複雑・ファジー小説
- Re: 罪とSilencer ( No.88 )
- 日時: 2013/08/01 21:34
- 名前: 檜原武甲 ◆gmZ2kt9BDc (ID: S20ikyRd)
第十二話「新たな仲間」
「この僕が率いる蜻蛉機関を使うと敵の捜索なんてすぐ片が付く」
鳥栖蜻蛉は皆が立つテーブルに近寄ると一枚の紙を皆に見えるように置いた。
「九州地方で怪奇現象と共に誘拐事件が多数発生。四国地方で子供の神
隠しが何件。近畿地方で惨殺事件……まぁこれはジャックだな」
チラッと無造作に置かれている袋を見て続けた。
「次に中部地方で銀行強盗が異常に増えている。関東地方では特に犯罪の増加もない……東北地方では首切り事件が起きている。北海道では雪男が目撃されている」
「日本中で何かの事件が発生しているということですか?」
「ま、そんなところだな」
鳥栖蜻蛉は顔をあげ、大きな切り傷がついた頬を見せつけながらも断言した。
「まず、『神々』は海外で働いているようだから僕たちはこの日本を掃討しようか」
静かに黙っていた桜策士は口を開いた。
「僕たち特殊作戦群は北海道へ……」
「いや、それは俺が行く」
ベッドで寝ている師匠が大きく手を挙げた。まさか、雪男と戦いからという個人的願望じゃないよな? そんな
「俺は雪男と戦ってみたい! という訳で俺は北海道へ単身で行く」
「わかりました……紫炎君を連れて行かないんですか?」
師匠一人でも雪男一人ぐらいは簡単に倒せるだろう。どうせ僕なんてお荷物さ。
「いや、紫炎は謡と一緒にいたほうがいいと思ってな。仲の良い二人だったら相当強くなると期待しているから」
師匠に期待されているなんて言われてうれしくないはずがない。めったに褒めてくれない師匠だからこそ……
「それに策士。あのナチス親衛隊を蘇らせた張本人がこの辺に潜んでいる可能性がある。広範囲にローラーできるのはてめぇの部隊しかいない」
「わかりました」
「矢向たちは四国地方へ向かってくれ、神隠しは宗教関係があるかもし
れない」
「了解です。先生」
「蜻蛉機関はめっちゃ数も多いし……九州、中部、東北へそれぞれできる限りの部隊を送り込め。どうせ、全員死なないだろ?」
鳥栖蜻蛉の能力『一人当千』は人格を作る。その人格にはそれぞれ能力を宿しているからここの分裂も可能。しかし、殺されるとその分精神的ダメージを避けることはできない。だから、蜻蛉機関全員の生還が第一優先となっているらしい。
「まぁ、大丈夫だろう。僕の蜻蛉機関最強のメンバーを集める。ところで後二人は?」
「紫炎と謡には関東に潜伏している健太の仲間を探してもらう。ここまでして、関東に手を付けていないのは明らかにおかしい。早急に対処しないと」
謡が大きく手を挙げて、提案した。
「他の仲間にも手伝ってもらったらどうでしょう? そうすればみんな負担が減りますよ?」
師匠はその意見を即座に否定する。確かにいい案だが……
「病所健太は書類上では死亡している。だから、命令を出すのは遅くなってしまう。そんな手続きをしていたら彼は死者の軍隊を作り終わっている。だから、無理だ」
謡がしょぼんと肩を落とすのを見てドンマイと声をかけておく。謡と僕はそこまで健太について詳しくないからしょうがない。今は、死者の復活を止めないといけない。
「さて、全員任務を把握したか?では————」
「ちょっと待って! ボクも行く!」
師匠の部屋に走ってきたようでハァハァと肩で息をしながら、大声で駆け込んできたのは……
「冴里……どうやってこの会談の話を聞いた?」
護衛対象秤辺冴里がこの部屋に飛び込んできたのだ。