複雑・ファジー小説
- Re: アザラシと動物ランド、F!! 『王、登場!!』 ( No.20 )
- 日時: 2012/07/18 16:52
- 名前: ヒトデナシ ◆QonowfcQtQ (ID: j553wc0m)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=13140
--------------------- 第二の冒険、『僕はギルドのリーダーになった。』 ---------------------
「パート1。」
「---------------なるほど、そのような事があったのか。」
レイリーは、チェリスが出してくれたスープをすすり終えたと同時に、星野の事情を全て聞いた上でそう言った。
星野は文字どおり、全ての事を話した。
元々は人間であること、気付けばアザラシになっていた事、
今まであったことをそっくりそのまま話したと言った方がいいだろう。
人間であったことを聞けば、皆驚くのではないかと星野は思っていたが、そこまで驚きを見せたわけではなかった。
もちろん、マッハ達は驚いていたが、レイリーやチェリスは、やっぱりか、といった表情を見せた。
これを見ると、やはり自分以外にもこのような目にあった人がいるのだろうか、と星野は考えた。
「・・・レイリーさん、何か戻る方法などをご存じないですか?」
星野は自分の事情を全て話した上で質問する。
先ほどの表情から見て、レイリーなら何か知っているのではないかという希望を持って。
--------------だが、残酷にもレイリーは首を横に振った。
当然隠しているわけでもない。むしろレイリー自身も知りたいぐらいなのだから。
「星野君、君もすでに感付いているだろうが、確かに以前、この世界に迷い込んだ人間がいた。
しかし私が気付かぬ内に、彼は姿を消した。まだこの世界にいるのか・・・
はたまた現代に帰ってしまったのか、それは私にも分からない。
私もその真実については今も知りたいと思っているのだ。」
レイリーは申し訳なさそうにそういった。その表情には、嘘をついているようには見えない。
本当はその『以前ここに迷い込んだ男』に話を聞きたいところではあったが、それは叶わないようだ。
--------------手がかりが一つもなく、元に戻る方法が何かということさえ分からない状態。
(僕は・・・どうすれば・・・?)
いきなり異世界に飛ばされてきた挙げ句、元には戻れない。
なんという不幸で迷惑極まりない事であろうか。
星野が嘆くのも当たり前と言えば当たり前である。
そんなときであった。
「星野君、君がよければでいいのだが・・・」とレイリーは口を開いた。
それまでは頭を抱えていた星野であったが、レイリーの言葉に耳を傾ける。
「以前ここに来た彼も、帰り方が分からなくてこの国に滞在することになったのだが・・・
ここで出会えたのも何かの縁であろう。せっかくだし、ここで生活してみたらどうだ?」
--------------ここで生活する。その言葉にはあまりにも色々な意味を含みすぎていた。
まず初めに、ここで生活することはつまり、動物達と生活することにイコールする。
もちろん分かっていると思うが、星野はいまアザラシだ。
つまり人間の生活とは全く違う生活の仕方を要求される。
動物の生活を知らない自分が、生活できるのかという心配。
・・・また、これは割と真面目な心配なのだが、自分は歩く事ができない。
生活どころか歩くこともできなければ、生活するなど夢のまた夢。
あまりにも不安要素が多すぎる・・・と星野は内心思った。
いや、今の状況を見ればそうも言ってられないというのが現状であるが。
「星野君、君が不安になる気持ちもよく分かる。
だが安心したまえ。ここにいるマッハ君達が君のサポートをしてくれるだろう。」
星野の心を見透かしたようにレイリーは言う。
もちろん、マッハ達にとってはいきなり言われた事である。
その証拠に、ポッポは思わず『ええっ!?』と声に出して驚くぐらいだ。
だが、マッハ達はレイリーに逆らうような事はしない。
特にレイリーを尊敬するマッハにとっては、レイリーの指令が全て。ただ従うのみである。
それは決して、レイリーが『王だから』というのが理由なわけではない。あくまでも『レイリーのお願いだから』従うのだ。
マッハ達、いや、この国の全ての動物は、レイリーを『王』という風な特別な見方をしていない。
『王』は肩書き。彼らが従うのは、あくまでも『レイリー』なのである。『王』ではないのだ。
それでも肩書きとはいえ、レイリーは一応立派な『王』なので、あくまでも『王』であることには変わりないのだが。
「王がそういうなら・・・引き受けましょう。」
マッハがそういうと、ポッポは「あーあ。」と面倒そうに言った。
でもだからといって文句があるわけではない。
この三匹の中でマッハは皆を引っ張る兄貴のような存在なのだから。
ポッポもウリュも、マッハの決めた事に従うだけなのだ。
「------------ありがとう。君たちならそういってくれると思っていたよ。
・・・そういうことだ星野君。これから彼らにお世話になるといい。」
星野は正直マッハ達に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
自分のようなお荷物の世話をするのだ。この上なく面倒な事であろう。
星野はとりあえず一言、『ありがとう。』と言っておいた。
「君たちはこれから行動を共にする仲間だ。お互いに助けあって生活をするといい。」
きっと良いチームになる、とレイリーは付け加えて言った。
チーム・・・というのにいまいちピンとこなかった星野だが、その言葉にマッハが過剰に反応した。
「・・・・!? 王・・・まさかこの4名で『ギルド』を組めと言うおつもりなのですか・・・?」
マッハがそう言うと、「さすが話が早いな、マッハ君。」とレイリーはフッと笑った。
『ギルド』と言う言葉の意味は星野には分からなかったが、なぜか分からないが、ポッポもウリュも驚いた表情を見せている。
「-------------さて、ではまだよくこの国について分かっていない星野君のためにも、この国の事について教えよう。
私が君に、マッハ君達と行動するように言ったのはある理由がある。」
そのある理由こそが・・・・・マッハ達が驚いた、『ギルド』という団体の創立である。
この国にはある一つのルールがある。
動物達が互いに手を取り合い、協力して、一つの目標やミッションを達成するために作られた団体、『ギルド』と呼ばれる制度がある。
人間世界でいう『部活』、はたまた『サークル』などに近いものである。
つまりレイリーは、星野達の4人で『ギルド』を作るように提案したのだ。
『ギルド』は自分で作るのも自由だし、参加するのも自由。
『王』であるレイリーが、動物達同志の仲間の大切さ、仲間と協力することの重要性を教えるために作った制度だ。
「星野君、もちろんの事だが、この『ギルド』を仕切るのは君だ。マッハ君たちを生かすも殺すも君次第だ。」
その言葉に星野だけではなく、マッハ達も驚いた。
レイリー以外の下についたことがないマッハにとっては、特に驚きの出来事であった。
ポッポ、ウリュも同じだ。てっきり、もしも『ギルド』を創立するのだとしても、リーダーはマッハだと思っていたのだから。
-----------------無論、星野もそうだ。まさか自分がリーダーになるなんて思ってもいなかったのだから・・・・。