にはならないのである。
私達人間にとって分かりやすい例をあげるのであれば、
道路の真ん中で「助けてくれぇー!!」と大声で叫んでいる人がいる。
・・・だけど悲しいことに我々の一部を除く人々が、これを無視するだろう。
それは、『人間である自分と何ら変わりもない「種族」が、可笑しなことを言っている「だけ」にすぎないから』である。
別に『宇宙人』が叫んでいるわけでもない。
血だらけの人が叫んでいるわけでもない。
こういう『特別なケース』であるなら、助ける理由になるが、
今の星野の状況を上と似たような言い方で言えば、
それは、『動物である自分と何ら変わりもない「種族」が、可笑しなことを言っている「だけ」にすぎないから』である。
-------------と、こうなるのだ。さっきの文章と照らし合わせれば分かると思うが、変わったのは『人間』か『動物』かの違いである。
まぁ・・・これは極端に言った話なのだが。それはとりあえず置いておくことにしておく。
-----------そんな星野がしばらく助けを求め、叫んでいると・・・・・、
星野の助けを求める声を聴いて、三匹の動物達が自分の目の前にやってきた・・・。
「---------お困りのように見えますが・・・? どうしました?」
と言って、先陣を切って話しかけてきたのは、自分よりもはるかに大きい『馬』だった。
自分よりもはるかに大きいのも確かだが、その三匹の中でダントツに大きかったのも確かだ。
綺麗な鹿毛の毛色をした馬で、足をよく見ると競走馬のような良い筋肉をしていた。
これは星野の見た感じの感想だが、見た目も言葉も『紳士』という言葉が似合うような馬であった。
-------------馬で紳士っていうのはどういうことなんだと、ついついツッコミを入れてしまいそうになるが、私はあえてツッコまない事にする。
ちなみに紹介しておこう。彼の名前は・・・・『マッハ』。長距離を走ることに長けた馬である。
先ほど見た足の筋肉も確かにうなずける。名前からしても、なんとなくだが凄く走りそうな名前である。
「ねぇマッハ、この子ってもしかして・・・迷子なの? じゃあ・・・あたし食べていいかな?」
マッハのせっかくの紳士的な態様を、根本からぶち壊すような事を言ったのは、
パタパタと自分の羽を羽ばたかせながら、よだれを垂らす『鳩』。
名前は『ポッポ』。どこか別の世界でその名を聞いたことある・・・という質問は、無論、無しの方向でお願いする。
口調を見ると、性別的には女なのだろう、と星野は考えた。
そして、よく観察してみると自信はないが、多分『アオバト』と呼ばれる鳩の一種であろう。
身体は頭から胸にかけてが黄色、腹はクリーム色、肩から羽が暗赤色だ。
言動を聞く限りでは、かなりの食いしん坊であるようだ。
鳩なのに、アザラシさえも食べようとするとは・・・もはや肉食動物だ。
「ダメだよぉ、ポッポ・・・・。ちゃんと・・・・王様に・・・伝えなきゃ・・・・。」
一瞬、あまりにも弱々しい声だったため、どこにいるのかさえ分からなかった。
よく見ると、その正体はマッハの背中にポツンといた。
どこかおどおどしているようにも見える。なぜかは不明だが・・・。
その動物は、『ウリュ』と呼ばれる『リス』だ。
彼女は『シマリス』と呼ばれるリスの一種で、身体は全体に明るい茶色をしており、背中には白っぽいふちのついた5本のこげ茶のたてのラインがついている。
様子を見る感じは、かなり臆病で恥ずかしがり屋な性格で、後に聞いたところによると、ドジな部分もしばしば。
ちなみに性別は女。これも後に判明したことだ。
---------この三匹が、アザラシになった星野の前に現れたのだ。
紳士的な馬のマッハ、食いしん坊のポッポ、臆病のウリュ。
こう見るとなんともまぁ、変な組み合わせである。
「・・・・えっと・・・その・・・ここはどこなの?」
三頭の会話を聞いて、なんと会話を続けてよいか分からなかった星野だったが、自分が一番気になっていた質問をとりあえずぶつけてみた。
結局誰かに話を聞かなければならないのだから。ここがどこなのか、そもそもここはなんなのかという根本的な事を。
無論、全員が全員この質問に答えられるわけでもないのも分かっている。
いや、まずは驚くだろう。何を聞いているのだこいつは、と。私達の世界でこんなことを言えば、真っ先に病院に直行だろう。
だが、予想外にもマッハ、ポッポ・ウリュの三匹は顔を見合わせた後、もう一度星野の方を見て、
「とりあえず、あなたを王様にあわせますので。話はそちらで・・・。」
と、いかにも事情を知っているかのごとく言った。本当に知っているのかは知らないが。
知らない人(この場合は動物になるが・・・)にはついていくな、そう小さい頃は教えられたものだが・・・
ここまでの状況に追いこまれれば、ついていくしか方法がないというのが現実であろう。自分ではどうしようもないのだから。
というわけで、星野はその『王様』に会おうと決心したのはいいが・・・
悲しいことに動けないのだ。それをマッハに目で訴える星野。
「・・・ああ、失礼。ではポッポ、頼むよ-------------」
と、マッハが言うと、鳩のポッポは自分の足で星野をわしづかみにし、軽々と持ち上げ、マッハの背中に乗せたのだ。
・・・ん? と、星野は何か可笑しい感覚に襲われた。何か凄い事をスルーしている気がする・・・と。
---------その答えはすぐに出た。そう、明らかにアザラシである星野よりも小さいハトが、軽々とアザラシを持ち上げるのは、いささか可笑しい光景である。
あまりにも当たり前のように持ち上げられたため、ツッコミが遅れてしまったが。
無論、ポッポは何とも思っていないわけだが・・・。力持ちにも程がある。
「---------では参りますよ。目指すは、中央の大きな木のてっぺんです。振り落とされないように・・・。」
そう言うと、マッハは星野を乗せて走り出した・・・・。
さすが馬といったところか。かなり速いものであった。
星野はとりあえず振り落とされないように、慣れない手で必死にしがみついた。
ちなみに先ほど、自分と同じくマッハに乗っていたウリュはどうしているのかというと、今はポッポの背中に乗っている。
星野が乗っているため、乗るスペースがないためだ。言うまでもないが、もちろんポッポは飛んで移動している。
中央の大きな木のてっぺんに一直線に伸びている階段を、軽快な走りでどんどん昇っていく・・・。(ポッポは登っていないが。)
まるで山登りでもしているかのようだ。階段の数はいったいどれほどあるのだろうか。
そんな素朴な疑問を持つことはあっても、深く考える余裕はなかった。しがみつくので必死なのだから。
さて、王とはどんな人物なのか、内心心配をしているアザラシの星野君。
多分動物であることは間違いないと思うのだが。確証はないが。
(僕・・・生きてかえれるのかな・・・?)
------------自分が元の世界に戻れることを願いつつ、一段一段階段を駆け上っていく・・・。