複雑・ファジー小説

Re: 罪とSilencer ( No.90 )
日時: 2013/08/06 22:30
名前: 檜原武甲 ◆gmZ2kt9BDc (ID: S20ikyRd)

第十三話「とある噂」

「この辺で待ち合わせなんだけどなぁ」
有名な桜の木が並ぶ街道のそばにはいろいろなファーストフード店、充実した本屋、カフェテリアが置いてあった。しかし、それらの中に入るわけではない。

「どうして、こんな裏通りで待たないといけないのか……」

それらの店がごみを捨てる裏通りにこの僕、三戟紫炎と音更謡と秤辺冴里はある人を待っていた。

「しょうがないでしょ? 前、依頼に来た人がここを指定したんだから」

「そいつはどんな奴なんだ?」

「冴里みたいな能力者なんだけど……発動条件がアウトなんだよね……」

「…………」

「ほら、来たよ!」

ゴミ箱を慣れたように上手に避けて女の人がこっちに来た。首までのショートカットで薄い茶色の髪をしている。大きな眼でスタイルは抜群って、なんでこんな人がここにいるんだ? こんな健全そうな人が、なんでここに?

「あ、あ……あの……お久し、ぶりです……!そ、そちらの……お、お方は?」

「こいつは私の元同級生で三戟紫炎というの。紫炎君、この人は牧早苗マキサナエさん」

「よろしくです」

手を差し伸べると早苗は慌てながらも手を伸ばして握手をした。伸びてきた右腕をみると見たことのある注射痕があった。そのまま腕を掴んでその注射痕が見えるように強引につかみ、覗き込むとその注射痕は見たことがあったものだった。

「ちょっと、君……覚醒剤やっているね?」

「…………」

早苗と紫炎は共に固まった。早苗が恐怖の顔つきになる。こりゃぁわかってシャブやっているな。

「まぁまぁ、待ってよ紫炎君。今は早苗さんの話を聞いて」

「……しょうがない。今日は見逃してやる」

早苗の腕を掴むのをやめて、話を聞く体勢を整える。すると耳元に冴里が近づいて囁いた。

「この人、趣味でシャブ使ってないよ」

「え?」

「まぁ、話を聞けばわかるさ」

冴里は既に牧早苗がどんな人間かを理解している。能力記憶劫盗でもう情報を覗いていたに違いない。普通に教えてくれればいいのに……

「いつも、ジャブを買っている密売人がいるんだけど……その人が前会った時とは全然違って……い、いつもの下っ端じゃな、なくて麻薬関連をあ、操っているボスだ、だったの!」

「で?」

「そ、その人が最近、の、能力者をね、狙っているという人がいるって注意してくれたの。その人はも、もう死んじゃって」

「どんな死に方だった?」

「交通事故だったんだけど……左腕に日時と場所と死因が出て……それが一致してたの! 怖くて、相談したわけ」

その死に方に聞き覚えがあった。確か……あいつか……脳裏にエレキギターを持った赤毛の青年が浮かぶ。

風合瀬東西南北カソセヨモヒロ……この町に来ていたのか……」

死者を復活させている犯罪者も現れたと思っていたら最悪な殺人者も現れやがった。
三戟紫炎は大きくため息をついた。