複雑・ファジー小説

Re: 世界と一緒だから ( No.14 )
日時: 2012/07/22 18:21
名前: 白沢祐 ◆xoPT2KzXZY (ID: khvYzXY.)

【壱話め。 君のためと綺麗事を言う僕を許してください 5】


「なら、僕が作ろうか?」
「……いいの?」
「うん。作り置きしてるから、いっぱいあって余るんだよ。それなら、食ってもらった方が嬉しい」

 僕の言葉に、時野は少し考え込むような素振りを見せた。ヤキソバパンを頬張りながら眉を寄せる光景は、なんだかおかしかった。食べるか考えるか、どちらかにすればいいのに。

「ついでに、もうひとつ作ってもらえるかな」
「いいけど……。なんで?」

 珍しい時野からの“お願い”に、思わず首をかしげる。星野の分かと思ったのだけれど、違うらしい。時野は少し考えてから、「あれだよ」と視線を後ろに向けた。そこにあるのは、さっき僕が見ていた女の子グループかっこわらいだ。

「あの中に、愛想笑いしてる黒髪ロングの子がいるでしょ? あの子の分だよ」

 時野が小さく指を指したのは、これまたさっきまで僕が見ていた子だった。箸は止まっており、顔色が悪い。なのに、愛想笑いをしたままそこにいる。

「あの子、一応あたしたちの古い友人なんだよね」

 ふいに声がしてそちらを見ると、弁当をむさぼっていたはずの星野が、箸を止めて目を細めていた。