複雑・ファジー小説

Re: アザラシと動物ランド、F!! 『王、登場!!』 ( No.18 )
日時: 2012/07/16 14:23
名前: ヒトデナシ ◆QonowfcQtQ (ID: j553wc0m)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode




         「パート5」




     ---------むかしむかし、約15年程前の事であったか。



   いや、むかしむかしと付けるほど昔の事ではないのだけれど。


    ここに1人の人間が迷いこんだ。
    その男もまた、動物に姿を変えていた。


   原因は不明であった。戻る方法も不明であった。

    だが・・・今彼はここにはいない。
    なぜか? ・・・現在行方不明なのだ。

   もしかしたらすでに現代に戻ってしまったのかもしれない。
   はたまた、今もどこかで生きているのかもしれない。
   それは今でも分からない謎となっている。



    (あの男がいたら、この世界はよい方向に変わっていたかもしれない。)







    --------話は変わるが、この世界には二つの勢力があった。


   現状の平和を強く願い、変化を願わない『現状派』。
   現状の平和を強く否定し、変化をさせようとする『改革派』。



      なぜ二つに分かれたのか?



   『王』率いる『現状派』の言い分としては、

  『現状は平和である。故に無理に変化をさせる必要がない。』と言う。


   『改革派』の言い分は、

  『平和など存在しない。生物という存在は戦う事でしか、生きる事を証明出来ない。だからこの平和を変え、生物のさらなる進化を求める。』だそうだ。

  さらに、『改革派』は『戦いのある世界でしか、我々生物は生きていくことができない。それこそが未来の進化に繋がり、未来を繋いでいくのだ。』とも言っている。

   現に、『改革派』はこの世界に戦いを求めている。
   いや、正確にいうならば『現状派』に戦争を求めているのだ。


  そのせいか、この世界ではこの二つの勢力の戦争がずっと何十年も続いていたのだ。


   『改革派』が戦争を求めてくる限り、
   『現状派』はそれに応じざるを得ない。


  なぜなら応じなければこちらがやられるからだ。
  たとえ、いくら平和を願っていても、力でねじ伏せる以外、
  『改革派』を沈静する方法はないのだから。



  だが、この『現状派』は、やはり『改革派』にはどうしても劣る。

  力を欲し、血の気の多い動物達が『改革派』には多いからだ。



       そしてちょうど15年前・・・


     『現状派』は危機的状況に陥った。



   『改革派』の本格的な攻撃に、後がない状況であった。

   そんなとき、この世界に突如現れたのは1人の人間。
   いや、その男もまた、身体が動物化していたのだが。
   それに現れたというより、迷い込んだと言ったほうが正しい。



   最初は全く弱く、むしろ元に戻る方法を最優先にして探していたのだが、
   気付けば彼は強くなり、そしてこの『現状派』の救世主になっていた。


   圧倒的に押されていた状況をひっくり返すように押し返し、見事『改革派』を追い詰めた。


   が、『改革派』を完璧に鎮圧する事は出来なかった。





   ---------なぜか? その救世主である彼が姿を消したからだ。


   それによって、『現状派』は一度『改革派』の鎮圧を後回しにし、彼の捜索に力を入れた。

  その間に、戦力的に弱った『改革派』は煙のように姿を消し、今に至るとこういうわけだ。




    (そう、『改革派』を完全に鎮圧出来なかったのは痛手だった。今も未だどこかで『改革派』は力を蓄え、生き残っているはず・・・。)



   今でこそ平和だが、完全ではない。


  力を蓄えつつ、残った『改革派』との戦争にも備えなければならない。
  奴らが、戦いを放棄するわけがないのだから・・・。


   そして今、目の前にはあの時と同じ、人間の世界から迷い込んだ人がいる。





   ---------ちなみにこの時点では、王は星野が人間であることは知らない。

  あくまで予想で言っているだけである。まぁ当たっているのだが。




    (これが一体何を意味するのか、戦争が始まる事への予兆なのか?)



   この人間がここに来た理由、さすがにそこまでは王には分からない。
   とりあえず話を聞かない事には始まらないのも確かだ。
   懐かしい事を思い出してしまっていて、目の前にいる彼の話を聞くのを忘れていた。





   「--------では話を始めようか。そういえば、君の名前は?」




   名前、そういえば言ってなかったなぁと、星野は今まで忘れていた。
   先ほどから自己紹介するタイミングはいくらでもあったのに、まだ頭が冷静になっていないようだ。





    「僕の名前は星野と言います。よろしくお願いします。」




   まるでどこかのお偉いさんと話をするかのような敬語で言った。
   王は、『ふむ、よい名前だ。』と感心したように言った。





   「私はレイリー。この国の王をやらせていただいている。よろしく頼む。」





    ----------星野と動物達の奇想天外な物語は、この瞬間から幕をあげたのであった。








    
    -----------第一の冒険、完------------