複雑・ファジー小説
- Re: The world of cards 09/11更新 ( No.43 )
- 日時: 2012/09/13 23:36
- 名前: 柚子 ◆Q0umhKZMOQ (ID: iAb5StCI)
第四話狭間五話往き 『その裏に』
カチャカチャと、複数のキーボードが不規則に音をあげる。前方には巨大なパネルに沢山の監視カメラの映像が、リアルタイムで映し出される。その中に、駐車場で喉と耳を喰べる『香住』の姿も確認された。
それも全て録画録音機能がついた監視カメラに、記録されていく。全てのカメラの死角を、他のカメラで写すことが出来る仕様となっている。
大企業の会議室に近いつくりで、それ以上の広さのあるこの部屋に一人の男が入ってくる。ノックもせずに入ってきた男に、誰一人として視線を向けるものはいなかった。
興味さえないと言わんばかりに、キーボードを叩く手を彼らは一向に休める素振りを見せない。義務権利など考えてはいないのだろう。それが自分の仕事だと割り切っているように、男には見えた。
「あのクズを排除するのに、加減はしなくても良さそうだな。——誰に言われても手加減はしない積もりだが」
独り言のように男は、低いハスキートーンに近い声を出す。無機質にキーボードを叩いていた手が、一斉にぴたりと止まる。
『ビービービー! 直チニ、全警察官及ビ全自衛官ニ命ズ! エリアBニテ同士ヲ無差別殺傷シテイル侵入者ノ身柄ヲ拘束セヨ!
ビービービー! 直チニ、全警察官及ビ全自衛官ニ命ズ! エリアBニテ同士ヲ無差別殺傷シテイル侵入者ノ身柄ヲ拘束セヨ!』
ぷつっとマイクの電源が落ちる音がノイズ交じりに入った。忙しない店内アナウンスの直後、室内付近の廊下に不特定多数の重たい足音が響き渡る。ガチャガチャと色々な装備物が上下する音を聞き、男は何処か楽しそうな雰囲気をかもし出した。
止まっていたキーボードを叩く手が、再度不規則に動き始める。カタカタ、カチャカチャ。——所詮は機械か。男はそう呟き、部屋を後にする。
出て行く瞬間の手には、長く愛用しているのだろう。しっかりと手に馴染んだホルスターが握られていた。