複雑・ファジー小説
- Re: 罪とSilencer ( No.30 )
- 日時: 2012/08/12 22:55
- 名前: 檜原武甲 ◆gmZ2kt9BDc (ID: S20ikyRd)
- 参照: 金曜日まで合宿いってきます。
七話「隻眼とじゃじゃ馬 中幕」
幾つもの任務を乗り越えてきた椿は悩んでいた。厳密にいうと困っていたといったほうがいいのだろうか。まず、知名崎宇検の倒し方がまったく解らないということが一つ、二つ目に自分より低い存在だと思っていた桜が自分をかばって今、目の前で戦っているということだ。
—————————ものすごく腹が立つ。
「桜! なに私を庇っているのよ!! ムカツク!」
唾を吐きかけるように苛立ちを表すと『念動力』で宇検を力いっぱい吹き飛ばした。
「くッ! 念力か……まだあの能力は健在か」
沸々と怒りが湧いてくる椿にとってアスファルトに叩きつけられて、這い上がろうとしている宇検は八つ当たりの対象になった。最初から殺す予定だったのだが、それがあっさりとから惨たらしく殺すに変わっただけであって、これを知ったら宇検は「とんだ迷惑だ」と呟くだろうが椿はそんなことは知らない。
「まだ首吊ったほうが楽に死ねると思えるぐらいに苦しませてやるわ」
『毒中毒』と呟くと掌から緑のガスを倒れている宇検に吹きかけた。宇検の頬に黒い×の印が出るのを見てから、勝利を勝ち取ったと椿は確信していた。
「これは……いったいなんだ?」
よろめきながら立ち上がった宇検は無傷のように見えたが、すぐにうずくまった。
「吐き気、眩暈、頭痛がする……テメェ、俺を何らかの病気にしたな!?」
宇検は生まれて今まで風邪を引いたことはない。だから、自分が病気になっているということには素早く反応したということは知らない椿は、流石だなと感心していた。そして、勝ち誇っていた。
「『毒中毒』は毒を摂取しないと毒を放出する毒を体内に宿す能力って言ったらわかりやすいかな? さぁ、なんでもいいから毒をとらないと死ぬよ?」
毒を盛るより毒を自ら飲ませたほうが、効率がよく、楽に任務が遂行するということをとある推理小説を読んでいてふと思ったことを椿は思い出しながら目の前の宇検がどうやって毒を摂取するかを楽しみに見ていた。この能力は強敵にだけ使う能力で幾つもの人を戦闘不能にしていった。
「そうか、毒か。ならいい」
と宇検は——————
「らっしゃー!」
下をむき出しにして斬りにかかった。
「えッ!?」
今までの敵はスパイなら、気絶させる用の毒を注射針で打つなりして自滅していった者もいればハッタリと信じて戦い自滅した軍人もいた。しかし、今ドスを持って襲いかかっている宇検は——————
「狂っている!? なんで、毒を無視して……こんなに攻撃できるの!?」
「ハハハハ!! 狂い咲き!!」
宇検のことを狂っていると言わなかったらその人こそが変人だと思いながら防戦一方の戦いになっていた。赤い舌を口から出してリミッターが外れたみたいに鋭い眼を向けて何故かどこから取り出したかわからないドス二つで隻眼姉弟を相手にしているのは襲われている椿も褒めていた。そして、怖がっていた。何故宇検は毒を摂取していないから毒に襲われているはずなのに力が弱くならない。
「なんで! 貴方は毒に侵されないの!?」
日本刀で刀の勢いを抑え込みながら、頬に出ている×の印を見ながら苦し紛れに聞いた。別に聞いたところで救われるということはないが、戦うための参考にはなるだろうと思って聞いた質問の答えは、予想を覆し椿の心に痛みを与えた。
「だって、戦闘中『毒』だって『毒』だろ」
続く