複雑・ファジー小説
- Re: The world of cards 08/03いちほ中 ( No.15 )
- 日時: 2012/08/05 21:23
- 名前: 柚子 ◆Q0umhKZMOQ (ID: zXm0/Iqr)
プレーヤーの眼光に、思わず涼は怯む。鋭く、視線だけで人を殺せるような。そんな雰囲気が目に宿っていた。プレーヤーは顔をあげ、ほほや眉についた仮面の破片を、手でテキトウに払い落とす。
ゆるく空を仰いだプレーヤーは、視線を涼に合わせる。弱く吹く風が、プレーヤーの首下までの群青色をした髪を優しく撫でる。長い前髪の隙間から覗く、黒色の目がギラリと光る。
漆黒に染め上げられた目は、近くで視線を合わせている涼でさえ瞳孔を見つけることが出来なかった。
「おまんは、オレ殺してなんがしたかったんか、教えてくれんか? それ聞かんで、チビに何かするんは気が引けよるからなぁ」
ぐっと近づけていた顔を、普通に戻す。案外がたいが良く、且つ引き締まった肉体であることが服の上からでも知ることが出来た。プレーヤーにとっては、あまり身長にあってないであろうTシャツからは、腹筋がうっすらと浮かび上がっていた。
それを見ていた周りのプレーヤー達は、静かに嘆息を吐いた。女も男も関係なく、その肉体美に見入っていたのだ。その間に、真日璃は涼に通訳した内容を告げる。伝えた後は、先ほどと同じような笑みが真日璃を見ていた。
「僕は君を殺そうとしたわけではないよ。ただ、いつか死ぬんなら今新でも変わらないだろう? だから、撃ったんだよ」
悪びれること無く、涼は告げる。口元には恍惚とした笑みが据えられていた。その様子を見てプレーヤーは呆れ交じりのため息を、盛大に肺から吐き出した。
漫画などに出てくるガキ大将のイタズラに、散々呆れた教師や保護者の立場が、今のプレーヤーにもっとも嵌っているだろう。
「おまんがそげ考えで行動ばしよっとったんやったら、オレは黙ってられんぞ? チビが一番に殺しを考える世界だっちゅうんやったら、オレはおまんの考えを改めるほかないやろう。
それが大人としての、当たり前や思うんはオレだけやろうがな」
周りを見回してのプレーヤーの言葉に、自分が大人であると自覚しているものは唾(つば)を飲み込んだ。プレーヤーの言葉は、どっしりと彼等の胸に圧し掛かっていた。
我が身可愛さに、殺しを率先とする子供を育成していた自分自身の背徳感。
そんなものの有無を答えろと言われたとしても、彼等はきっと静かに黙り込んでいただろう。カードを見せ、ダイヤであると証拠を元に告げ、顔までも晒した少年が目の前に居たとしても尚、“俺には、私には無関係”の一点張りだろうから。