複雑・ファジー小説
- Re: アザラシと動物ランド、F!! 『3匹の動物たち!!』 ( No.15 )
- 日時: 2012/07/16 13:24
- 名前: ヒトデナシ ◆QonowfcQtQ (ID: j553wc0m)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode
「パート4。」
-------------この世界のちょうど真ん中辺りに、一体どうやってここまで育ったんだ?、と疑問を持つ程大きな木があった。
周りにあるこの世界を囲む木よりも遥かに大きな木が。
その木のど真ん中にポツンと空いている洞穴、そこに王様がいるらしい。
なお、もちろんな話、まずはそこまで行かなければならない。無論、現代のようにエレベーター、エスカレーターとかそんなものはない。
ただひたすらその洞穴に向かって続く階段を…登っていくしか方法がないのだ。
それを考えるとアザラシはまず最初に、途方にくれた。自分は『歩くこと』すら危うい。
長い階段をまるで自分の庭のように、苦にしないで登っていく馬『マッハ』を見て、彼の背中に乗って楽をしているアザラシには感謝の気持ちしか出なかった。
----------------さて、5分程登っていくと、ついに大きな洞穴の目の前までやってきた。
洞穴というからには、中は薄暗いのだろう、と予想していた星野だったが、実際はそこまでではなかった。まるで洞穴全体が光を放っているかのようだ。
もちろん、比喩で言ったつもりなのだが、決してまんざらでもない。
大げさに言っているわけでもないのだ。さすがに目がチカチカする・・・とまではいかないが。
(ここに王様と呼ばれる動物がいるのかな・・・。)
『王様』。
実際がどんな動物かは無論会った事がないため分からないが、星野には大体の見当がついていた。
動物の王といえば・・・あの動物しかいないだろうと、星野は確証もない予想をしていた。
「-------------失礼します。迷える動物を発見しましたため、こちらに連れてまいりました・・・『王様』」
その『王様』を前に、マッハは先ほどよりもはるかに礼儀正しく話す。
いや、マッハは紳士的な男であったため、元々誰と話すのに関係なく礼儀はあった。
だけど星野が感じ取ったのは、誰が見ても分かるほどの『王様』への忠誠心。
それは真っ直ぐで・・・決して『やらされている』わけではなかった。
それはつまり・・・この『王様』がどれだけ信頼されているかが分かる。
動物の世界は『弱肉強食』というが、少なくとも、力によって支配されていないことは確かである。
「----------ご苦労、マッハ君。どうやら手間をかけさせてしまったようだね。」
『王様』の口から出てきたその言葉(いや、この場合は声と言った方が正しいだろう。)から、星野はただならぬ威圧感を感じた。
別に『怖い』とかそんなことではない。強いて言うなら、『さすがだな』、こう感じたのだ。
全然理由になっていないように見えるが、もっと分かり易く言うならば、『王様』の声から、底知れぬ実力、王としての威厳が感じとれたのだ。
『さすがとしか言わざるを得ない』程の存在感。
そして『やっぱり動物の王と言えばこの動物しかいない』という星野の考えを見事再現した動物。
----------------そう、『王様』とはライオンの事だ。
背面の毛衣は黄褐色や赤褐色、腹面や四肢内側の毛衣は白く、耳介背面は黒い体毛で被われている。尾の先端には房状に体毛が伸長し、色彩は暗褐色や黒である。
頭部に鬣がフサフサと生えている。オスであることは間違いない。
イメージしづらい人は、一般的に我々が見るライオンと同じだと思ってくれて構わないだろう。
--------------百獣の王、ライオン。
捕食者の頂点として知られていて、その実力は半端なものではない。
この世界でも頂点に立つという事は・・・もちろん実力はあるのだろう。星野自身にもなんとなく分かる。
しかしまぁ実際、ここまで間近で、しかも檻に入っていないライオンを、星野は初めて見たのだが。
「いえ、当然の事をしたまでです。」
マッハは人間がするような頭を下げるような行為はしないが、敬意を表しているのは確かだ。
それに引き替え、マッハの上で堂々と乗って、只々呆然としている星野君。
まぁ仕方ないことだ。いきなりすぎて何が起きているのか分からないのだから。
「・・・ふむ、まぁこちらに来たまえ。ゆっくり話を聞こう。チェリス、この方達に何かお飲み物を---------」
王であるライオンが話しかけたのは、この王が唯一、自分の側近として守ることを許した、『クジャク』。名は『チェリス』というみたいだ。
頭部や頸部は濃青色、体側面は青緑色、腹部は黒緑色の羽毛で被われる。
羽の先端は青緑色で、翼は青い光沢のある黒である。
王の言葉を聞いて、クスッと笑ってみせると、
「分かりましたわ。少々お待ちを・・・。」
と、どこか気品を感じさせるような声でそう言った。人間でいうなら、なんとなく大人の女性と言った感じか。
------------王は星野達一行を奥の方に連れて行き、ゆっくり話を聞くことにした。
奥の方に行っても洞穴の光の輝きは衰えず、辺りを輝かせ、照らし出す。
木で作られた大きなテーブルを中心に、星野一同はクジャクのチェリスが出してくれたスープを前に座り込む。
木のテーブル、木のお皿。星野の知っている世界とはずいぶん違う世界で、なんとなくだがソワソワする。
あまりにも慣れない環境。むしろ慣れろと言うのも無理な話だ。
「-----------さて、落ち着いたことだし、まずは話を聞こう。何か訳ありのようだな?」
王がソワソワする星野を気遣ってか、とりあえずまずは話を聞くことにする。
それを聞いて星野はピクンと身体を震わせた後、「あっ、は・・はい!」と落ち着きのない返事を返した。
もちろんこの時、王もなんとなく分かっていた。
落ち着きのない態様、これまでの様子を見て、
明らかにここに住む動物達ではない・・・と。詳しい詳細はもちろん知らないが・・・。
(この子・・・もしや・・・。)
王の脳内から・・・ある一つの記憶が引っ張り出される。
-----------------それはとある『人間』との記憶・・・。