複雑・ファジー小説

Re: 罪とSilencer 〜超能力と犯罪者と正義〜 ( No.76 )
日時: 2013/07/11 22:42
名前: 檜原武甲 ◆gmZ2kt9BDc (ID: S20ikyRd)
参照: 今度から小説更新は図書館に載せます

第十話「神々からの依頼」
「厚木先生……いや、ここでは知名崎宇検だったな。知名崎宇検はどこにいる?」

掴んでいたジャックの頭を適当に投げると、榊和は手を拭きはじめた。

「榊和……テロリスト『神々』内ではコードネーム『イェーガー』と呼ばれている。そして、僕らの同級生だったのにかかわらず……お前らは仲間を大勢殺した!!」

「へぇ、どおりでそんな怖い顔をしているのか。俺はお前のことはうわさでしか聞いたことがないぐらい興味はない。宇検はどこにいる?」

「師匠は、死ななかった数少ない先生なんだ。でも、生徒を守れなかったから恥を感じて名前を変えている。そんな師匠にお前を会わせるわけ
にもいかない!」

「先生の教え子だから……殺したくないのだが、しょうがない」

和が構えるのを見て、掌から拳銃を出して構える。じっとりとした空気が流れる。殺意を剥き出したらすぐに膨らみそうな雰囲気が流れている。

「まぁ、二人とも落ち着いてくれよ」

「誰だ!? くそぅ、後ろを取られたか……」

背後からいきなり澄んだ声が聞こえてきた。師匠の声でもない、全く知らない人の声だった。敵か、味方がわからない。目の前に立っている和が少し和やかな顔になったのをみて、僕の味方ではないのだろう。

「君たちが戦ったところで紫炎君は負けてしまうだろうし、和君の依頼も届けることはできない。ここはもうすぐやってくる厚木先生を待たないか? ほら、紫炎君は掌の中にある拳銃を片付けてさ」

後ろに立っている男はどうやら僕について詳しいことを知っているようだ。そして、掌の中に拳銃があるのも見通した。この男、有力な犯罪者なのかもしれない。

静かに見えて、それぞれが緊張している中、誰かがカラカラと車いすを自ら押して、この遺体安置室へ入ってきた。多分、師匠だろう。

師匠は大きくため息を付くと、大変そうな声を上げた。

「紫炎。今、お前の後ろに立っている男は敵じゃないからな。まず、それを理解してその殺気を無くせ」

「は?」

すっとぼけた僕の声を無視して、師匠は榊和と向き合った。

「久しぶりだなぁ。この前、会ったばっかりだっけ?」

「先生、もうボケたんですか?」

そうだった。師匠の最初の教え子は「榊和」も含まれていた……

「…………その口も相変わらずだな。ぶっ殺すぞ?」

どれもがビビるこの声に(僕も時々ビビる)和は大笑いした。どうやら、師匠のガン付けは聞いていないみたいだ。

「じゃ、本題に入ります。先生、僕たちの仕事はどうやら終わっていなかったみたいです。どうか、手伝ってください」

「仕事……どれのことだ? 三年前ですっかり忘れてしまったぜ」

「僕たちの最後の仕事のことです。奴を殺し損ねたみたいです」

和の最後の仕事は確か病院が舞台だった覚えが……

「…………そうか。なら、しょうがない」

まったく話についていけない僕を誰か助けて!!

「紫炎君。君の叫びは聞こえているから、後で教えてあげるよ」

後ろから知らないあの男の言葉が聞こえてくる。信用ならないが、どうして僕の思ったことを読むことができるのだろうか? 僕が考えている間師匠と和の会話は続いていた。

「紫炎を俺の護衛で連れて行く。たぶん、紫炎ももう一人つれたがるだろうからそこのところ宜しくだぜ」

もう一人とは多分、音更謡のことだろう。あいつとは仲がいいから連れて行きたい。もし、犯罪に加担されそうになった時仲間は欲しいからな。

「先生、詳しいことはそいつに伝えたので。では明後日、先生の部屋に集合しましょう。もう一グループ連れてくる予定なので、その辺宜しくです。ではでは!」

「もう一グループって誰だ?」

瞬きをした間に和は消えていた。奴の能力なのだろう……本当に恐ろしい。そして強い。

「あの野郎、逃げやがったな。まぁ、いい。紫炎、紹介しよう」

ようやく、後ろに立っていた男の顔を拝めると思って振り向くとそこには自衛隊の戦闘服を着ているが、何故か双眼鏡をかけている。この男はどっかの資料で読んだ覚えが……

「初めまして、特殊作戦群、作戦担当の桜策士です。よろしくお願いします」

……またもなお、僕の同級生だった。