複雑・ファジー小説
- Re: 罪とSilencer -お久しぶりです。更新しました- ( No.46 )
- 日時: 2013/02/11 20:25
- 名前: 檜原武甲 ◆gmZ2kt9BDc (ID: S20ikyRd)
- 参照: 毎週月曜日更新と決めました。
第十五話「敵の大胆不敵な行動」
アルファと名乗る女、ベータと名乗る男、どちらとも自然の力を使う能力者のため二人とも射殺された。死体袋が運ばれていくのを三戟紫炎の上司である知名崎宇検は見て、これからだと感じていた。
「どうやって、ブレーカー治したの? 紫炎君」
「直接ブレーカーに触って倉庫から新品のブレーカーを持ってきた」
両手をかざすと一瞬にして手の上にはブレーカーが現れていた。これが紫炎の能力『七つ道具』だ。どこでも好きな物を出すことができる。まさにドラエモンのような存在……
「恵那さんは?」
謡は遺体袋が運ばれるのを見ながら、思い出したように言った。
「師匠のすぐ隣で待機している。誰も誘拐なんてできないボジションにいるさ」
後ろから影
「へぇ。その言葉に毒があるんじゃないの!?」
「し、師匠!?」
「二人ともよく守ったな。だが、残念なことに吉祥恵那さんは俺たちの管轄外になりそうだ」
悔しそうな顔をしながら知名崎宇検は愚痴った。いつも愚痴を言うが今回はものすごく悔しそうだ。
「上からの命令でロシアの医療施設で能力を封じる治療に移すらしい。だから……」
知名崎宇検がしゃべりながら懐のペンを取り出すと傍にあった紙をつかみ
『ロシア軍が出撃体制を整えているという情報が入ってきた。その情報が正しいとわかっているからロシアが脅しに来たということだ』
と殴り書きをした。政府から政府へこのように脅されたらたまった者じゃない。もし、吉祥恵那の代わりに全国民が死んだら滑稽だろう。だから、取引に出ないといけないのか……
僕は怒り、そばにいた音更も怒った。声に出して怒ったら『二人が敗れたことを伝えるスパイ』に気付かれてしまう。無表情のままだった。
三人で自分たちの無力さを嘆いたその時だった。
【繰り返す、これはテレパシーである。慌てずに行動するように、繰り返す……】
僕の中で声が響き渡った。そこで問題。
Q.頭の中で男の人の声がいきなり流れ始めたらどうなるか
A.自分の精神状態を確認する
という問題を考えるぐらい動転した。ようするにいきなり、能力者がテレパシーを使って交信してきたということだ。もちろん、驚いた。
【僕の名は鳥栖蜻蛉。公視総監の座にいるものです】
公視総監すなわち、企業で言えば社長、学校では校長先生に値するトップのうちのトップからの連絡とは————非常事態。
【緊急連絡だとわかってくれるとうれしいのだが】
呆然としている師匠と僕と謡(部外者なのに連絡がつながっている?何故?)への緊急任務だった。
【いきなり驚かしているだろうと思うけど、緊急事態だ。我々の国防のためにも…… あ、そうだ。このテレパシーは一方通行となっている。返事をしていると変な人に見えるから注意。さて、本題に戻るとしよう。まず、知名崎君はちょっとばかりロシアに行ってもらう。大丈夫、暴れても大丈夫な任務だ】
師匠の眼が怪しく光っている……
【三戟紫炎君と音更謡君は吉祥恵那君を庇いながら、敵組織を壊滅させることをお願いする。まだ、敵の組織は小さい。ようするに日本にいる組織は小さく、殲滅が可能だ。組織の本隊は僕たちがなんとかする。その間に、日本に潜伏している組織のボスを倒してほしい。もちろん、給料は弾むさ。今回の任務に成功したら1000万円、最初に前払いで半分、成功後にその半分を差し上げよう。どうだね? 『殺し屋』の音更君】
どうしてだろう。謡の眼が異様に光っているのは…………『殺し屋』?
【では、そういうことで。次に目標の情報についてだ。
クラーク・アルフレッド、23歳。身長170センチばかし。顔元はガスマスクをつけており、服装は黒がベース。暗い茶色の髪の毛を持つ外国人だが眼は黒いから注意。居場所は新潟県越後山脈の山の中。彼によって、政府はロシアを使って脅されていた。相当な関係があるのだろう。今回死亡した敵もロシアの工作員だった。気を付けてくれ。もし、必要なことがあったら本社の方へ連絡してくれ。では通信を遮断する。】
うつむいていた顔を上げるとそこには師匠の姿はなかった。どうやら頼まれた任務が楽しくてしょうがなかったのだろう。今頃バイクでも乗って高速道路を走っているだろう。
「謡……ちょっとばかり昔を思い出して戦ってみますか!」
謡の方向を向かずに大声で気合を入れると
「わかっている! 今回は報酬が弾んでいるみたいだし、頑張らなくっちゃ!」
こうして、吉祥恵那の部屋に行き事情を説明し、三人でバイクに乗り、越後山脈へ向かった。
≪そちらに公視将校の『知名崎宇検』と公視総監『鳥栖蜻蛉』の手下が向かうという情報が入った。こちらにも【看護師】と共に【ベンケイ】と殺し屋の【ナイト・ウォーク】が向かってきているという≫
暗い部屋の中、携帯電話でしゃべっているのは問題の暗い茶色の髪の毛を持つ外国人かつガスマスクをつけている男。
『気にしないで、ボクは一番強いから。このロシアでの地位で一番だということを思い知らせてやるさ』
ガスマスクの男、否クラークはロシアの同盟相手と話している。
『このKGBで一番偉いレオニード・ヴォルフォロメエフの強さを見せつけてやるさ。では幸運を願おう』
ロシアでは銀髪のコートを着た男が、日本ではガスマスクを着けた男がそれぞれ携帯を置き、部下に指令を出していた。