複雑・ファジー小説
- Re: 罪とSilencer 第七話「弱点」更新 ( No.73 )
- 日時: 2013/06/23 21:21
- 名前: 檜原武甲 ◆gmZ2kt9BDc (ID: S20ikyRd)
第八話「師匠の策略」
冴里が倒れている中、ジャックと向き合っているのは不安だ。戦っている間に冴里を運ばれてしまったら減給かつ仕事が減ってしまう。まぁ、あの『氷川天満宮の家族』の一人である矢向社が死ぬわけない。だって、情報によると彼には黒い影と紅い影がいる話だ。敵を剥き出して神社に入ってくると即座に痛い目に合うという都市伝説もあるぐらいだ。
「あれ? 冴里さんがもういなくなっている……どこへ行ったのでしょうか」
「僕の仲間がもう回収した。残念だったな」
「いや、貴方を拷問すれば場所がわかります。では再開しましょうか」
ジャックは深呼吸すると手を僕へ向けて言った。
「古風の小刀三連弾」
さっきと同じ速さでナイフが弾丸のように飛んでくる。
「前よりも速い! 『軍隊式機動隊』」
手から取り出したライオット・シールドをすぐさま並べると同じ模様で同じ大きさのナイフがシールドにぶつかって地面に落ちる。
「逃げないと刺される! 」
すぐにシールドを持つのを放棄して、後ろへ逃げると今度は
「古風の投擲小刀! 」
まるで某ジャンプ漫画の四代目みたいにナイフが目の前に現れると懐へ飛び込んできた。
「やっぱりぃ!」
即座に横回転で躱すと掌からH&KMk23を取り出すと敵に向かって撃つ。ついでに目くらましに発煙手榴弾を投げてすぐに走る。後ろから、ナイフが地面に落ちる金属音が聞こえても走り続ける。
「逃げても無駄ですよ! 貴方は私を殺さない限り、冴里さんへの危険が
なくなることはありません!」
発煙手榴弾を投げ続けながら走ると気づけば、相手の姿がうっすらと見えるぐらいまで周りが灰色の煙で包まれるまでになった。ここまで行けば師匠の作戦が使えるだろう。
「どうしましたか? 弾薬が尽きたのですか? さぁ、戦いましょう!」
ジャックの居場所を確認すると掌からある物を取り出すとそこらへ投げ
飛ばした。それはコロンコロンと転がり、煙を流し始める。
「また、煙幕ですか?凝りませんねぇ……ん? な、ゴホッ……なんだ
ぁ?」
作戦通り、咳き込みながらジャックがうずくまっていく。敵を倒している嬉しさと共に師匠の言葉が再び脳裏に映る。
「もし、死者が蘇って敵に回った時はその死者を知っている時はそいつの死後発明された武器で戦うのが一番良い。何故ならそいつは何も知らないのだから対処の使用がない。逆にその死者が生きている時の武器を使うのは避けたほうがいい。現代だと武器を持ち歩いている人はいないが、昔は自己防衛のためにも武器の訓練を受けていた時もある。自分よりも上手に剣を操るやつだっているってことだ。まぁ、例えばナイフを製造、また瞬間移動させる切り裂きジャックなら死後行われた第一次世界大戦でよく使われた毒ガスを使うべきだ。奴は絶対に知らないからな」
そう、掌から出したものとは気体性の塩素ガスだ。塩素ガスは吸ったとたん全身の細胞組織が破壊させる恐ろしいガスでドイツ軍が使い始めた化学兵器。対策とするなら僕が今つけているガスマスクを用意することだ。
「煙幕を張って、警戒を薄くすることで塩素ガスを吸い込みやすくした。ジャック、お前は今の科学を知らないから負けた」
ジャックは返事をしない。屍になっているに違いない。意外にあっけない死に方だったなぁ……
「さて、ガスを処理しないと……マスコミに知られたらめんどくさいな……ハァ……」
塩素ガスを中和するために水酸化ナトリウムを軽く撒いて中和させる。ここで失敗すると死んでしまうので注意しながらひたすら撒いていく。
「よし、塩素の濃度も通常値に戻ったから氷川天満宮へ向かうかな……ちょっと出血しているし……」
右腕に巻いていた包帯がいつの間に赤黒くなっていた。一般人なら眼を回して倒れてしまうかもしれないが、なんだろう、普通に血を見るのに慣れてしまうのは恐ろしい。そして、痛みを普通に耐えてしまうのもまた恐ろしい。
ジャックの遺体を掌に収めると後ろで自動車……いや、装甲車が止まる音が聞こえた。数人の男が銃を持って走ってくる音も聞こえた。ザクザクという小刻みな足音が真後ろで途絶えた。
「三戟紫炎公士ですね! 知名崎宇検公視将校がお待ちですのでお乗りください」
振り向いてみると自衛隊の一個小隊が戦闘準備を整えて、各自敵に気を付けながら立っていた。どうして、自衛隊が出てくる? たった、僕たちの小さい戦闘に?
「ええ、僕が三戟紫炎です。将校が待っているのならすぐに向かいます」
疑問に思いながらすぐに装甲車に乗ると住宅街から大通りに向かった。砂利道を通って住宅地へ向かうと、
「なんだこりゃ!?」
そこにはティーガーⅠと呼ばれるドイツ製重戦車が破壊されて炎上していた。その周りにも弾痕が残っていて……まるでそこは戦場のようだった。