複雑・ファジー小説

Re: 罪とSilencer  第二章『生者なき軍隊』更新 ( No.64 )
日時: 2013/04/18 22:57
名前: 檜原武甲 ◆gmZ2kt9BDc (ID: S20ikyRd)

第一話「夏といえば海ですね!!」

「夏と言えば海だろ! よっしゃー俺はビーチバレーだ!!」

何故、師匠の声が最初に書かれる? どうも、三戟紫炎です。病院で一か月過ごして気分転換に海に来ています。相変わらず肋骨を折っている師匠は元気ですが、僕は少し弱っている気がする。

「ビーチバレーしようぜ!」

「お、いいぜ! お前、この人のパートナーに——」

「俺一人で大丈夫だぜ。かかってこいよ」

「いったな。よし、絶対に勝ってやる」

どうやら師匠は三対一のビーチバレーでやるみたいだ。どうせ、一般人相手なら師匠が勝つだろうけど、問題は水着だろうな。激しく動きすぎて紐がほどけるかもしれない。

「どうしたの? 何見ているの?」

気づけば、飲み物を持って元同級生の音更謡(オトフケ ハルカ)が立っていた。

「な、なんでもない」

水着に目を向けてしまうのは男に生まれた世の定めだと思う。
師匠も謡もセパレーツタイプの水着を着用している。本当に目に毒だから日光浴みたいに寝よう。

「宇検さんって何歳なの?」

「32……33だったような……」

「なんで、結婚しないの?」

そういえば師匠が見合いとかしたという話は聞いたことはない。もう、いい年なのに同年齢の男と一緒にいる様子をみたことがないな……たぶん、

「あまりにも強すぎるから、男友達がいないのだろ————」

僕が師匠の悪口を言おうとした瞬間、ピーチボールが僕の顔面にぶつかり、破裂した。

「紫炎! なに人のことを馬鹿にしているのかぁ!」

師匠が笑いながら叫ぶ声が聞こえてくる。砂浜に寝そべっているから姿は見えないけど、わかることは【少し】怒っているということだ。激怒していたら骨折では済まないだろうな。

「紫炎君、大丈夫?」

それに比べてこうやって顔色を見てくれる謡は優しい。師匠も優しかったらよかったのに……

「う……あれ? ビーチバレーをしていた三人の男は?」

「恐れをなして逃げた。まったく最近の男は腰抜けだぜ」

腰に手を置いてワハハと笑っている師匠もどうかと思う。

「いや、師匠が異常に強いだけです。本当に馬鹿みたいに強いだけです」

「そうか?」

「まるで男のようにつ————」

気が付いたら足をすくわれて腰を思いっきり打ち付けられた。再び太陽と直視することになるとは……背中が砂浜の熱で焼けてひりひりする。
今日は風呂に入れないかもしれない。

「まったく、いっとくけど俺にも男友達がいるんだぜ?」

「え、本当ですか!? 宇検さんに?」

「…………」

砂浜を擦る音が聞こえてきた。どうやら、謡も同じ目にあったようだ。

「テメェら、俺が婚期逃すのではと思っているんだろ? 許せねぇな」

寝そべっている僕らの前で仁王立ちをする師匠は迫力があるが、水着はちょっと……さすがにもう三十代だから露出を控えめにしたらどうかと思う。

「次の任務はその俺の男友達関係の依頼だから、楽しみにしとけよ。さぁ、立ち上がってバレーしようぜ」

 僕は知名崎宇検の男友達なんてどんな奴だろうと考えながら、恐怖に
なるであろうビーチバレーと進んでいった。海に行って訓練並みのスポーツをするなんてもう師匠とは遊びたくないと決意する数時間前であった。