複雑・ファジー小説
- Re: 罪とSilencer ( No.95 )
- 日時: 2013/08/19 21:05
- 名前: 檜原武甲 ◆gmZ2kt9BDc (ID: S20ikyRd)
- 参照: http://www.kakiko.info/bbs2/index.cgi?mode
第十五話「人間試験」
「…………ん?」
カフェテリアでコーヒーを飲んでいる風合瀬東西南北の前に三人の男女が現れた。もちろん、三戟紫炎、音更謡、秤辺冴里だ。牧早苗は起きなかったから置いてきた。
「……これはこれは、懐かしい人ッスね。このカソセに何の用事っスか」
「覚えていたのか。この僕を」
「ええ、だってアンタは生きる価値がある人間だから唯一殺さなかった人ッスから」
そういうとコーヒーカップを置いてギターを抱えた。
「で、何の用ですか?」
「お前、先ほど麻薬組織を皆殺しにしただろう?」
「あぁ……そうッスね。確かに皆殺しにしました」
さらりと殺人を述べるのはさすがと言うべきか……
「雇い主を教えてくれ。そいつが今、この世界を滅ぼそうとしている」
「なんスか、それ。新たなRPGですか?」
「真面目な話だ。早く言え」
「まぁ、焦らないで下さいよ。カソセにだって顧客がいて、信用だって
あるんです。ちょっと待ってください……こうしましょう。カソセの同業者を捕まえてください」
そういうと風合瀬は懐から黒髪のおかっぱで赤いヘアバンドをつけている女性の写真を出した。どうみても盗撮写真にしか見えないが……それほど注意していた人物なのか?
「この人の名前はですね古地陽歌というんッス。なんかナルシストな人間で、同じくコロシや窃盗ばっかりしているみたいス……この前も顧客を奪われかけちゃって」
「奪われなくてよかったな」
「ええ、殺しました。カソセに必要のない人間になってしまったッスから」
「……で、このおかっぱはどこにいるんだ?」
「新宿郊外の高層ビル『舘一』の最上階に住んでいる。護衛もなし、エレベーター一つだけしかない」
すぐに過去の例から作戦を立てる。エレベーターに乗るのは危険すぎる……あれしかない。
「しょうがない。今日中に逮捕させるから捕まっている写真を見たら、すぐさま雇い主の場所を教えろ」
真面目な顔つきで風合瀬は頷いた。この世界で反故は許されない。必ず約束を果たしてくれるだろう。
「じゃぁ……」
「そこの眼鏡の女の子は置いてくッス。興味があるッスから」
「は!?」
眼鏡の子……音更謡か? 風合瀬東西南北は女の人を好むという情報があったが……ま、謡なら大丈夫だろう。
「大丈夫、私なら襲われても撃退できるから。早く行ってきて」
「そうか。危なかったら殺していいからな」
謡の眼には迷いはなかった。危なくなったら公共の場であっても風合瀬を殺すだろう。
「全部聞こえてるッスけどね」
僕は秤辺冴里を伴って新宿『舘一』高層ビルへ向かった。そこにいる、能力持ち殺し屋『古池陽歌』を摘発するために。