複雑・ファジー小説
- Re: 罪とSilencer -十二話更新しました- ( No.41 )
- 日時: 2013/01/17 22:39
- 名前: 檜原武甲 ◆gmZ2kt9BDc (ID: S20ikyRd)
- 参照: お久しぶりです。復活しました
第十三話「鼠」
三戟紫炎がさっそく困り果てている任務一日目の夜、豪邸の玄関口に沿った大通りに、黒いパーカーを着て顔を隠している男女のペアがいた。玄関には二台の監視カメラで玄関付近の映像を24時間守衛室に映像を流している。警備員はこの男女には無警戒だった。のんびりとコーヒーを飲みながら沢山ある画面を眺める警備員はこの二人の『敵』には無警戒だった。
カメラの死角に隠れると二人はフードを脱いだ。暗視ゴーグルが付いたガスマスクをつけている姿が現れ、明らかに変質者だが、見たところで通報するまでの生命活動をくれなさそうだ。
「よし、作戦確認。私ことアルファは敵下級部隊の殲滅。上部から能力の使用を認められている」
「俺は、目標の確保かつ目標の護衛の遺伝子サンプルの採取。皮膚の一部でも骨でもいいからとって来いと上部から通告されている。同じく、武器の使用を認められている」
「「集合地点Aに2230で、散開」」
女は壁の中へ、男は闇の中へとけていった。
守衛室には、金に物を言わせて警備員が10人待機されていた。新米警備員が2人、ベテランが8人。ベテランと言っても警備員の経歴が多いというわけではない。昔、傭兵で戦っていた経歴がある者たちだ。一度は銃を握ったことある男たちなのだから、金持ちの吉祥轡は経験者に違法銃器を配布していた。それほどまで守りたいものがあるのかと言われたら彼は堂々とそうだというだろう。
「お嬢の護衛に新しい若い男が就くらしい」
「そんなことはどうでもいいさ。俺らは俺らでしっかりとした給料がもらえればそれでいい」
「だな」
椅子に腰かけて画面を見ている3人とポーカーをして暇つぶしをしている7人がいる部屋の床からゆっくりと腕が出てきていることに気付くはずがない。
「新しい護衛ということは何者かに狙われているということだよな?」
「その通りだな。俺たちも警戒しないといけない」
全員がハハハと笑った瞬間、一人の男が悲鳴を上げて地面に倒れこんだ。
「「!!」」
全員が立ち上がった時、地面から二本の腕が飛び出し足をつかみまた一人地面に埋め込んだ。頭がすっぽり隠れるまで埋めると、次の獲物に取り掛かった。
「怪物!?」
武器を取り出し、地面に向けるもの逆の方向から手が出てきて他の人が取り込まれる。こうして全員が埋められてしまった。あまりにもの恐怖にさすがに警備員も警報を鳴らせずにいた。
「こちら、アルファ。敵下級部隊殲滅。作戦を実行する準備が完了した」
「了解。こちらも行動に入る」
一言の通信後、屋敷は停電に陥った。
吉祥恵那の部屋にドアを開ける音なく現れたのはベータと名乗る男だった。足元がかすんでいて幽霊のようにみえる。
「恵那さん。ちょっとばかり皮膚をもらいに来ました。ご覚悟を」
男がベッドに手を付けようとしたとき、ベッドが跳ね上がった。
「てめぇ! 私に何をする気だ!」
飛び跳ねてレミントンM870を構えて立っていたのは————
同時刻、警備室。
「残念だったね。恵那さんは保護されている。変わり身になっているのは音更だ」
アルファの後ろに三戟紫炎は立っていた。