複雑・ファジー小説
- Re: 罪とSilencer 第八話「師匠の策略」 挿絵更新 ( No.75 )
- 日時: 2013/07/08 22:50
- 名前: 檜原武甲 ◆gmZ2kt9BDc (ID: S20ikyRd)
- 参照: 今度から小説更新は図書館に載せます
第九話「進撃の死者」
「いやぁ、参ったなぁ!!」
氷川天満宮内の大型テントの中で右目と頭を包帯でグルグル巻き、左腕にも巻かれているが血がにじみ出して、見るだけで痛々しい姿の女性が大はしゃぎしている。なんだろう、心配してあげたほうがいいのだろうか。
「師匠……何があったんですか?」
「いやぁ……マジでヤバかった。久しぶりに冷や汗が止まらなかった」
師匠はすぐに真顔になると、事の重大さを話し始めた。
「俺がバイクで先行している時だった。いきなり目の前が煙で包まれて、焦った俺はすぐにバイクを止めて拳と銃を構えたんだよ。なんかいやぁな予感がしてさぁ……煙がだんだん薄くなってきたから建物の陰に隠れようとした。その時、戦車砲の音が聞こえて……陰へ飛び込んだ! そしたら……俺の愛車のバイクが……ハァ……」
「また買えばいいじゃないですか。いつも壊しているし」
「そうだな、経費で買ってもらおう。話を元に戻す。それで砲弾の勢いで煙が晴れたら数百メートル先に一個大隊並みの人数のSS、武装親衛隊がフル装備で並んでいたのさ。一般人には攻撃していなかったけど、下手したら巻き込まれるだろうと思って逃げたのさ。まぁ、一般人がいなくなったと思ったら即攻撃に入ったけどな。ハハハ! 能力者じゃなかったらまぁ大勢の人数でも相手できるからねぇ」
「師匠……人間はそんなことできません」
「いや、だから。敵の懐まで入れば銃だって撃てないし、撃ったとしても敵同士で自滅するのみよ!!」
息巻いて、無理に力こぶを作る師匠は痛々しいのやら馬鹿馬鹿しいのやら。まぁ、元気でよかった。ところで僕の依頼人、秤辺冴里さんはどこへいった?
「冴里なら、隣の部屋で休んでいるよ。同じ病室にいる社の『影』が二人とも守っているはずだ」
「師匠の護衛はいないようですけど……」
「俺の護衛は冴里の方に回した。あいつが一番危ないから」
率先して冴里さんを守ろうとする心がけは公視将校として最高の態度だと思う。たとえ、自分の命を捨ててまでも守ろうとする態度も。
「傍に護衛がいるとずっと眠っていられないからな! ハハハ!」
前言撤回。職務怠慢でもする予定なのだろうか……?
「ところで、回収したジャックの遺体はどこへやった?」
「ちゃんと遺体安置室に縛って置いてあります。念のため頑丈な南京錠で封じています。誰か、封印系能力者がここに居たらすぐに教えて下さい」
「今、特殊作戦群の連中がここに向かってきているから聞いてみるさ」
「知り合いでもいるんですか? あの殆ど機密となっている特戦に?」
「まぁな。長い付き合いで教え子がいる」
どうせ、師匠が遊び半分で稽古でもつけてやったのだろう。どうだと言わんばかりに教え子がいると自慢している。どんな人間だろう。早く会うのが楽しみだ。
師匠の教え子、多分僕の兄弟子になるだろう人を想像しているとだんだん廊下が騒がしくなってきた。誰か死の淵から戻って来たのではないかと思っていたら、先ほど迎えてくれた自衛隊員が飛び込んできた。
「大変です!! 先ほどの戦いでの死亡者全員が健全な状態で蘇りました!
すぐ、遺体安置室へ向かってください。私たちは殺到している関係者を抑え込みます」
「なんだって! 急げ、紫炎。奴なら南京錠を壊すのに時間はそんなにかからない!」
「くそぅ! どこから敵が侵入した!?」
どこかの敵がこの神社全体の死者を復活させたみたいだ。しかし、最近死んだ者だけを復活させたみたいだ。やはり復活にも制限があるのか?
地下へ向かって走る。地下の廊下は薄暗く不気味だが、奥の遺体安置室へ向かって走る。
「鍵が壊されている……不味い」
遺体安置室の鍵が壊れていて、もう救出されているのかもしれない。恐る恐る中に入るとそこには——
「待っていたぜ。厚木先生は一緒か?」
頭をひしゃげてだらんと掴まれている切り裂きジャックの死体と指名手配犯『神々』のメンバーでコードネーム「猟兵」のこと『榊 和』が立っていた。