複雑・ファジー小説
- Re: 罪とSilencer 第二章第二話更新 ( No.66 )
- 日時: 2013/04/29 21:37
- 名前: 檜原武甲 ◆gmZ2kt9BDc (ID: S20ikyRd)
第三話「怪しい敵」
冴里は少し怯えているみたいだ。いきなり能力が復活したと思っていたら、その能力に歯止めが無くなっていたら僕だって怖い。
「敵がいつ襲ってこないようにここ三日間は『禁止令』を使っている。そろそろ限界が……」
「無理するなよ、清水先生。すぐに俺らが引き取るから」
「師匠、『禁止令』とはなんですか?」
「ここにいる清水先生の特殊能力だよ。簡単と言えば敵、味方を同じ法で縛る能力みたいなものだよ。味方のためにもならないし、敵のためにもならない……」
「そして、今。私はこの天満宮で『戦闘を行ってはいけない』という法を発布している。しかし、そろそろ私の精神の限界だ」
「なんかスイスみたいな能力ですね。永久中立国みたいな」
「「…………」」
「……すみません」
二人とも大仏みたいに真顔になっている。冗談がわからなかったらしい……残念。
「冴里さんをよろしく頼むよ。知名崎先生」
「わかったよ、じゃぁな。冴里、ついてこい」
師匠はくるりと清水さんに背中を見せると渋々とエレベーターに乗っていってしまった。いつもはお別れのときはもっと元気なんだけどな
「師匠、不機嫌そうだな……冴里さん、行きましょう」
冴里は僕の隣に立つとこっそりと師匠の怒りの原因を教えてくれた。
「知名崎センセは清水センセと矢向が嘘をついていることに怒っているのさ。どんな嘘かは調べたくないけど」
なるほど、なんか隠し事をしているのか。気になるけど——
「冴里をよろしくお願いします」
——普通の人のように見えてうっすらと感じる殺気は玄人を表しているからな……今は駄目だ。次の機会だな。
地上に出ると師匠が黒塗りの自動車(運転手付)を用意してくれていた。僕らはこれに乗って用意された政府施設に向かう。師匠というと「先いっとる!!」バイクで出かけてしまった。敵の気配を探しに行ったと信じたい。
「紫炎サン。不味いです」
自動車で1km移動したところで焦ったように冴里がしゃべり始めた。
「どうした?」
「このまま、進むとヤバイ敵がいるよ。知名崎センセは大丈夫か
な……」
「何でわかるの?」
「だって、ちま————こっちに来ています!!」
「えッ!?」
その瞬間だった。窓からナイフを持った手が現れて、僕の喉を掻ききろうとした。
「ッ!」
間一髪で避けたが、
「ガハァ……」
ナイフは運転手の喉へと刺さってしまった。ナイフを抜いてあげたくても運転手の様子を見ている暇はない。あと少しで曲がり角と言うのにッ————しかたがない。
「どうするの?」
「飛び降りる」
「えぇ!?」
ドアを開けると冴里を抱え込みながら道路に飛び出した。地面に激しく当たり、服が破ける、顔に傷跡ができる。が、なんとか冴里を守ることはできた。
「なんとか助かった……」
任務の達成感に浸っている中、自動車の爆発音が響き渡る。
そうだ! 敵がいたな……
「血塗れにしましょう」
ふらりふらりと歩いてくるその敵は大きなナイフを持った——
「なにあれ。ボク初めて19世紀の格好をした人を見たよ」
片眼鏡をした山高帽をかぶっている黒いコートの男だった。