複雑・ファジー小説
- Re: 罪とSilencer ( No.96 )
- 日時: 2013/08/28 21:39
- 名前: 檜原武甲 ◆gmZ2kt9BDc (ID: S20ikyRd)
- 参照: http://www.kakiko.info/bbs2/index.cgi?mode
第十六話「古池陽歌」
新宿駅すぐそばには多くの高層ビルが立ち並んでいる。よく日照権問題で訴えないものだと言えるぐらい立ち並んでいる。その高層ビルの一つ『舘一』の最上階にターゲットはいた。最上階に住むターゲットの名前は『古池陽歌』、生粋の犯罪者だった。逮捕歴二回、裏司法取引二回。ちゃんとした令状を持っていきたかったのだが、鳥栖蜻蛉曰く
『証拠がないから無理。頑張れ』
だった。
「しょうがないな……冴里はエレベーターから最上階に行け」
「え? 紫炎は?」
「僕は……登る」
冴里は僕の心を読んだみたいで素直にエレベーターに乗ってくれた。おかげで助かる。
さて、心を決めて登りますか!!
「意外と遠いな……最上階は……」
まず、階段で半分まで登る。この時の服は一般人の監視カメラでも見分けがつかないような服にする。半分まで登ったらその服から吸引ポンプ式の吸盤を取り出し、壁を上り始めていた。
「さて、作戦通りならエレベーターに乗ってくれているはずだ。後数分で最上階につく。奴がエレベーターに気が向いているうちに僕が制圧する」
壁をよじ登り、庭の陰に隠れる。その時だった。
「何しているんですか? この雑魚が」
潜めていた所を古池陽歌に見つかった。エレベーターが到着する音がチーンと鳴った。どうやら数秒単位で行動がずれたみたいだ……どうしよう?
「誰かがわたくしを抹殺させようとしたのでしょう? ふん、まだまだですね。壁から登って来るなんて誰も思わなかっただろうけど、まだまだでしたね」
不味いと思ったが、遅かった。背後に回ったら対応はさすがに遅くなる。エレベーターが開いて囮となっていることに膨れていた冴里の顔が驚きの顔に変わる。その顔を見ながら、僕は——
「落ちろ」
突き落とされた。高層ビル最上階、40mから突き落とされた。普通の人ならここで生きるのを諦めて、今までの人生を思いつつ、地面にぶつかるのを待つだろうが、そうはいかない。
ここは、ビルが多く並んでいる。手から鎖を取り出し、ビルの壁に叩きこむ。すぐそばのビルの壁にも叩き込む。ビルとビルの間が十数メートルだったからできる作戦だ。その鎖で最上階に上ろうとすると上から糸を繰り出して古池陽歌が襲ってきた。彼女の能力は『十本の指からクモの糸のような細く丈夫な糸を出す能力』。この状態へ持ち込んだのも作戦のうちだが……この鎖が切れたら終わりだ。パッパと決着を決めないといけない。
鎖を手の中に引き寄せることで、古池陽歌へ近づくことができるのだ。クモの糸とはここが違う。
「これで、どうだ!」
鎖が手の中から外れて、その余った力で古池の頭を踏む。
「ぐわぁ! 貴方! なにするの!」
踏んだ勢いで屋上に着地する。こうすれば、古池陽歌は宙ぶらりんの状態だ。すぐに糸を探して、そこに
「ちょっと電気を流すためさ」
スタンガンをあてる。電気は古池陽歌に伝わり……
「ぎゃー!」
彼女は気絶したようだ。このまま、ほっておくと40mから落ちて死ぬことになるから網で掬っておく。
「実にあっけなかったな。油断しすぎなんだよ」
古池陽歌を紐で縛りつけて床に放るとソファーに細い糸でグルグルになっている可哀そうな冴里を見つけた。
「…………んー」
膨れて早く解けと言っていそうで面白かったので、わざと避けていたら冴里の能力を思い出した……不味い、怒られる……
後で紫炎は10回以上殴られることになるが、そのことは紫炎と冴里だけの秘密になるのであった。そして、すぐに風合瀬東西南北へ会いに向かうのであった。