複雑・ファジー小説
- Re: 罪とSilencer 第二章第三話更新 ( No.68 )
- 日時: 2013/06/02 19:31
- 名前: 檜原武甲 ◆gmZ2kt9BDc (ID: S20ikyRd)
第五話「山高帽の男」
山高帽の男は戦闘に怖がる様子もなく、逆に微笑をたたえ、クククと笑っていた。
「私を誰も捕まえることはできなかった。未熟な貴方には私を捕まえることはできない」
冴里が相手の思考を読み取っている間、時間稼ぎに返事をする。
「捕まえるんじゃない。殺すんだ」
「へぇ、昔は殺さない主義だったそうだが」
「今はその主義もなくなり、10代の青年が犯罪者を負うことはない。大人がちゃんと仕事をするんだ」
「怖い、怖い。新時代でも僕を捕まえられるかな。いや、殺せるかだったな」
自分の間違いにケラケラ笑う、山高帽は深呼吸をした。
今がチャンス
僕はすぐに銃を構え、胴体を狙って引き金を引いた。サイレンサーがついているから、近隣の住民にもわからずにことを片付けることができるはず。
「(当たれ……)」
そう思って発射された弾丸は——
キィーン
と山高帽の体に弾かれた。胸に固い金属……防弾チョッキを仕込んでいるのか? でも、あの音は弾丸をはじいた音にも聞こえる……
「おやおや、私は油断していましたね。では、参らせていただきます」
「右に避けて」
山高帽がしゃべり終わるのと同時に、冴里は叫んだ。もちろん、避けないはずがない。
僕が立っていた空間にナイフがスゥーと現れた。下手したら体の中からナイフがご登場となるだろう
「冴里、君も気を付けろよ」
「わかってる。左に避けて!」
真剣な声で呼びかけられるとすぐ左へ飛んだ。ナイフがすれ違い様に空中に出てくる。
「惜しいですね。ちょっと気になったのですが……さっき、私の体に当たったのはパチンコですか? どうも、この世界の銃って感じがしなかったのですが」
「くぅ、なめやがって。ちゃんとした銃だ! 文句あんのか!」
「いいえ。文句はありません」
山高帽の男は落ち着いた物言いで、自分のナイフを触ると、ニコッと笑った。
「ただ、弱すぎると思ったので」
なるほど、拳銃では弱いというのか。ならば!
「じゃ、ちょっと待っていろよ! いいものを見せてやるさ」
拳銃を掌に戻すと、山高帽目掛けて走った。
「何を見せてくれるのでしょうか。楽しみです」
山高帽はナイフを空中に出現することなく、投げつけてきた。玄人並みのナイフの速さだが、
「遅いぃ!!」
ナイフを躱し、そのまま敵目掛けて走る。ナイフを投げる隙も与えない!
「ッ! 古風の(アンティーク)……」
山高帽がジリジリと下がりながら、何かつぶやいている。死に際の一句でも喋っているのか知らないけど、お前はここで殺す。
「軍隊式……自営団!」
掌からショットガンであるレミントンM870を取り出し、山高帽の顔面を狙った。
「逃げて!!」
静かな印象を持つ冴里だが、今は興奮しているのだろう。敵の攻撃をスレスレで躱すだけで大はしゃぎしているようだが、止まることはない。ショットガンの引き、弾丸が発射される衝撃を体で押さえているその時だった。
「……小刀!」
弾丸の衝撃と同時に脇腹、頬をナイフが掠っていった。山高帽の顔は——
「鉄仮面だと?」
鉄仮面になっていた。所々に弾丸が埋まっている、実に不気味な仮面になっている。
「私のナイフをここまで躱したのは貴方が初めてですね。礼として名乗ってあげましょう」
鉄仮面をつけた山高帽の男が嬉しそうにしゃべり始めた。
「私の名はジャック。人々は畏れて『切り裂きジャック』と呼びます」
「!! ……公士、三戟紫炎。参る」
切り裂きジャック……100年前ぐらいに暗殺されているはず。どうやら、戦いながらMI6にでも連絡を取らないといけないのかもしれない。切り裂きジャックは能力者で能力を使い、人を殺したから、イギリスで殺された。もし、本物だったら……誰かが、こいつを復活させやがったということだ! こいつは不味いことになってきやがった。