複雑・ファジー小説

Re: 残光の聖戦士 ( No.15 )
日時: 2012/07/31 13:25
名前: 久蘭 (ID: 7KCfFUM.)

6.呼び出し

「エリザ姉さん、はい、ご飯。」
「あーありがとーゼノビアー(棒読み)」
「(汗)」
目の前のエリザは明らかに不機嫌だった。ゼノビアの差し出した食事を受け取り、ろくに噛まずにガツガツ食べ始める。
今日のエリザは、いつもとはなんだか違う。服装は男物ではなく女の子らしいワンピース。髪型はポニーテールではなくぼさぼさの背中まであるロング。そして明るくなく無口。
「一週間外出禁止とか鬼…(泣)」
「……ごめんなさい(汗)」
例の怪魔事件の後——エリザとゼノビアが家に帰ってからしばらくして、避難場所からゼノビアの叔母と叔父、つまりエリザの母と父が帰ってきた。
「ゼノビアちゃん!!エリザ!!無事だったのね!!」
最初は無事を喜びあったシェンデルフェール家であったが……ゼノビアとエリザがどのような目にあったかを聞くと、叔母は爆発した。
「また裏道なんか使って!!おかげでゼノビアちゃんがひどい目にあっちゃったじゃない!!エリザ!!まったく懲りない子!!まさか明日からまた町中探検に行くなんて言い出さないわよね!?バツとして一週間外出禁止!!最初の3日間は部屋から出ることも禁止!!ああ、そうそう!!外出禁止の間は男物を着るのも禁止よ!!たまには女の子らしくしなさい!!」
長〜〜いお説教の末、エリザは外出禁止令と女の子らしくしなさい令が出てしまったのだった。
エリザの部屋には逃げ出さないよう鍵がかけられ、クローゼットから男物の服は抜き取られた。女物の服を着るのが嫌だったエリザは、外出禁止初日は下着で過ごしてやったのだが叔母にばれ、次やったら外出禁止期間を1ヶ月に延長すると脅されている。
「ゼノビアは何もペナルティナシとか……不公平だ……(泣)」
「ごめんなさい……(汗)まあ……明日には部屋から出られるよ……エリザ姉さん(汗)」
「いいよ、謝んなくて……。てか外出禁止だったら部屋にいようが家の中にいようがかわらない。」
「(汗)」
はあ〜〜と長いため息をつき、エリザは空っぽになったスープ皿を置いた。口の端についたかぼちゃシチューを拳でごしごしとぬぐい、ワンピースのひだでその拳を拭く。薄ピンクのひだに、濃い黄色のシミがついてしまった。
「あーあー。そんな事して〜。叔母さんにまた叱られるよ?」
「構うもんか!!あのくそババア!!」
「(汗)」
エリザはふてくされてベッドにダイブする。ゼノビアははあ……とため息をついた。
——その時だった。
「ゼノビアちゃん!!」
エリザの部屋の扉が勢いよく開けられた。エリザの母、ゼノビアの叔母が、息を切らせながら立っている。瞬間、エリザが飛び起きた。
「チャアアアアアンスッ!!」
「一歩でも部屋から出たら外出禁止期間1ヶ月。」
「う゛。」
やっぱだめか……と呟きながら、エリザは再びベッドにダイブした。
「^^;叔母さん、どうしました?」
「ちょっと来てちょうだい。ミハイル様の使者が来てるの!!」
「「ええっ!?」」
ゼノビアとエリザは同時に叫んだ。顔を見合わせる二人を見て、叔母は困惑した表情のまま告げた。
「ミハイル様が、ゼノビアちゃんに聞きたいことがあるんですって……。たぶん、あの怪魔事件の事じゃないかしら。」
「ミハイル様が……私に……?」
ゼノビアも困惑していた。神が直々に私に聞きたいことが……?ああ、もしかして……。
「わかりました……。じゃあ私、『神の館』に行けばいいんですね?」
「なんでもその使者が送ってくれるそうよ。さ、急いで準備して。」
「……はい。」
ゼノビアはどんどん鼓動が早くなっていくのを感じていた。もしかしたら、なぜ怪魔が私だけを狙っていたのか、わかるかもしれない。
「おみやげよろしく!!ゼノビア!!」
「こら!!エリザ!!」
舌をだして笑うエリザを見て、ゼノビアは少しだけ笑った。
「わかった^^」
はやる気持ちを押さえ、ゼノビアは自室に向かい、準備を始めた。