複雑・ファジー小説
- Re: 罪とSilencer -更新- ( No.48 )
- 日時: 2013/02/20 21:55
- 名前: 檜原武甲 ◆gmZ2kt9BDc (ID: S20ikyRd)
- 参照: 遅くなりました。
第十七話「一人で二人、二人で一人」
まず、吉祥恵那の護衛として音更謡をともにしながら帰らせる。総監から指定された安全なアジトに向かうためだ。もちろん、僕は早期決戦を目指して敵の頭『クラーク・アルフレッド』と戦おうとした。だから、できるだけ体力を消耗したくない。故に正直言って戦う気はなかった。あの大きな楯を躱してそのまま入り口に入ってしまう作戦だった。相手の頭、すなわちクラーク・アルフレッドを倒せば吉祥恵那を襲うことは無くなるだろうという考えだった。門番ごときに止められるはずがない。吉祥恵那は謡に任している。この鉱山に残ったのは僕だけだ。
もちろん、考えた通りに動く。突進すると見せてフェイントをかけて避ける。
「……お、おい!」
盾を持っている敵は動きが鈍い。振り向くにもひと苦労する。予想通り簡単に避けることができた。だが、銃声が鳴り響いた。
銃弾が腕を掠めると紫炎は盾を持った男の方に振り向いた。そこにはおかしな姿があった。
「やれやれですわ。こんな格好で銃を撃つなんて無理があります」
盾から30歳ばかしの女が飛び出ている。地面に水平に飛び出ている。その両手には拳銃が握られている。それよりもこの女の姿に見覚えがある。
「お前、その能力は……」
「おや、私の妹を殺した張本人じゃないですか。そうです、私たち一族の能力です」
盾から水面に飛び込むように地面に飛び込むと上半身だけ現した。
「そして、死になさい」
盾を持った男が襲いかかってくる。盾だからと言って攻撃性を持っていないという訳ではないだろう。盾で殴られることは非常に危険だ。そして、地面から突如現れる銃にも注意しないといけない。地上と地中のコンビ。意外と強いのかもしれない。だが、一度紫炎は同じような能力と戦って勝っている。
泳ぐように地面の中を動き、不意に銃を撃とうする女の行動を見定めると次に女が顔を出すところに向かった。そして、銃を持つ手をつかもうとした。
この一族の能力は原子の間を通ることができる能力で、いくら頑丈な壁があったとしても原子でできている以上すきぬけて通ることができる。しかし、銃を持つ手は能力を使わないようにしなければいけない。手が透きぬけて銃をつかむことができないからだ。唯一の弱点は武器を持つ手だ。それでこの前の能力者は倒した。が————
「無駄ですわ」
掴もうとした手は通り過ぎ、銃弾が紫炎に向けて撃ち込まれた。
結局、撤退した。必死に逃げた。まず、疲労が多いのと体勢を立て直すことが必要だったからだ。
アジトに行けば、襲撃によって汗だくのまま半壊になっている家によりかかっている謡と怖がっている吉祥恵那を見つけ、最終的作戦を考え出した。